表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅月は女神の祈り  作者: 中原まなみ
序章:『旅立ちの日 ―The Starting Day』
1/76

1

*****************


紅き月 天空<ソラ>に掛かりし刻

証を持ちて生まれし者

月の子也り――


*****************



 夜の帳が街に下りる。

 ルナ大陸でも比較的都会にあたるここ、セイドゥール・シティは、それでもまだ闇にその場所を完全にあけ渡すことはなかった。

 うすぼんやりとした街灯を眼下に見つめ、赤き少女は窓際の椅子に腰掛けていた。

 小柄な少女だ。年のころなら十四、五歳といったところだろうか。

 動きやすそうな服や、首からぶら下がった真紅のペンダントも、どことなくちぐはぐで――まだ、幼さを引きずっている。

 だが、それよりもまず目を引くのは少女のその髪と瞳だろう。

 短く切り込まれたショート・ヘアと、少し猫目気味の大きな瞳。

 そのどちらもが、真紅。

 彼女が首から下げているペンダントのそれと、同じ色なのだ。

 肌の色からすると黄色人種だろうが――その艶やかな髪と瞳は、あきらかに黄色人種としての特色ではない。

 色素異常。そして、その首から下がっているペンダント――いや、正確に言うなら、ペンダントの石。真紅の石。それらが意味するのは、この大陸ではたった一つしかない。

 すなわち――……

「あたしは……」

 その少女が、軽く頭を上げた。頭上にあるのは、夜空。そして、その中に浮かぶ、少しかけた円――

 月。

「あたしは女神様の……」

 少女の赤毛が、風に揺れる。

「おもちゃじゃ……ない」

 少女の赤毛が、風に揺れる。

 少女の赤眼が、月光に揺れる。

 

 ――夜の帳が、街に下りる。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ