お茶会2
会話の中で 王と王妃の周りの人々の説明入ります。
「前から思っておりましたが <ローズ>を見ていると………あいつを思い出すんです。
何ていうか 性格ですかね?」
宰相閣下は、突然 呟いた。
その発言に 皆が、ハッとしたように 顔を見合わせる。
「確かに 似ているかもしれませんね?
宰相のあしらい方も………」
「ミリアムの話していた通り 瞳の色もそうだからな?」
声と同時に ミリアムと陛下が、顔を覗き込んできていた。
2人の美しい顔が、至近距離にあるので 顔を真っ赤にさせてしまう。
その反応が、楽しいのか 王妃は、楽しそう”可愛い~!”に思い切り抱きしめてくる。
<ローズ>は、あまりに突然のことなので 窒息しそうに。
陛下は、さすがにそれは拙いと思い ただ羨ましそうに見つめているだけ。
侍女頭のルチアは、その行動に深く溜息をついてしまっているけれど………。
「ユゥリィー………羨ましいんでしょう?
子供の頃は、可愛い物を抱きしめるのが、趣味だったんですもの」
コーネリアは、宰相の双子の妹で 同じ顔なのに 性格は、まるで正反対。
主に対する発言では、許されない事かもしれないけれど これは、やはり幼い頃からの友人だからかもしれない。
「リア………俺は、お前の主だぞ?
しかも 君主に対して その言い方は………」
「お茶会の最中は、主従関係なく接するように と言い出したのは、あなたではありませんでしたか?」
その言葉に 王は、言葉を詰まらせてしまっている。
「そうでしたねぇ~?
俺達は、元より 陛下をお守りする騎士として、接するつもりだったのに それに対して、不機嫌になってしまったんですから。
俺も 最初は、こんな我侭で良いのか?!って思いましたけど………今は、慣れました」
ケタケタと大爆笑しているのは、第二騎士のイリア様。
この国では、珍しい髪の色で 元々は、流れの剣客だったところ その剣術の実力を認められて、騎士の称号を与えられたとか。
奥方のミイナさんは、現在妊娠中で ミリアム様付きの侍女の仕事をお休みしているらしい。
子供が生まれて、少し時間を置いてから 復帰する事が決まっている。
王宮には、子供がいても安心して働けるよう 子供の面倒を見る空間が設けられていた。
そこでは、戦争などで 子供を亡くしたり 親を無くし、働きようがない子達が役割を果たしているそうだ。
隣国や他国からは、非道な手段で戦争に勝利していると畏怖されているらしいけれど <ローズ>から見ると とても素晴らしい国だと思う。
全く記憶がないのだから 他がどんなものかは、全くわからない。
けれど 人として ここにいる人々は、素晴らしかった。
特に このお茶会に集まっている面々は、本当に王と王妃に信頼された人ばかり。
だからこそ <ローズ>にとっては、すごく居心地が悪かった。
自分が、この場にいて良いのかわからないのだから。
「どうかしたの、<ローズ>?
さっきから 黙ってしまっているようだけれど」
リーンの言葉に <ローズ>は、ハッとしたように 顔を上げる。
その声に 他の皆も、心配そうにしてくれているらしい。
「すいません、ちょっと考え事をしていました。
わたし何かが、お茶会に参加していてもいいのかと………」
その発言に ミリアムが”そんな事ないわ?!”と、声を張り上げた。
「わたくし 貴女の事大好きよ?
初めて会った時にも、言ったけれど 貴女の声は、亡くなったお母様の歌声にソックリなの。
それに 貴女の右の瞳の色が、お兄様と瓜二つなのよ………」
ミリアムの顔は、よく見えない。
最初に抱きしめられたままの状態なのだから。
他の人々に視線を向けてみると 何だか、哀しそうな表情になっている。
宰相閣下が、最初に自分と重ねていたのも 実は、ミリアム様の兄上だとか。
そういえば 前に、他の下働きの子達の噂話を小耳に挟んだ事があった。
―― 王妃様の兄君は、国の為に犠牲になった英雄らしい ―― と。
この方々は、今の自分達が平和に暮らしていることで その方に罪悪感を抱いているのだろうか?