秘密3
王の間では、国王を含めた臣下達が険しい顔になっていた。
「困った事になったな?
今回の皇子の滞在に こんな理由があっただなんて………」
宰相は、頭を抱えるかのように 溜息をつく。
「この事………セレディー皇子は、存じておられるのか?」
コーネリアは、兄と同じ顔をして 唇を噛む。
「知っているのかも。
ミイナの話じゃ この前、<ローズ>に連れられて家に遊びに来たらしいんだけどさ?
ちょっと そっち系のの話には、触れないように注意している感じだったらしいから。
<ローズ>の方は、自覚無しにそれに合わせていたらしいし」
イリアは、首を傾げて 言う。
「だったら トッドも知っているって事か。
まぁ 話してくれるはずもないだろうけど」
ユゥリィは、珍しく真剣な顔になっていた。
「けれど 下手すれば こちらにも余波が来るのでは?
あちらの王は、平和主義ですが 周りの大臣の中には、乗っ取りを企む者もいるとの話です。
先の一件でのミリアム様に送られてきた刺客も そちらの一派の手の者ということは、確実ですし」
宰相の言葉に 国王は、遠くを見つめる。
「やはり………王妃に俺の真名を預けていることが、刺客を何度も送られてくる原因になっているんだろうな?
俺を殺すには、真名を知らなければ 致命傷を与えることが出来ないのだから」
その発言に 臣下達は、顔を見合わせた。
「まさか 王妃の命の危機を回避する為に 真名を撤回させるおつもりじゃありませんよね?
そんな事をすれば ミリアム様は、確実にキレますよ?
最初に 儀式を中止すると言い出した時よりも………確実に。
それに 王妃は、古来より 伴侶となる王の命綱である真奈を授かり 身を持って守る事が、最も重要な任務となっています。
以前に ミリアム様とその話題になりましたけれど あの方は、真名を守っている事を誇りとしているようでしたからね?」
コーネリアは、呆れたように 断言する。
「ああ あの時は、本当に厄介だった。
1人で王宮を飛び出して 前・国王付きの騎士のウィリアム候が、影で護衛に付いて下さり 使役でその場を知らせて下さらばければ どうなっていたか」
宰相は、思い出したように 遠くを見つめた。
「そういえば そんな事ありましたっけ?
ルチアさんの旦那さんは、今でも 万が一の事を考えて ミリアム様が足を運びそうな場所に影を忍ばせてくれているそうですよ?
まぁ………それも <ローズ>が来てからは、あの脱走癖も消えているみたいですけどね?」
イリアは、そう呟いて ニヤリと笑う。
「笑い事じゃない。
数日も戻られなかったと思ったら 下町の喫茶店で下働きになっておられた事もあったじゃないの。
すぐに駆けつけたから良かったものの 後少しでも遅れていたら 刺客に襲われていたところだった。
王妃本人は、おいしい紅茶を入れる技術を身に付けたと嬉しがっているが………」
第一騎士の言葉に 王も、言葉が見つからない。
「だが その一件があったからこそ 侍女の中に忍び込ませることを承諾させたんだぞ?
それまでは、嫌の一点張りだったからな?
自分の身は、自分で守るから………と。
最初は、それが誰なのか明かしていなかったが もう周知になっているがな?」
「ああ あの一件は、懐かしいですね~?
俺………自分よりも武器の扱い方に長けている女性、初めて出逢いましたから。
あの時から 俺の心は、ミイナに奪われたんです」
「そこ………惚気るなッ!
仕事に支障が出るようなら お前を他の場所の騎士に下げなければならないんだからな?
ミイナには、子供が生まれたら またミリアム様付きの侍女兼護衛に戻ってもらうのは、確実なのだから」
宰相の冷たい一言に イリアは、”肝に命じます!”と、敬礼。