校長の追求
インターハイが終わり、岐阜から群馬に戻って三日が経過した。
学校に戻った剣道部には、『当たり前だが』勝利の歓声も、華やかな祝賀会もなかった。
準優勝という結果は、この強豪校において、「負け」と同義である。
校内では、
「団体も東のせいで…」
「田中主将が最後に決められなかったからだ」
といった陰口が、出場メンバー、特に東清美と田中主将の耳に痛く響いていた。
…
インターハイから5日後の放課後。
体育科の会議室には、重く冷たい空気が張り詰めていた。
大きな長机を挟んで、上座には校長、その横に体育科長、そして剣道部監督が並ぶ。
向かいには、正座で小さくなるように座る女子団体戦出場メンバー五人。
これは、監督からではなく、学校側から急遽招集された「反省を促す会」だった。
校長は、机に置かれた資料を睨みつけながら、静かに、しかし威圧的に口を開いた。
校長:「まず、準優勝という結果、お疲れ様。しかし、我々が目指したのは、日本一のみ。結果は、それを達成できなかった、という事実だ。」
校長は、東から順に、一人ひとりの敗因を問い詰めた。
校長:「先鋒、山本。お前は勝ったが、その後に繋ぐ意識は足りていたのか? お前の勝利が、中堅以降の重圧を増した可能性もあるのではないか?」
山本は、震える声で「申し訳ありません」と絞り出す。
そして、校長の視線が、再び敗因の中心とされた二人に向けられた。
校長:「副将、東清美。お前は個人戦でも代表を逃し、団体戦でも、優勝を決める局面で一本を取られた。この二度の敗北が、結果としてチームの悲願を打ち砕いた。
改めて聞く。あの時、お前は何を考えていた? なぜ、攻め切れなかった?」
清美は、顔を上げることができない。
「あの…個人戦の、負けが頭から離れず、守りに入ってしまいました。勝たなければ、という焦りから、判断を誤りました。私の、弱さです…。」
校長:「弱さ? 体育科に入学し、毎日剣道漬けで、その結果が『弱さ』か。それが、群馬彩華のエースの言葉か?」
次に、大将の田中が問われた。
校長:「大将、田中。清美が敗れた後、お前はチームの優勝を託された。しかし、結果は引き分け。代表戦でも、エースである清美を再び立たせるという判断をしたのは、お前たちだ。
なぜ、お前がそこで一本を取りに行かなかった?
主将として、最後までチームを引っ張れなかった敗因は何だ?」
田中は、はっきりと答えることができない。
「清美の気持ちを考えると…代表戦で、清美にもう一度チャンスを与えたかった。試合では、相手の勢いに押され…冷静さを欠きました。全ては、私の責任です。」
次に、体育科長が、鋭い視線で口を挟んだ。




