表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
硝子の薔薇  作者: クロネコ
      本章
34/41

警告


 「こんな場所に呼び出して 何のつもりだ?


姿を現したらどうだッ!」



イリアは、険しさを隠せずに 声を張り上げた。



けれど 周りを見回してみる限り  何の気配もない。



男は、苦虫を噛み締める気持ちで 舌打ちする。



その手には、特殊な細工を施されえている手紙が握り潰されていた。



何とかして 手紙を送りつけてきた者を探ろうとしたのに  何の記憶を読み取る事も出来なかったのだ。



手紙に気が付いたのは、通例の訓練を終え <ローズ>を見舞い  自宅の寝室に足を踏み入れた時。



妊娠中の為に 妻は、深く寝入っていた為 その存在にも気が付いていないはず。



「こんな断言しているんだから、確固たる証拠があるということなんだろう?!


話があるのならば 目の前に姿を晒すんだッ!」



その声に反応したのか 微かだが 息を呑む音が………。



どうやら この場にいるのは、自分を含めて 1人だけではないらしい。



「随分と強気だな?


あまりに色々な事が起き過ぎて 感情的になっているだけだと思っていたが」



男の声が聞こえてきた。



「つまり それだけの実践を交えてきたってことでしょう?


あんまり、調子に乗っていると  グサリとやられちゃうかもしれないわよ?」



今度は、女の声もだ。



振り返ってみると 黒いフードで顔を隠した男と女が、物陰から出てくる。



イリアは、その姿を確認して 訝しげな顔になった。



男の方は、体格がよく フードの中には、いくつかの武器を隠しているのだろう。



女の方も、スラリとしており 小柄だが  物腰からして、相当な手練だと見受けられた。



「なぜ 俺に伝言を寄越した?」



それが、一番の疑問だ。



確かに王を守る第二騎士という称号を与えられている。



けれど 城の中には、未だに自分を疑っている者も少なくないのだから。



「話を冷静に聞いて 感情に流される事なく  正しく判断できるだろうという こちらの一致した考えだ。


普段は、ふざけている部分もあるかもしれないが  <影>の長を担っている点でも 有利になるだろうと判断した」



無機質に言い放つ言葉に イリアは、息を呑む。



どこか緊張している自分に 舌打ちしてしまう。




―― 目の前にいる男は、どう考えたって自分よりも年下なはずなのに どうして ここまで緊張してしまうのだろうか? ――




「そこまで 気を張らなくても大丈夫ですよ?


我々は、彼方方の敵ではありませんから。


懐に隠している短剣をお納めくださいませんか?」



女の発言に イリアは、マントの下に隠していた短剣を取り出す。



万が一の場合 捨て身で相手に一撃を与えるつもりだったのだ。



「ならば 説明してもらいたいものだ。


この手紙には、<ローズ>の一件と王妃を狙う一派の情報を提供するとあったな?


事と次第によっては、拘束しなければならないッ!」



第二騎士の威厳ありな言葉に 男女2人は、苦笑気味な様子。



「おいおい………ここまで 頑固だったっけ?


気前のいい兄ちゃんだった気がしたのに………」



男は、どこか情けなさそうに 小さく溜息をつく。



「仕方がないんじゃない?


私達の今の姿を考えたらね?


立場が逆なら アンタの場合………何の躊躇もなく、切り倒していると思うんだけど?」



女も 苦笑しながら  イリアに聞こえないよう 呟いた。



そんな2人の様子に 騎士は、訝しげな色を隠さない。



「信じてもらうには、こっちの手の内を見せる必要があるのかもしれないぞ?」



第三者の声が聞こえて イリアは、ハッとしたように 振り返る。



すると そこには、先に姿を現した男女に加え  同じくフードで顔を隠した者達が姿を現した。



先に発言した男の声は、どこか威厳が伴う。



「こりゃ………驚いたな?


お前らは、影で出てこないのかと思っていたが。


他の奴等は、まだ 待機中なんだろう?」



「事情が変わったのよ。


彼に協力を仰ぐには、明らかにしなければならないでしょう?」



威厳の声の持ち主である男の隣から 背の高い女性が出てきた。



その言葉を受けて 自分に対して挑戦的だった男も冷静に諭していた女も、まるで側仕えのように 下がっていく。



「今から話す内容は、他の方々に ご内密にして頂きたい。


まだ 時ガ来たわけではないので………」



「納得のいくことならね?


アンタが、この無作法な連中の親玉のようだけど まるで どこぞの王族のような待遇だねぇ~?


初めて会った時のユゥリィを思い出す。


今でも 似たような感じで  少しは、王らしい行動をするようになっているけど。


それに 気のせいか?


昔の知り合い友ダブるんだけどなぁ~?」



ニヤリと笑いながら話すイリアに 目の前に立つ男は、ゆっくりとフードを外した。



その瞬間 騎士の顔色が、一気に驚愕の色に変わる。



目の前に見えている光景に 驚きを隠せないらしい。



「え………まさか 血筋ってわけ?!


おいおい ありえないじゃないかッ!」



「全くありえない話じゃないわ?


私達が、この場にいる事がその証拠。


まだ 存在していない場合もあるけど  他の仲間も、違う場所で潜んでいるわ?」



気が付けば 全員が、フードを取り除いていた。



イリアは、もう疑う余地がないと判断して 大きく溜息をつく。



「ここまでされたんじゃ 疑えばただの馬鹿じゃないか。


それで………?


何を話してくれるんだ?」



その問いかけに フードを外した男は、”警告です”と 低い声を発した。




「周りの人々に注意を払ってください。


特に 信頼している部下の方々に………。


彼らは、確かに貴方方を裏切るつもりなどないでしょうが  連中は狡猾です。


利用できるのならば なんでも使ってみせる。


それが、どんなに卑劣で残酷な結果になってもです」



「言われるまでもなく 警戒している。


<ローズ>の一件もあるからね?」



どこか苛立っている男に 一行は、顔を見合わせてしまう。



「口に出すのは、簡単だ。


だが 本当に疑っているわけじゃないだろう?


頭ではわかっているかもしれないが 心の中では信じたいと思っている。


特に アンタの場合は、自分の部下を本当に信じているから 疑いたくないんだ」



イリアは、それを聞いて 眉根を寄せる。



「シャルロッテという侍女に気を付けて。


彼女は、何かを企んでいる。


宰相閣下の奥方が、行方知れずになったのも 関わっているのかもしれない」



 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ