夢と現実
「う~ん………周りが、何にも見えないのに どうやって探せばいいのかしら?
ここが、わたしの夢の中だと言うのなら 考えたものが、魔法のように出てきてもいいのに」
<ローズ>は、途方に暮れてしまっていた。
目の前には、やはり 霞だけしかない。
「あの声は、わたしが どこの誰なのかを知っているようだったわ?
もしかして その誰かを捕まえたら………教えてくれるかも!!」
<ローズ>は、真剣な表情になって 拳を握り締める。
そして 手の甲に見える薔薇の紋章に視線を向けた。
「後………セレディー皇子の真意を確かめないと。
よくわかんないけど まるで………求愛の印みたいで 恥ずかしかったんだよね?
前に リーンさんとミイナさんに プロポーズの話題を振った時 手の甲をやたらと撫でてたもん。
訳もわからなくしていたんなら ちゃんとそれを改めてもらわないと………そこら中で女の子達が、大騒ぎになるもんね?
だって 音は、とっても真面目な第一皇子様なんだから」
<ローズ>は、息をついて 両手を頬に触れてみると 異様に熱を感じる。
考えただけで 真っ赤になってしまったのかもしれない。
あの真剣な眼差しを思い出すと ある期待をしてしまうそうになってしまうのだから。
「セレディー皇子の決意は、とても素晴らしい事だわ?
だって 普通は、王族である身分を捨てようだなんて 考えないはずだし。
それにしても トッド様も、ご存知だったのかしら?
皇子が、ご自分の身分を返上するという覚悟を………」
※~※~※~※~
「<ローズ>………ずっと目を覚まさないのね?」
栗毛の巻き毛を靡かせた 少しお腹の出ている女性は、哀しげに 眠り続けている<ローズ>の手を握った。
彼女は、王妃付きの侍女の1人 ミイナ。
今は、妊娠を控えている為 一線を引いている。
「本当は、ミリアム様が狙われた可能性が高いと伺ったけれど………この事 あの方は、ご存知なの?」
その問いかけを受けて 同じ部屋にいるシャルロッテは、肩を竦めてしまう。
「お知らせしたら お体に悪い。
それだけでなくても 最初に <ローズ>を発見したのは、王妃様達だったんだから。
リーン達の話だと ルチアのお陰で………食事だけでも 取ってもらえているそうなんだけどね?
やっぱり 食べ物が、喉を通らなくなってきているみたいで」
その話を聞いて ミイナの表情に翳が。
「<ローズ>には、彼女の初めての休暇の時 ネオに紹介されたわ?
本当に驚いたの。
彼にソックリだったから………」
「それは、イリア様達も言ってた。
実際に会った事は、なかったんだけど 王妃の兄上ってどんな人だったの?」
不思議そうな顔をしている シャルロッテに ミイナは、微かに目を伏せた。
「アーロンは、とても腕の立つ剣士だったわ。
それこそ 陛下の第一騎士になる人材だったから。
温厚で 誰にでも優しい………そして、守るべく者を持てる力を駆使して 戦う方だった」
「聞いた話じゃ………自らの命を顧みず この地に眠っていた神を自分の命と引き換えに 目覚めさしたそうだけど?」
「ええ 誰もが あの時は、敗北を覚悟した。
国が滅ぶのならば 自分達も………ってね?
けれど アーロンは、最後まで諦めなかったのよ。
詳しくは、知らないんだけど トッドも 実は、一枚咬んでいて………何かの代償を払ったらしいわ?
当の本人は、国を逃げ出した罪人として恨まれた方がいいから って………知っているのは、ごく少数なんだけど。
勿論………ナディア殿下は、ご存じないわ?
知っていたら あんなに 彼を責められるはずがないから」
ミイナの何かありげな発言に シャルロッテは、首を傾げる。
「もしかして………ナディア殿下って、そのアーロンっ人の恋人だったわけ?
あんなに美人なのに 浮いた話 全然 ないもんね?」
「確かに お似合いの2人だったわ?
その前での戦争において アーロンは、<迅速の騎士>の称号を王の名において与えられていたから。
ナディア殿下との身分も 問題ないはずだったの。
まぁ………アーロンは、妹命みたいな性格だったから 殿下のお気持ちに気が付いていなかったかもね?」
「う~ん………後 気になるのは、やっぱり トッドとの関係かな?
ナディア殿下が怒っているのは、単に あの銀髪ヤローが、国を捨てて逃げ出した臆病者っていう認識からだけじゃない気がするんだけど」
ミイナは、少女の問いかけに 息をつく。
「トッドとは、最初から 衝突が絶えなかったのよ………殿下は。
うちの人も ある意味 よくわからない性格をしていたけれど トッドは、とにかく始終無言でしょう?
だけど………剣の腕は、アーロンに遅れを取らない実力者だった。
流れの傭兵として 様々な危険な場所に仕事を重ねてきていた事もあって 知識もあったわね?
殿下は、それの全てを否定なさっていたけれど………」
「単に 一目惚れしたって事?
だけど 初恋の人が、実力で負けるはずがない………ってね?
そんでもって 相手は、国を裏切っているから その感情は、あってはならないもの。
だから あんなに厳しいわけだ」
シャルロッテの納得の言葉に ミイナは、”そういう事よ”と、苦笑。
そして 無意識に お腹に手を当てている。