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紅き月 天空<ソラ>に掛かりし刻
証を持ちて生まれし者
汝
月の子也り――
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夜の帳が街に下りる。
ルナ大陸でも比較的都会にあたるここ、セイドゥール・シティは、それでもまだ闇にその場所を完全にあけ渡すことはなかった。
うすぼんやりとした街灯を眼下に見つめ、赤き少女は窓際の椅子に腰掛けていた。
小柄な少女だ。年のころなら十四、五歳といったところだろうか。
動きやすそうな服や、首からぶら下がった真紅のペンダントも、どことなくちぐはぐで――まだ、幼さを引きずっている。
だが、それよりもまず目を引くのは少女のその髪と瞳だろう。
短く切り込まれたショート・ヘアと、少し猫目気味の大きな瞳。
そのどちらもが、真紅。
彼女が首から下げているペンダントのそれと、同じ色なのだ。
肌の色からすると黄色人種だろうが――その艶やかな髪と瞳は、あきらかに黄色人種としての特色ではない。
色素異常。そして、その首から下がっているペンダント――いや、正確に言うなら、ペンダントの石。真紅の石。それらが意味するのは、この大陸ではたった一つしかない。
すなわち――……
「あたしは……」
その少女が、軽く頭を上げた。頭上にあるのは、夜空。そして、その中に浮かぶ、少しかけた円――
月。
「あたしは女神様の……」
少女の赤毛が、風に揺れる。
「おもちゃじゃ……ない」
少女の赤毛が、風に揺れる。
少女の赤眼が、月光に揺れる。
――夜の帳が、街に下りる。