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ルナ姫の受難  作者: 東吉
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 「ねえミーナ、もう、ライたち、気づいたかしら?」

 「多分……でも、ルナの行動力のおかげで、大分時間を稼げたと思うけど……」

 ミーナが後ろを振り返り、答える。

 王宮では、姫様扱いをしていたミーナであったが、外で私のことを『姫』と呼ぶと色々問題があるため、昔のように、敬称なしで……ということにしたのだった。


 「そうでしょう? ミーナの現身うつしみの魔法と私の増幅魔法を使って時間稼ぎをしたおかげで、ここまで追っ手に追いつかれることなく来れたわね? 私たちの身代わり人形は、舞踏会まで持ったかしら?」


 ミーナは、私が答えを求めているのではないことを察して、無言で周りを警戒している。


 私たちは、国境の森の入口まで来ていた。

 生まれた国ではあるが、いい思い出などほとんどない。

 ミーナの家族と暮らしていた時は別だが……。


 だからだろうか。これからの生活を思い浮かべるだけで、ワクワクしている。

 勿論、初恋の王子様に会うことも楽しみの一つではあるが。


 いくら初恋とはいえ、あの当時のまま大人になっているとは限らない。

 初恋の王子様のことは、夢で終わらせた方がいい人物だったら、その時考えればいい……。


 でも、きっと、変わってない。

 彼は、優しい理想の王子様のままのはず……。


 「ルナ、わかっているとは思いますが、ここからは、心して入って下さい」

 「分かってるって! この森は、別名『漆黒の森』と言われて、お尋ね者などの盗賊や闇魔法に手を染めた魔法使いや魔獣までいるっていうのでしょう? 大丈夫よ! さっ、行きましょう!」


 森に入って、1時間は過ぎただろうか?

 私たちは、どうやら迷ってしまったらしい。

 いや、迷ったのではない。迷路に入り込んでしまった、という言い方の方が正しいだろう。


 「どうやら、罠にかかってしまったようですね……。どうしますか?」

 「うーん、どうしようかなぁ……? 手っ取り早い方法っ」

 「駄目ですっ!」

 私の言葉の途中で、ミーナから制止がかかる。


 「早っ! そんなに全否定しなくてもいいじゃない!」

 「何言ってるんですかっ! どうせ、ルナのことだから、『この森、全部焼いちゃう?』とか『面倒だから、一っ跳びしちゃう?』とか、普通じゃ考えられないことを言うに決まってます!」


 ぷぅぅっと、自分の頬が膨らんだのを自覚する。

 「そんなこと考えてないわ! 森を焼くとか……大体無理だし……。大体、こんなところで魔法なんて使ったら、私たちの居場所をライに知らせるようなものじゃないの! いくら私でも、そこまで浅はかな行動はしないわ」

 「今、ここにいること自体が、浅はかな行動だと思いますけどね」


 「そんなことないわよ。だって、この旅は、私が幸せになるためだもの。だから、貴女もついてきたのでしょう、ミーナ!?」

 何だかんだと言いながら、ミーナは私には甘い。

 本当の姉妹のように育った二人だからこそ、遠慮なく言い合える。


 「ルナ……さっきから何しているの?」

 「私たち、さっきからずっと、同じところをグルグル回っているなぁ……と思って、確かめているところ! あっ! やっぱり! ミーナ、ここを見て! 私がつけた印がある」

 私は右手に避けて、ミーナに私が木につけたナイフの傷を見せる。


 私は、簡単な呪文を唱えて木の刀傷を癒す。

 すると、すぅっと、傷が消えた。

 「ルナっ! こんなところで、魔法を使ったら……」

 「大丈夫よ、ミーナ。私、呪文を唱えていたでしょう? 純粋な私の力ではないから、大丈夫よ」

 本当に、ミーナは心配性なんだから!


 私の治癒魔法は、呪文などいらない。

 呪文を使ったのは、痕跡を消すためのもの。

 魔法に近いけど、違う。

 一度はつけた傷をなかったことにする、イレイズ(消しゴム)みたいなものだろうか。


 「同じところをグルグル回っているということは、ループのようになっているってこと?」

 「そう! だから、迷路でさえないのよねぇ。でも、ループ状になっているっていうことが分かれば、あとは簡単よ」

 ふふっ、と笑いがこみ上げる。


 「えっ? どうするの?」

 「ループになっているのなら、その結び目をほどけばいいのよ!」

 ミーナの大きな目が点になった。

 どうやら、ぴんとこなかったらしい。

 おかしいわね? いつもは察しがいいのに……?


 「もう、ミーナったら、わからないの? ロープの結び目を解く方法でいいのよ。いーい? ループ状ってことは、空間をわざと歪めて作っているってことでしょう? じゃあ、その空間の歪みを見つければ……?」

 「解ける……」

 ミーナが理解してくれた! 嬉しい!


 「そう! さぁ、その空間の歪みを一緒に見つけましょう! ついでに、ここを眺めている傍観者も一緒にねっ!」

 「えっ? 傍観者……?」

 「そう、傍観者! こんな手の込んだことをしているからには、術者が絶対に見逃す筈ないじゃない!? 私が術者なら、最後まで観察するわね! あっ、あった!」


 空間の歪み、見ぃつけたっ!


 なんで、今まで気が付かなかったのかしらって思うけど、仕方ない。

 そこは術者の実力だったということでしょう。



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