動き1
「まだ 足取りが掴めないのか?」
ユゥリィは、神妙な表情を浮かべて 溜息混じりに言った。
その言葉を受けて 臣下達は、申し訳なさそうな顔をしている。
「仕方がありません。
老師は、自分に行き着く証拠を残さない。
以前の一件でも それは、身を持って知っているではありませんか」
宰相代理を務めているコーネリアは、真剣な顔で発言した。
「わかっているさ………そのことはね?
だけど 何だか不安なんだ。
ミリアムの今の状態があるからかもしれないけれど 嫌な予感がするんだよ
「まぁ………わからなくもないわね?
それに あの老師の事だから………今回も卑劣な手段を使ってくる。
手始めに<ローズ>ってわけね?」
神妙な表情を浮かべて呟く女騎士に 王は、唇を噛んだ。
「リアは、リーンの失踪も 老師が関わっていると思うか?」
その質問を受けて コーネリアは、”ええ”と 頷く。
「彼女は、前の時でも真っ先に老師の手段に気が付いていたわ?
後先考えずに突っ走るのは、問題だけど 何気に足跡を残す。
今回は、ネオが話を聞いてくれていて 助かったわ?」
「シャルロッテの一件か。
確か あの偽者塔の上に閉じ込めているんだったな?」
「そうよ………あそこは、周りが断崖絶壁になっているし 色々な罠が仕掛けられているから リーン達のように訓練されていなければ、どんなに打たれ強い軍人だって 生きて帰れない。
危険な賭けに出るよりは、安全な建物の中で結果を待つ方が利巧だわ。
どんなに老師に忠誠を誓っているにしても そこまで忠義を貫く恩義は、あるはずがないもの。
ロッテの話を聞く限り あの男は、言葉巧みに幼い子供達を傭兵の様に鍛え上げている。
中には、その最中に死に逝く子達も少なくなかったそうなんだもの」
「おそらく この国の古くからの慣わしの王妃直属の乙女を参考にしているんだろうね?
あれは、本人の覚悟も必要だというのに 老師のしている事は、一方的に過ぎない」
ユゥリィが、小さく溜息をつくと 入口の扉が開かれた。
中に入ってきたのは、神妙な表情を浮かべたイリアだ。
「どこに行っていたのよ、イリアッ!
貴方がいない間に 偽者の貴方の部下を捕らえたのよ?」
コーネリアは、不安をぶちまけるように 声を張り上げる。
「ああ………済まなかったな?
思ったよりも 話を聞いていたら時間が経っていたみたいでさ?
いや………衝撃が強すぎて、我に返るのが遅すぎたのかもしれないんだけど。
何ていうか やっぱり 血筋なんだと思うんだけどさぁ?」
意味のわからない発言に 王と第一騎士は、顔を見合わせてしまった。
「イリア………今まで誰と話していた?
わかるように誰と何を話したのか教えてくれ」
どこか命令口調な主の言葉に イリアは、背筋を伸ばす。
「今から話しことは、口外しないで下さい。
それによっては、彼他の協力が得られなくなってしまいますから」
珍しく真剣な顔をしている第二騎士に ユゥリィとコーネリアは、顔を見合わせた。
そして 2人は、頷く。
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王と女騎士は、話を聞き終えて 言葉を失ったまま。
話し終えたイリア自身も、冷や汗混じりだ。
「今の話は、本当なのか?」
やっと口を開いたユゥリィは、真面目な顔をしている。
これが嘘ならば 極刑ものだろう。
「信じられないかもしれませんけど 本当の事ですよ。
俺だって 嘘だと思っちゃったんですから。
だけど あの子は、間違いなく あの人の子供です。
性格まで受け継いじゃっているから 悲しいことなんですけどね?」
苦笑している男の横で コーネリアが、やっと我に返る。
「だったら………<ローズ>の正体は?!
彼女も、彼らの知り合いってことなんじゃ?」
「そこまでは、話してもらえませんでしたけど 間違いないでしょうね?
だとしたら あの不思議な感覚も、納得できるんですから」
イリアは、小さく息をついて 王座に座っている主に視線を向けた。
「彼らは、どこにいる?
会って、詳しい話を聞きたいんだが………」
ユゥリィの言葉に 男は、”そういう出すと思っていましたよ”と 苦笑する。
「団体だと目立つそうなんで 1人だけですけどね?
ほら………そこに………・・・」
その言葉を受けて視線を上げると フードを被った背の高い青年が、その場に頭を垂れていた。
少し先に王と第一騎士と第二騎士の3人が、<ローズ>の正体に行き着きました。