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生まれつき女ですが、なにか?  作者: 周
中学校 編
25/43

第一回・合同勉強会

2014/12/8 サブタイトルと「誠志郎の方も他愛のない話題ばかりを送ってきます。」以下の文を丸々差し替えました。

※読者様には、不完全なものを掲載してしまった事、二度手間をおかけしてしまった事を、深くお詫び申し上げます。

「洸も今帰り?」

「うん。根詰め過ぎても良い作品にはならない、って小名川おながわに言われちゃって」


小名川とは美術の先生で、洸が所属する美術部の顧問です。

作品展に向けて、とかではなく“作りたい物を作りたい時に”という活動方針の元、洸も情熱を持てあますことなく作品にぶつけているようです。そのお陰か、部活後の洸はツンが取れてテンションが高めになります。


「どんな作品か、まだ教えてくれないの?」


緑の旋毛を突きたい衝動を抑えつけながら訊くと、明るく輝く萌黄色がクルリンと見上げて来ました。

なんと、ウインク付きです!ありがとうございます!!


「まだ、ヒ・ミ・ツ」


ナ・イ・ショの小悪魔ポーズまで頂きました!プルルン唇に人差し指が凶悪ですね!!


心の中で鼻血を噴いている僕の手の中で携帯が振動しましたが、それどころではありませんでした。

後で確認した所、届いたメールは『あまゆみ?分かった』。

どうやら漢字変換しないまま保留にしたつもりの返信メールを、携帯を閉じた拍子に送ってしまったみたいです。

何が分かったのか分かりませんが、それ以来、進学の話題にはお互い触れていません。

誠志郎の方も他愛のない話題ばかりを送ってきます。

運動部をいくつか掛け持ちしているとか、天気が良いとか悪いとか。

そして、再会直後にあった中間考査の件で、誠志郎から探りのような言葉が来ました。


『中間、どうだった?』

『まあまあ、だったかな』


そう、前世の記憶があるからって、成績が突き抜けて良い訳ではないのです。

ただ、今生の樹里子は頭の出来が非常に良いみたいで、砂に水がしみ込むようにどんどん吸収していきます。具体的には、五教科平均九十点取れる位に。

きっと中身が『私』では無かったら、又はバドミントンにのめり込んでいなかったら、もっと高成績を叩き出していたかも知れません。


『キリコはどれが得意なんだ?俺は数学と理科だ』

『特にってのはないかな』

『それはすごいな。俺は、英語はまあまあなんだが、国語と社会が足を引っ張る』

『そうなんだ』

『今度、教えてくれないか』

『いやー教えるってほどではないと思うよ?学校も違うし』

『教科書はどこのを使ってるんだ?』

多文社おおぶんしゃかな』

『なら、同じだ』

『進み具合が違うかも』

『進んでいれば予習になるし、遅くても復習になる。問題ない』

『あー、ソウデスネ』

『どうして片仮名になる?』

『なんとなく』

『来週あたり、どうだ?』

『期末考査まで、びっちり部活だよ』

『じゃあ、テスト休みに入った土曜日に、中央図書館で』

『え?確定???』

『十時でいいか?』

『え?え?』

『お昼も一緒に食べよう』

『おーい、僕の話を聞けー?』

『おごってやるぞ?』

『はぁ……分かったよ』

『楽しみにしている』


というわけで、一月半先の予定を入れられてしまいました。


六月末の、とある土曜日の、午前十時少し前。

自転車でやってまいりました、中央図書館。

市の中心からは少し外れた、大きな公園の中にある閑静な図書館です。

梅雨?なにそれ美味しいの?的な異世界のおかげか、本日も綺麗に晴れ渡っています。

そんな初夏の風も、緑の中ならば半袖の腕を心地よく通り過ぎてゆきます。


ちなみに朝、この晴天を見た洸は小名川先生に連絡して、午前中だけでも部室を使わせてもらえるよう交渉していました。

その後、お弁当を作っている僕に気付いて「どこ行くの?」「誰と行くの?」「なん時まで?」と質問攻めにしてから、


「……ボクの分も作って」


口を尖らせながらおねだりしてきました。

二つ返事で請け負って、洸が支度をしている間に完成。


「次はボクも行くから、決まったら絶対、教えてね」


押しの強い笑顔でそう言う洸に、適当に頷きながら持たせてあげました。

両親、特に父が、もの言いたげにこちらを見ていましたが、大人は自分でどうにかして下さい。時間もないので見捨ててきました。


閑話休題。


十時開館なので、図書館自体はまだ開いていません。

空いている駐輪場に自転車を停め、入り口へ。

開館待ちが居ても一人二人と思っていたエントランスに、二~五人の少女たちの小グループがいくつかあり、密かに一点を気にしているようでした。

彼女たちの意識の先には、休憩スペースを兼ねたロビーのソファに足を組んで腰掛け本に目を落としているだけなのに、なぜか周囲を威圧するかのような雰囲気を放っている、誠志郎。

まだ線の細い少年なのに、なにその存在感。

軽くため息が出てしまいました。

と、その微かな音にでも気付いたかのように、誠志郎が顔を上げます。

真っ直ぐに僕を見てくるあたり、犬と言うよりネコ科の肉食獣のようですね。

そして顔をパッと輝かせ、片手で合図してきました。


「キリコ!」


途端、周囲が息を飲み、誠志郎の視線の先を辿り始め、おずおずと僕に注目が集まってきます。


ロビーとはいえ図書館で大声を出すな、馬鹿者。


思いながらも距離があるので、僕は口に出さずにステイしている誠志郎の元へ。

少女たちの間には、動揺が広がっているようでした。

「だれ?」「キリコって、この前の?」「えー、カッコイイ」などと囁いている集団を、避けて通ります。

薄着でも女子認識されていな様な気がしなくもなくて微妙に居た堪れない心地ですが、頑張って素知らぬ振りをしました。

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