出てきたのは…
入学式から一週間がたった。
各授業のオリエンテーションも終わり、既に内容は高校の分野に移っている。
彼にとっては、今の授業はさほど難しいものではなかった。無論、これからもそうとは限らないが。
彼は自分から話しかける方ではない。しかし、彼の社交性は低くないため、何人かとは親しくなった。
また、共学なので何人かの女子とも軽く会話したが、やはり女子はグループやヒエラルキーといった、面倒きわまりない秩序があるようで、男子である彼は接触を控えるようにしている。
見ている分には馬鹿らしいが、彼女達には死活問題な部分もある(らしい)。
彼は、自身が男子でよかった、と心から思った。
入学式の説明の時、部活動に加入するのは毎年およそ半数ほどだということなので、彼は加入しないことにした。
それでも部活動に興味がないわけではないので、
放課後、親しくなった廣瀬と共に部活動を見学していく。
何日かでほぼ全ての部活を見学した結果、廣瀬はバレー部に加入することに決めたらしい。
まぁ頑張れ、とおざなりな反応を返し、一緒にどうかと言われたのをやんわりと断る。
廣瀬はバレー部の体験入部に参加するとのことなので、彼は一人で校内を歩くことにした。
廊下を歩いていると、ふと「生徒会室」という文字が目についた。人の話し声がするので、どうやら活動中のようである。
それでも彼は特に生徒会に興味がある訳ではないため、そのまま通りすぎようとして―――――
「ん?」
出てきた人と目が合った。
「やぁ。」
彼は知り合いだったので軽く挨拶する。
出てきたのは、入学式の後、教室に残っていた彼女だった。