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硝子の薔薇  作者: クロネコ
      本章
9/41

訪問1

 問題皇子と厄介騎士の登場です。

 皇子一行が到着したのは、提示された時間よりも30分ほど早かった。



その事には、王宮中が大騒ぎ。



少し時間が空いたと油断した矢先に 皇子が到着したという連絡が門番の放った使役により発覚したのだから。



ちょうどお茶会を短縮版で始めようとしていた<ローズ>達も、大慌て。



特に お世話役が変更されたという連絡は、3日前に文を送って  昨日、承諾の返事が着たばかりなのだから <ローズ>は、王と王妃や他の侍女に背中を押されて  真っ先に門まで駆け出した。



皇子が王や王妃と謁見するのは、王の間と決まっているらしい。



それ以外の場で会うという行為は、少し特例で 酷い場合は、暗殺目的と疑われても仕方がないとか。



<ローズ>は、いつもの侍女服と違って  少し礼服に近いワンピースに身を包んでいる。



皇子に対して 新米の侍女が世話役になったと知られれば  友好問題に発展する可能性があるかららしい。



なので 皇子滞在中の<ローズ>の身分は、礼儀見習い中の貴族の令嬢。



つまり お客様扱いをされることが、王宮内での決定になっていた。



本当に 皇子には、色々と迷惑を掛けられたのか  死刑宣告までされたはずの新参者の侍女をお嬢様扱いする事は、苦痛にも思わないらしい。



逆に 可愛いとすれ違う度に叫ばれるので  こっちが恥ずかしくなってしまう。



そうこうしている内に  <ローズ>は、王宮の門に辿り着いた。



門番は、何か困ったように 長身の男を制しているらしい。



<ローズ>は、不思議そうに背伸びする。



門番のハンスさんは、困ったように  その男の人を止めていた。



少し砕けた口調だから もしかしたら  知り合いなのかもしれない。



彼は、陛下の第二騎士のイリアさんと同じ頃に流れてきた傭兵らしいけれど………。



皇子様が、どこかで待っているのに  無様な姿を見せるわけにはいかないのだろう。



長身の男の人は、腰まで伸びる銀髪を1つに纏めて  風に揺らいでいる。



 「お前  そんなところで何をしている?」



突然声を掛けられて <ローズ>は、思わず小さな悲鳴を上げて  飛び上がってしまった。



門番も、その声に気が付いて  駆け寄ってきたらしい。



勿論 長身の男の人も一緒に。



「お前………もしかして、僕のお世話役の女か?」



呆気に取られていると  先ほど声を掛けてきた声が、また聞こえてくる。



けれど 辺りを見回してみるが  どこにもその声の元がいない。



すると  門番が、顔を真っ青にさせている姿と長身の男の無表情の中の驚愕が見て取れた。



「下だ」



不機嫌そうな声にハッとして  <ローズ>は、地面の方に目を向ける。



すると 視線の先には、ふんぞり返っている礼服に身を包んだ少年が。



「ふんッ!


まさか こんな失礼なガキが、僕の世話係になるだなんて  この国も堕ちたものだな?」



あまりにもの毒舌に  <ローズ>は、目をパチクリ。



見た目は、金髪で蒼い目の天使のような姿なのに  ここまで口が悪いだなんて………。



「通りで 皆さんが、嫌がるわけだ。


こんなに性格が悪いんじゃ  みんな迷惑だろうから」



口に出してしまってから  <ローズ>は、ハッとして 口を押さえた。



けれど  目の前には、顔を引き攣らせている皇子と呆気に取られている門番と目を細めた長身の男性。



「お前………この国の者じゃないだろう。


この国では、相手に対しての礼儀を重んじている。


なのに  お前は、堂々と侮辱してくれた」



どこか殺気の篭った口調に  <ローズ>は、頭の中で次の言葉を捜す。



言い訳を考えるべきではない。



多分………この皇子に必要なのは、そんな見え透いた嘘ではないはずだから。



「皇子様は、口下手ですね?


悪戯することで 皆さんが、自分を見てくれるようになさりたいのでしょう?


そんな事よりも もっと簡単なことがあるのですが  一緒に実行してみませんか?」



ニッコリとそう言うと  皇子は、呆然と口を半分だけ開けたまま。



「勿論………えっと皇子の騎士様ですよね?


貴方にもご協力を仰ぎたいのですが………宜しいでしょうか?」



銀髪の男性も 急に話を振られて  呆気に取られてしまっているらしい。



ハンスは、何をやるつもりなのか気が付いていないようだが 口を開きかける。



けれど その前に満面の笑みを向けられてしまい  直立不動。



「ハンスさん………皆さんに、王の間に向かうのが少し遅れると使役を送ってもらえますか?


今から話す内容をそのまま………」


































※~※~※~※~


 「わたくしは、やっぱり心配だわ?


<ローズ>に皇子の世話役は、重すぎると思うの」


ミリアムは、不安そうに 溜息をついた。


王妃の言葉に ユゥリィも、心配そうな顔になっている。


「あの子は、少し不思議な空気がありますからね?


もしかしたら  皇子の事も何とかするのでは?」


コーネリアは、ニッコリと微笑んで 言う。


「ですね~?


もしかしたら 堅物のトッドも砕けるかもしれないだろう?


意外に惚れちゃったりして~?」



イリアは、ニヤニヤしながら 呟いた。



「お前は、ナディア様のお心を知っていても そんなふざけた風に言えるのか?


<ローズ>が現れた事で 少しは、落ち着きを取り戻してきたというのに」



宰相の冷たい声が、放たれる。



その言葉に 第二騎士は、”わかっているさ”と、肩を竦めてしまう。



「ですが ミリアム様?


<ローズ>ですが  あの子は、どこぞのお嬢様なのは、間違いないと思いますよ?


遊び心は、ちょっと問題かもしれませんけれどね?」



ルチアは、静かに言った。



「皇子の世話役に当たって  他の侍女達と同じように礼儀作法の教育を行ったのですが ちゃんと身に付いていましたので。


あれだけ身に付いていましたら 他国に使者の侍女として同行しても  問題ありません」



「ルチアが、そこまで言うんなら 相当なんだろうね?


<ローズ>は、記憶を一切失っていて 最初こそは、怪しまれることもあるかもしれないけど  今では、随分と可愛がられているみたいだから」



王の言葉に 臣下達も頷き合う。



ふと そこへ  使役らしき使い魔が王の間に飛び込んできた。



「あら  それは、ハンスの使い魔ね?


一体 なんて書いてあるの?」



使役の持ってきた手紙を読んで 頭を抱えてしまっている夫に  王妃は、首を傾げる。



「皇子とトッドと少し遊んでから 王の間に入るそうだ」



その内容に その場にいる面々は、目を大きく見開いてしまう。



「遊ぶって………あのトッドも一緒に?!


皇子なら未だしも………絶対にありえませんってッ!」



イリアは、大袈裟に大声で叫びながら  首を振った。



コーネリアも 目をパチクリさせながら  顔を引き攣らせている双子の兄に視線を注ぐ。



「だけど  もしかして、トッドも<ローズ>がお兄様に似ていると実感したのなら ありえない話じゃないと思うのだけれど?


だって  親友だったのですもの」



ミリアムは、唸りながら 首を傾げる。



「というより  挨拶を後回しにして 皇子と遊ぶわけですか………」



ルチアは、深く溜息をついた。


 

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