繋がり
二人共合格だったため、彼女と教科書や体操服、上履き(と言ってもスリッパ)を買うために並ぶ。
彼女は中学時代は内向的で、自分から他の人に話しかけることなど皆無だったほどのものだった。
だが聞き上手なため、話しかけられたら仲良くなれることが多かったらしい。
もっとも、自分と親しくなった者ならごく稀に自分から話しかけたりもするのだが。
だが彼女ーー有村というらしいーーは自分から彼に話しかけた。いったいどういうことなのか。
気になったので聞いてみると、どうやら有村いわく、高校生としてスタートするので、これを機に積極的にいろいろな人に関わっていきたいらしい。
中学では話しかけた人に拒絶されないかが心配だったが、実際に話をしてみると良い人が多く、これまで勇気を振り絞らずいたことがもったいないと思うようになってきたそうだ。
そこにちょうど話しかけても大丈夫そうな雰囲気の(大丈夫そうな見た目、ではない。見た目ではむしろ話しかけるのをためらったらしい)受験生がいたため、頑張ってみたということだ。
とりあえず必要なものは買い揃え、バックが重たくなったのを感じる。特に教科書が重い。これが来年もあるというのだから気が重い。
ふと学校の大時計を見上げると、お昼過ぎとなっていた。有村も無事買い終わったようでこちらに向かって歩いてくる。
が、その重さゆえか。ふらふらとして危なっかしく、
他の新入生やその親にぶつからないかと心配させる様子だったが、何事もなく彼のもとへたどり着いた。
「キミは親さんとは一緒じゃないのかい?」
「もうじき来る。」
どうやら彼は送迎だけを頼んだらしく、たしかに彼の保護者は見当たらなかった。ちなみに有村は自転車で来ていた。かかる時間は自転車で15分ほどだ。
「そっか。」
沈黙が漂う。といっても気まずいものではなかった。
ふと、彼女は気づく。
「そうだ、連絡先を交換しないかい?」
そういえば、そんなの全く気にしなかった。
新入生なのだからとりあえず友達を作ろうと動く。そういう人は事実、周りに何人もいた。
だが、彼と共にいる間、彼女はそんなことを微塵も気にしなかった。
彼と居る、ただそれだけなのだが、初めて会った者特有のぎくしゃくした居心地の悪さはなく、ただ柳のように柔らかく、それでいて不愉快ではない。
そんな彼に、不思議な感覚を抱いていた。
少なくとも、彼女は彼といて、緊張することもなく落ち着いていた。
心は澄んで、穏やかで。
だが、彼がどう感じているのか。それが全くわからなかった。
彼女が人の思いを汲むことができないのではない。
彼が、読ませないのだ。
さりげなく、避けるでもなく。そもそも、意識してやっているのかもわからない。
しかし、彼が何を感じているのか。それだけがさっぱりわからなかった。
だからこそ、彼を知りたいと思った。
「ああ…別にかまわない」
お互いの連絡先を交換したところで、彼の電話が鳴る。
どうやら迎えが来たという。
じゃあ。と言う、彼の背中を見送って、彼女も家路についた。
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守れなかったらゴメンナサイm(__)m