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ルナ姫の受難  作者: 東吉
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3

 ライが来た時と同じように、嵐のように去っていく後姿を見送ると、私は溜息を一つ吐く。


 「ルナ様、大丈夫ですか?」

 「……ありがとう、心配してくれて、ミーナ」

 私は、苦笑いしか浮かべることができなかった。

 私が落ち込んでいる理由……王との謁見内容を知りたがっているのは、察しがついたが、なかなか切り出せるものではない。


 ミーナの母は、私の乳母で、育ての母と称してもいい人物である。

 必然的に1つ年上のミーナを、実の姉のように慕って一緒に育った。


 ミーナの家は、ブルンデルグ辺境侯だった。

 今は、私の専従騎士をしているが、れっきとした貴族令嬢だ。

 『所詮、田舎貴族よ』とミーナは言っているが……。


 ミーナには、4人の兄がいる。唯一の女の子であるにも関わらず、兄たちに負けたくないと、馬と剣、そして弓矢の稽古に明け暮れていた。

 その中に私も紛れ込み、ミーナと一緒に稽古をつけてもらっていた。


 辺境候とは即ち、国境の地である。

 従って、戦争が始まれば、戦地と化すかもしれない。

 そのため、民はもちろん、侯爵自ら剣を取り戦うことになる。

 だから、主一家は全員、馬に乗れるし、剣も弓も扱えるように訓練されていた。


 王族である私がなぜ、王宮ではなくその辺境地で育てられたかというと、生まれた時にあまりの虚弱さに都会では生きられない。空気のきれいな田舎の方が良いということで、預けられたらしい。

 その時に、田舎にあって、尚且つ貴族の屋敷、乳母として白羽の矢が立ったのがミーナの母、ユリアだったわけだ。


 私は、10歳まで辺境候で育った。その間、気候のいい時期だけ、王宮で暮らしたりもしたが、殆どの時を、ミーナたち家族と過ごした。

 生まれた時は、虚弱体質だったらしいが、物心ついてから、寝込んだ記憶などない。

 唯一、ミーナの一番下の兄、ロイに『特訓』と称して川に突き落とされた時、風邪をひいたくらいか……?

 あの時は、ミーナの父、辺境侯爵の怖かったこと……。

 ロイはこってり絞られていた。


 私は、皆に心配されて、ちやほや甘やかされて、嬉しかったのを覚えている。



 王宮では、窮屈な生活が待っていた。

 救いは、あの双子の兄の存在だった。

 チャランポランな振りをして、私を守ろうとしてくれている。


 ライがいなかったら、とっくに王宮から逃げ出していただろう。


 でも、今回の婚姻は、いくら王の命令でも許せない。

 幸せな家族をぶち壊しかねない。

 果ては、この国を戦争へと導かねないではないか。


 私は、辺境の地で育ったこともあり、父王が思っているよりもずっと、諸外国の国政には詳しい。

 だから、納得できない。


 「ミーナ……人払いを」

 「とっくに、していますよ」


 「さすが……ね」

 ミーナへ向かって、極上の笑みを浮かべる。

 

 「勿論!」

 ミーナも私に向かって、笑みを返してくれる。


 「ミーナ、私、決めたわ!」

 「ついていきますよ、どこまでも!」


 「まだ、何にも言っていないのに……」

 少し呆れ気味に言ってしまう。


 「ルナは、私の妹同然。そして、私の唯一無二の主。騎士の誓いを立てた相手よ?どこまでもついていきますからね! 置いていこうなんて思わないことね!」

 「……ありがとう」


 「それで、どこへ行かれるのですか?」

 「……ヴィルヘルム王国よ」


 


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