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硝子の薔薇  作者: クロネコ
      本章
29/41

ある一室にて


 「兄上………どうなさったのです?


ずっと、黙り込んでおられるようですが………」



その問いかけに 男は、不機嫌そうに顔を上げた。



「珍しいですね?


兄上が、そのような顔をなさるだなんて………何時以来でしょうか」



「陛下………御自分のお立場をお考え下さいませ。


我は、一臣下です。


そのように お言葉をお掛けなさいますな。


古くからいる者は、何も申し上げませんが 他の者の混乱を招く可能性があります」



切り返しに 少し着飾っている男は、悲しげに肩を竦めてしまう。



その表情は、どこか寂しい。



「昔は、もっと親密でしたのに………何だか寂しいですよ。


確かに 私は、王になりました。


でも  貴方の弟である事には変わりありません。


なので………そのように他人行儀をしないで下さい。


これは これは………王としての貴方への命令ですッ!」



どこか戸惑いを隠せないままの強気な発言に 男は、小さく息をついて ”わかった、努力しよう”と、苦笑する。



「だが………それは、プライベートの時だけだ。


公務中は、今までの態度を貫かせてもらう。


でなければ 他の者達に示しが付かないからな?」



「兄上は、変なところで周りの目を気にしていますね?


まぁ………幼少時代が、特殊でしたから 仕方ありませんけど。


それで?


まだ………奥方は、ご実家から戻られていないんですか?


何でしたら  お迎えに行ってもよろしいと思いますよ?


いつも 働きすぎるというくらいに仕事をこなしているのですから  誰も文句が言えません。


みんな………貴方が働きすぎだと嘆いていましたよ?」



「反対に………戻ってくるなと泣かれるかもな?


みんな、不甲斐なさ過ぎる。


あれで、よく………今まで国を守る位置についていたものだ」



その発言に 王は、吹き出した。



「まぁ………それは、同感ですね?


貴方を当時 守っていた騎士は、あまりそういう場に踏み込もうとしていませんでしたが  兄上は、色々と思うところがあるようだ。


けれど 兄上の扱きで  軍の力が増していることは、確かです。


みんな………素晴らしい隊長を得たと喜んでおりましたよ?


ちまたでも 貴方の業績は、留まることなく噂になっていますからね?」



「その反面では、妻に見放されたと囁かれているのも知っているぞ?


かの国の皇女は、本来ならば お前の妃になるはずではなかったのか?………とな?


彼女も 元より、そのつもりだったようだし………俺を見るたびに 睨みつけてきていた」



「だったら  本当のことを話してしまえばいいんじゃないんですか?


そうすれば 誤解も解けるはずです」



「アレが、そう簡単に俺の話しに耳を傾けると思うか?


日に日に………俺の存在そのものを無視するようになっているというのにッ!


娘を出産してから 更にそれが増した。


今回も、あちらの王と王妃が取り成さねば………手紙も送るつもりないだろう」



男が、悪態をつくと 弟は、ニッコリと微笑んだ。



「本当に愛しておられないのなら 奥方は、ずっと兄上の傍におられなかったと思いますよ?


今回の家出の原因は、何だったんです?


前は、兄上が仕事ばかりに身を寄せているからというのが理由でしたが………」



弟の発言に 臣下は、小さく息をついた。



「呼んでしまったらしいんだ………彼女の名前を。


  ── <ローズ> ──とな?


そしたら その翌日………アレは、手紙だけを残して 娘と一緒に、実家に戻ってしまった。


何でも………寝言で彼女を呼んでいたらしい」



兄の告白を聞いて 若き王は、開いた口が塞がらない。



「僕も 王妃に女心がわからないのかと何度も罵られますけど………兄上の言動で奥方が怒っている事は、丸わかりですよ?


当たり前じゃないですか………自分の夫が、自分とは違う女性の名前を出せば 誰だって……」



「わかっているさ………そんな事、お前に言われなくてもな?


午後から あちらに向かうつもりだ。


一筋縄でいかないことは、わかっているから 王や王妃方にも協力してもらうつもりだしな?」



「その間は、騎士団のみんなは 骨休みですね?


まぁ………兄上が帰ってきた後の恐ろしさを前回の一件で身に染みているでしょうから 鍛錬は、欠かさないはずです」



「その心配は、要らない。


今から連中に抜き打ちの体力測定をしよう。


俺が休暇中に どれだけ今日から進歩できているか  楽しみだ」



満面の笑みを残して  男は、立ち去る。



部屋に取り残された王は、兄の様子に苦笑しながら 兵士達に心から同情の念を送り  異国にいる義姉の事を頭に思い浮かべた。



再び、この城に戻ってこられますように と。



 


 誰と誰の会話なのかは、最後の方で明かしたいと思います。

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