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ルナ姫の受難  作者: 東吉
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 合流してすぐに、銀狼の手の者に見つかり、私たちは二手に分かれることにした。

 ライはごねていたが、私は、フィリップス王子と共に逃げることを選んだ。

 ミーナは、私と一緒に行きたかっただろうが、私の気持ちを優先してくれ、何も言わず、私の剣を渡してくれた。


 銀狼の仲間たちは、手練れだったが、私たちも3人で何とか応戦した。

 始めのうちは、フィリップス王子も私の剣の腕を信じてくれてなかったが、一緒に戦ううちに、庇うだけでなく、任せてくれるようになった。


 とにかく、銀狼自身が来るまでには、逃げたい一心だった。


 何とか巻いて、ライたちと落ち合う宿へ辿り着くことができた。

 ライたちは、まだ着いておらず、彼らの方も追っ手がきたのだろうと、推察された。


 どうか、無事でありますように……。

 祈らずにはいられない。


 「ルナ姫……」

 私が、ライたちのことを考えていた時に、フィリップス王子から名前を呼ばれた。

 私は、王子の方へ顔を向けた。


 「どうして……髪の色が違うんだ?」

 「えっ?」

 髪の色? 変わってないけど?


 「いや、今じゃなく、昔と……子どもの頃は、赤かっただろう? 今は、金色がかかった赤だ! こんなに綺麗な色じゃなかったはずだ。染めたのか?」

 私は、王子の言葉に吃驚して、暫くの間、ポカンと口を開けていたかもしれない。



 「あの、つまり……どういうことですか?」

 やっと、声を発することができた。


 王子は、言葉にするのが難しいのか、なかなか口を開こうとしない。

 「いや、だから……別人かと思っていたんだ。私の知っていたルナ姫は、とてもお転婆だったし……。まさか、こんなに変わるはずがないと思って、替え玉かと……」


 王子の言っている意味が分からない。


 いや、理解しようとしても、頭がついていけない。

 つまり……お城で、あんなに冷たかったのは全て、私が『ルナ(本人)』の替え玉だと思っていたから?


 ひどすぎる!

  

 「子どもの頃は確かに、赤毛だったけど、王子と会った時にはもう、今の色に近い赤金だったじゃないの!

 それに私は、お転婆と言われるほど、王子と一緒に、いなかったし!」

 だから、知らない筈でしょ!


 やっと、口から出てきた言葉は、ミーナといる時の私……素になっていた。

 しかも、自分で暴露しているし!


 あんなに、王子の前だと言葉が出てこなくて苦労していたのに……。

 人間、ショックが強いと素に戻るって、本当だったのね!


 「いや、ルナは十分お転婆だったさ! おまけに、頑固?」

 「勝手に誤解していたくせに!」

 「それは……すまない。許して欲しい。

 もう一度始めから、やり直して欲しいのだが……? その……一緒に国へ戻ってくれるか?」


 王子は、本当にすまなさそうな顔をして、自信なさげに言葉を紡いだ。


 「……仕方ないので、許してあげます。ただし、時々、私に剣の稽古をつけてくれるなら!」

 「稽古?」

 「はいっ! 稽古です。殿下の剣の腕は凄かったです! 是非、お願いします」

 ペコリと頭を下げて、お願いした。


 「……これが、許してもらえる条件なら、呑まないわけにはいかないな」

 王子の了承の言葉に、笑顔になる。

 そこで、続きの言葉が王子の口から発せられる。


 「ルナ、俺のことは殿下ではなく、名前で呼んでくれ! 他人行儀すぎるだろう、婚約者なのに?」


 ……婚約者?

 名前?


 そういえば、先程から、姫はなく、ただルナと呼ばれていたような……?


 フィリップス王子?

 ボンッ! と音がしたに違いない。そう思うほど一息に、頬が熱くなった。

 きっと、真っ赤になっているに違いない。


 真っ赤になった顔を見られたくなくて、俯いていると、上の方から催促の言葉をかけられる。


 ほらっ……!


 あまり待たせるのも良くないよね?

 「……フィリップス王子……」

 「王子はいらない!」

 「……フィリップス?」


 名前を呼ぶと同時にギュッと抱きしめられた。

 「よくできました」

 との言葉と共に……。



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