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硝子の薔薇  作者: クロネコ
      本章
31/41

疑惑2


 「王妃付きの侍女が、1人行方不明になった?!」



セレディーは、その話しを聞いて 驚きを隠せなかった。



しかも その人物が、宰相の奥方だというのだから 困惑を隠せない。



「リーンは、少し抜けている部分こそあるかもしれないけど とても身体能力が高いのに………。


今まで 何があろうと………族の手に落ちた事などなかったわ?


ましてや ネオを妊娠していた頃でも」



ナディアも、ショックを隠せないまま持っていた本を取り落としてしまっている。



トッドは、何も聞こえていないかのように 平然としているらしい。



「詳しい事は、まだわかっていないけど そのお陰で………兄さんは、凄い事になっているわ?


王と王妃には、その事を伏せておくにしても 特にセレディー皇子の耳には入れておくべきだと思って。


ナディア殿下………あのお2人には、ご内密にお願い致します。


兄と話し合った結果 リーンは、しばらくの間 外での守りに従事していると申し上げる事になっているので」



宰相代理を務めているコーネリアの言葉に 一同は、頷く。



「ところで その宰相の奥方は、<ローズ>を襲った刺客に捕らえられた可能性はあるのだな?」



皇子の問いかけに コーネリアの表情が固くなった。



「その可能性は、最も高いです。


今は、こちら側で 内通者がいる可能性を洗っており その矢先の出来事なので………あまり話す事は不可能ですが」



まるで突き放すような言い方だが セレディーは、気に留めていない。



ただ 今も眠り続けている愛しい少女の姿が思い浮かぶのみ。



「だが リーンの事だ。


何か 手がかりの残しているのでは?


そうでなくては………王妃の楯にはなれやしない」



トッドが口を開いた。



その発言に ナディアは、眉根を寄せている。



「アンタは、相変わらず無神経な発言をするだなんてッ!


皇子は、なぜ こんな男を傍に置いているのです?!」



怒りに満ちた様子で詰め寄られ セレディーは、息を呑んだ。



そんな様子を見つめて 宰相代理は、小さく溜息をついてしまう。



「トッドは、亡き母上が認めた男です ナディア殿下。


確かに国の危機に亡命したのは、誉められる行為ではないでしょう。


けれど 何か理由があると思う」



皇子の発言に ナディアは、赤みの掛かった金髪を少し逆立てた。



「アーロンは、最期までこの男の子とを信じていました。


なのに  トッドは、戻ってこなかった。


結果として………アーロンは、自らの命を代償にして この地に眠っていた土地神を目覚めさせたわ?


トッド 貴方は、何も話そうとしないけれど 一体 アーロンとどんな密約を交わしたのかしたね?」



その発言に 銀髪の男は、何も答えようとしない。



ただ 黙って目の前にいる女を見ているだけなのだから。



「ナディア………今は、お願いだから トッドと喧嘩しないで。


昔ならともかく 今は、国交問題になりえるんだから」



コーネリアは、幼友達の立場で 発言する。



その言葉を受けて ナディアは、肩を竦めてしまう。



元々は、王位を持っていたにしても 今は、それを返上してしまっている為 国王の第一騎士は、自分よりも身分が上になっているのだから。



しかも 相手は、幼い頃から怒らせると頭の上がらない姉的存在。



「トッド………貴方もね?


アンタの無駄口を叩かないっていう性格は、馬鹿げた噂に振り回されている見習騎士達や衛兵達にも見習わせたいほどのものよ?


だけど 時ガ来れば………アーロンとの約束を聞かせて欲しい。


ユゥリィも、アンタが恐れをなしてこの国を逃げ出しただなんて思っちゃいないんだから。


現に アーロンが命を代償にして直ぐ………援軍が来た。


あれは、ただの偶然ではない。


後でミリアムが、セレミア様に聞いたそうだけど 貴方が懇願したと聞いたわ?」



コーネリアの言葉を聞いて ナディアは、驚いたように 目を大きく見開く。



セレディーは、その話を聞いていたらしく どこか心配そうな顔になっていた。



「とにかく 皇子………この王宮内は、今までと違い 危険となっております。


故………お1人で行動なさらないよう。


姿を変えても 危険は変わりませんから」



念を押すように言われ 皇子は、肩を竦めてしまう。



<ローズ>の提案してくれていた押し伸びは、いつの間にか 王宮内の殆どの人々に知れ渡っていた。



最初こそは、誰もが驚きを隠せなかったが セレディーの境遇を思い直し 姿を偽っていた時が本心であると思うようになったらしい。



その為 誰も、自分達を騙していたなどと思ってもいないそうだ。



逆に 親近感が沸いたと  誰もが皇子に対して 以前のような感情を持たなくなっている。



もしかしたら それが、<ローズ>の狙いだったのかもしれない。



「それでは、先程のお話 ご理解ください。


では 失礼致します」



コーネリアは、一礼すると そのまま部屋を後にした。



その後姿を追って ナディアは、再び 散らばった本を拾い集めている銀髪の男に視線を向ける。



トッドは、いつもの騎士の服ではなく 動きやすい服装だ。



勿論 セレディー皇子を守るための剣は、腰に常備してある。



「時ガ来れば………貴方は、アーロンを見殺しにした理由を公にするのね?


その日こそ 貴方の最期だと思いなさい」



その言葉を受け トッドは、初めてナディアを見た。



視線を受けて 女は、少し怯んだ様子だったが すぐに睨み返す。



2人のそんな様子を見つめて セレディーは、小さく溜息をつき 散らばっている他の飼料となる本を探し出した。



ふと 机の下にある本に手を伸ばす。



そこには、見知らぬ文字が本の背表紙にまで続いているらしい。



「これは………禁書だな?


それも 随分と古いものだ。


なぜ  このような本が、ここに………?」



セレディーは、不用意に文字の部分に触れないようにしながら 手に取る。



 

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