訪問2
「おい………一体、何を考えている?」
問題皇子事 セレディー皇子は、眉間に皺を寄せて 呟いた。
騎士のトッドさんは、あまり害がないと判断してくれたのか 無言で付いてきているらしい。
「何 って、最初に言いましたよ?
皆さんに悪戯するような回りくどいやり方何かしなくても 仲良くなる方法があると」
<ローズ>は、楽しそうに 微笑んでいる。
けれど その瞳には、相手に拒否権を与えない強さがあった。
「お前………本当に何者なんだよ…。
普通 他国への訪問の始まりは、王の間で王と王妃の謁見から始まって 挨拶を交わすものなんだぞ?」
セレディーは、もう諦めてしまったらしい。
<ローズ>は、クスクスと笑って ”お前じゃありません、<ローズ>です”と、微笑む。
今度は、先ほどのようなものではなく 心から笑っている。
「<ローズ>ね?
確かに棘がありそうだ。
華の美しさとは、違って………」
皇子の呟きに 少女は、納得がいかないかのように 膨れっ面になった。
「別にそういう意味で名付けられたわけじゃありません。
名前を呼ぶのに <名無しさん>じゃ面倒だから………って」
その呟きに 皇子と騎士様は、驚いた顔になる。
「<名無し>だって?!
名前は、普通 親に貰うだろう?
厄介者扱いされている僕だって 父上に名前を頂いたっていうのに………」
「う~ん………わたし 実は、記憶喪失なんです。
それで 怪しいって、実を言うと 死刑宣告を受けたんですよね?」
今度の発言にも 絶句するお2人。
「でも ミリアム様………王妃様の行動とその話をして下さった陛下のご配慮で、ここまで生き延びたんです。
<ローズ>という名前も ミリアム様が、命名してくださったんですよ?
王宮の皆さんも 色々なことを教えてくださいます」
「だから 厄介な皇子の世話役を買って出たのか?」
少し自虐気味な言葉に <ローズ>は、”はい”と、正直に頷いた。
あまりに清々しく答えたので セレディー皇子は、吹き出してしまっているし トッドさんも、肩が震えてしまっている。
もしかしたら 怒るのを通り越して 笑いが込み上げてきたのかも。
「この王宮で暮らすようになってから まだ間もないわたしですけど 皆さんが、とってもいい人だってこと 痛いほどわかるんです。
けれど 皇子様方は、コミュニケーションの取り方がわからないというだけの理由で 引っ掻き回している。
だから こんなわたしにも出来ることを考えてみた結果 互いの誤解を取り除く事なんじゃないか、って考えたんです」
自信満々に微笑む様子に 2人は、顔を見合わせた。
「お2人は、言葉で表現する事が苦手なんじゃないですか?
皇子様は、ご自分に目を向けて欲しいから 何かと悪戯をする。
トッドさんの場合は、えっと………これは、第三者の方から聞いた為 誤解もあるかもしれないんですけどね?
この国が危機に瀕した時に 逃亡してしまったっていう 罪悪感があるから 他人行儀になってしまって 厳しく受け取られてしまうんじゃないかって」
その言葉に セレディーとトッドは、何も答えない。
「だから わたしが、橋渡しをするんです。
結局 頑張るのは、貴方方ですから。
恥ずかしいから………何て、馬鹿な言い訳をしないで下さいね?
拒否権は、ありませんから。
今のわたしの発言が気に入らなかったのなら すぐにおっしゃって下さい。
その代わり 一生、この国で和解することが出来ないという事を覚悟して頂かないといけませんけど」
<ローズ>は、何も反論が見られないのを確認して ゆっくりと歩き出した。
2人は、その後を無言で追いかけてくる。
というより 発言権を与えたのに あまりの言い方に言葉が見つからないのかもしれない。
<ローズ>は、これから実行する計画を頭の中で見直しながら スキップ調になりながら 歩んでいく。