訪問に向けて
王宮は、緊張に包み込まれていた。
どんなに厄介な相手でも 受け入れる。
それが、先帝夫婦のルールであった為 その跡継ぎであるユゥリィ王も従っているらしい。
勿論 陛下に忠誠を誓っている王宮の人々も。
毎回毎回、悪戯されてしまうので それに対する対処も、厳重になってきているとか。
旗から見れば 条約を結ぶ前の敵国が、訪問するに当たる準備を行っているかのよう。
そこまで念入りにするべきなのか………と、リーンに聞いてみたところ これだけでも足りないと返された。
みんなは、どうやら 自分が考えた提案が成功するとは、信じられないようだ。
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「王宮内では、もう準備でてんてこ舞いです。
ルチアさんは、わたしを含めた侍女のみんなを懸命に挨拶教育をやり直していますし。
宰相閣下は、絶対に駄目にしてはいけない書類などに保護の呪文などを施しているんですよ?
それに 万が一の事を考えて お子様方のお部屋には、特殊な印を施して 部外者には、その部屋を認識できないようにすることが決定したそうです。
ネルってば それを聞いて 本当にホッとしていたんですよ?
本当にその皇子様の事を、恐れているようでした」
「<ローズ>?
今からでも遅くないわ?
皇子のお世話役は、私が………………………「大丈夫ですよ」
「先日のお茶会でも申し上げましたでしょう?
話を聞いている限り その皇子様は、お寂しいんでしょうね?
だから 皆さんに構って欲しいんですよ」
<ローズ>は、丸椅子に座って ニッコリと微笑んだ。
そんな少女の言葉に 目の前に座っている女性は、不安そうな顔になっていた。
今のナディアは、この国の王妹殿下のナディア姫ではなく 王専属の女医として 存在している。
王位継承の証を返上しても その美しさに惹かれる男性は、後を絶たないらしい。
まぁ それは、王に剣の誓いを行ったコーネリア嬢も同じらしいけれど。
「まぁ 貴女の事を信用していないわけじゃないわ?
だけど 心配なのよ。
特に………皇子と一緒にくっついてくる騎士が、特に 血の気が多くて」
「ああ ナディア様は、危うくその方に斬り捨てられるところだったんですよね?
それに ミリアム様に窺ったんですけど その方といっつも喧嘩なさっているとか」
<ローズ>の言葉に ナディアは、険しい顔。
「あの男は、昔からそうなんですよ。
それで この国が危機に瀕したら 真っ先に他国へ逃げ出してしまった。
いくら 流れてきた傭兵だからって たった1人の主に忠誠を誓う騎士じゃないからって………あの男は、子の国を見捨てたの。
なのに 次に現れた時は、あの問題皇子の騎士様………。
初めての訪問の時、みんな言葉が出なかったわ?
同じように流れてきたのに ちゃんとこの国に留まっているイリアとは、大違い」
その話を聞いて <ローズ>は、黙ったまま。
何を言っても 意味がないような気がしたから。
そして 少し時間を置いてから <ローズ>は、ここぞっとばかりに満面の笑みを浮かべた。
「皇子様のお世話役もその方への配慮も わたしにお任せ下さい。
粗相のないよう 務めさせて頂きますから」
そして 皇子が訪問する日を迎えた。