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硝子の薔薇  作者: クロネコ
      本章
19/41

突然

 <ローズ>は、その日  ごく当たり前に 皇子と騎士を中庭へと案内していた。



とても晴れやかで 空気も澄んでいる。



庭を飛び交っている風が、心地よい。



「何度も訪問していたが こんなにも美しい場所があっただなんて  知らなかった」



セレディー皇子は、嬉しそうに 目を輝かせていた。



子供らしい評を浮かべている様子に <ローズ>は、嬉しそうに微笑む。



「光栄です。


ここは、わたしが初めてミリアム様の侍女に上がらせていただいた時に 案内された思い出の場所なのです。


色々な花があって 目の保養にもなるのですよ?」



その言葉に セレディーも、つられたように笑う。



「亡くなられた母上に伺った事がある場所に似ているな?


それに トッドの話にも出てきた」



視線を受けて 後ろに控えていた銀髪の騎士が、ゆっくりと歩み寄ってくる。



「ここは、先代王妃様が自らお育てになられたと聞いております」



トッドの言葉に <ローズ>も、ある事を思い出した。



「ミリアム様のお話ですと ここは、幼い頃からの隠れ家だったそうです。


宰相閣下やコーネリア様方とご一緒に  遊び回っていた と。


ここは、教育係の方々を巻くのに便利な場所だったそうなのです」



「あのユゥリィ王にも そのような頃があられたかッ!


しかも 堅物な宰相までもが、そのような行動をしていたなど………意外だな?」



皇子は、楽しそうに笑っている。



「誰でも 子供の頃というのは、純真なのですよ。


セレディー皇子も、後何年かすれば  立派な殿方になられると思います」



正直な感想を話すと  目の前に立っているセレディーが、真剣な顔になっていることに気が付いた。



何だか その視線は、こそばゆい。



「前にも話したが 僕は、王位継承に興味ない。


ガルディーが、王になればいいと思っているのだから。


だが 僕の存在は、色々な火種になるということも知っている。


今は、時ではないが  それが片付けば 母の実家の養子に入ろうと考えているんだ」



その話を聞きながら <ローズ>は、目をパチクリさせてしまう。



なぜ  そんな大事な話しを、自分にするのだろうか?



「そうなれば 俺は、ただの下級貴族でしかなくなる。


今までは、王族の第一皇子であるセレディーに付きまとっていた連中も 手の平を返すだろう。


金魚の糞達も 僕を蔑む側に回る。


それまでは、王族である事で守られていても 位が下がれば  簡単に蹴落とされる事もありえることだ。


だが 僕には、どうしてもやりたい事がある」



セレディーの言葉には、どこか熱が篭っているようだ。



「僕は、ガルディーが 父上のような賢王になれるよう  一から基盤を作っていきたいんだ。


その為には、色々と問題も出てくる。


だが 僕は、<ローズ>がいてくれたら………どんな事でも乗り越えられると思うんだ」



皇子は、そう言うと  <ローズ>の手を手にとって 甲に口付けを落とした。



キョトンとしていると  耳まで真っ赤になって セレディー皇子は、”返事は、いつでも”と、言い残して その場から立ち去っていく。



トッドは、皇子の後を追っていったようだが 苦笑気味。



<ローズ>は、意味がわからず  立ち尽くしていた。



「一体………何が起こったの?」



目をパチクリさせ  <ローズ>は、手の甲に視線を向ける。



「え……………これって?」



セレディーが口付けた手の甲には、薔薇の紋章が浮かび上がっていた。



「どういう事なのかしら………なぜ?


それに  胸に浮かび上がっている痣にも、似ているような気が………」



 …ガサ……ガササ…



背後から 足音が聞こえたので  振り返る。



すると 目の前には、太陽の光の逆行で見えないが  何者かが、何かを振り上げているらしい。



避けようとするも 足が竦んでしまい  その場に座り込んでしまう。



そして 空気を切るような音が、耳に届く。



何か、暖かい液体が体を伝っていった。



何が起こったのか、理解できないでいると  いくつかの足音が、微かに聞こえてくる。



それが、誰なのかを確認して  <ローズ>は、その場に崩れ落ちた。



闇の中に入り込んだ時に 入ってきたのは、甲高い悲鳴………。




「いやぁ―――ッ! <ローズ>!!」

































※~※~※~※~


 「ミリアム様………足元にお気をつけ下さいね?」



リーンは、真剣な表情を浮かべて 言った。



「ちょっと リーン?


過保護すぎやしないかしら?


わたくし そんな風に手を引かれるの 恥ずかしいのだけど?」



ミリアムは、少し顔を赤らめてしまっている。



「あらあら………そんな事をおっしゃらないで下さい。


我々は、心からお喜びを申し上げているのですよ?」



シャーリーは、弾むような口調で 微笑む。



「ちちうえが、もうしあげておりましたが  おうひさまは、オメデタイだそうですね?


ボクからも おんれいもうしあげまする」



リーンのスカートにくっついている幼いプラチナブロンドの幼い男の子は、キリリとした眼差しで 軽く会釈した。



「さすがは、宰相の息子………………顔立ちも似ている分 ミニチュアね?


将来 あんな風に仏頂面になって欲しくないわ~?」



王妃は、メロメロになりながら 幼子に抱きつく。



「残念ながら ネオは、おそらく父親似です。


家にいると いつも真似ばかりしているんですから。


最近じゃ  口調ですね?」



リーンは、苦笑しながら 息をついた。



「そういえば ネオ?


あなた………最近、金髪を巻き毛にした女の子と一緒に遊ぶ事が多くなったそうだけど?


一体 どこで知り合ったのかしら?」



シャーリーは、思い出したように 甥っ子の顔を覗き込む。



「金髪の………?


ああ  ロッテが、会ったと話していたわ?


皇子付きの使いだと話していて………名前は、確か  セレミアだったかしら。


ネオ………その方とご一緒にていたのね?」



リーンの言葉に ミリアムは、足を止めた。



突然歩みが止まってしまったので 一行は、少し転びかけてしまう。



「どうしたんですか………急にッ!


先ほども申し上げたように 転ぶのは……………ミリアム様?」



シャーリーは、目を大きく見開いている主の様子に ”どうなさったのですか?”と、困惑する。



「セレミアという名前は、セレディー皇子の母君の名前よ?


それに  皇子も お美しい金髪よね?


<ローズ>がいつも王宮の中で連れ歩いているのは、その少女だと聞いたけれど………」



シャーリーとリーンも、その事に気が付いたらしく 顔を見合わせた。



「セレディーおうじは、ないしょだとおっしゃっていました。


ミイナもしっていますよ?


だけど <ローズ>が、ひみつのあそびだから………って。


でも ボクは、セレミアのすがたのときのおうじ だいすきです。


だって やさしいから」



ネオは、ニコニコしながら 言う。



「言っても良かったのかしら?」



ミリアムは、心配そうに 首を傾げる。



「<ローズ>は、ときがくれば みんなにはなすつもりだといっていました。


おうじも とってもたのしんでいて………。


さいしょは、すっごくはすかしかったけど  いまは、いままでしらなかった このくにのすばらしいことをしることができたとおっしゃられていました」



「<ローズ>らしい考えですね?


確かに 皇子は、その遊びのお陰で  皇子として接する以外の皆の姿勢を知る事が出来たのかもしれない」



リーンは、我が子の髪の毛を撫でながら 微笑む。



だが ネオの体が、突然 強張った事に気が付いて ”どうしたの?”と、顔を覗き込んだ。



そして 息子の顔色は、真っ青になっており ミリアムとシャーリーも、心配そうな顔になった。



「あっちから  ちのにおい………。

       なにかが、きれるおと………きこえた………………」



血の気が失せている幼い男の子の発言に 女3人は、顔を見合わせてしまう。



シャーリーとリーンは、ガーターの下に隠されているそれぞれの武器を取り出し  王妃と幼子を背後に回し、ゆっくりと歩み寄っていく。



すぐ先の茂みでは、近づくに連れて  確かに鉄の臭いが………。



息を潜ませながら 一同は、進む。



そして 視線の先に広がったもの………。



自分達の姿を確認して  崩れる背中から斬り付けられていた<ローズ>。



「いやぁ―――ッ! <ローズ>!!」



ミリアムは、我を忘れて 甲高い悲鳴を上げた。


 

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