忠誠を背負う主将の誕生
・・・季節は巡り、四月。桜の咲く季節を迎えたが、群馬彩華高等学校剣道部にとって、それは新たな「勝利の義務」の始まりを意味した。
東清美は三年生となり、女子剣道部の新主将に就任した。
彼女の肩には、過去の屈辱的な指導、剥奪された涙の権利、そして何よりも「群馬彩華、体育科への絶対的な忠誠」という、極めて重い責任がのしかかっていた。
二つの全国優勝トロフィーは、彼女の義務の完了ではなく、永続的な使命の証明でしかなかった。
新入生も入部してきた。もちろん、この厳しい環境に自ら飛び込むだけの精鋭たちである。しかし、彼女たちを迎え入れる部の体制は、以前にも増して冷酷なものへと変貌していた。
昨年度、剣道部が全国大会で不完全な勝利と、その後の指導という「醜態」を晒したこと、そして五人の反省文が校内に掲示された影響は大きかった。
まず、各部が行う恒例の入部勧誘が、剣道部に関しては廃止された。監督と体育科長の判断は、「勧誘して生半可な気持ちで入部させる必要はない。真に、この組織の勝利至上主義と規律を理解し、入部したいと願う者だけを受け入れる」というものだった。
剣道部の門を叩くことは、すなわち、「勝利への忠誠」を誓うことに他ならなかった。
そして、例年行われていた新入生歓迎会も廃止された。歓談や友好を深める場は、「甘え」であり、「時間の無駄」と断じられた。
入学式が終わるやいなや、彼女たちの新生活は始まった。
新入生は、華やかな高校生活を夢見る間もなく、即座に防具を身につけることを命じられた。三年生の東主将を筆頭に、在校生は一切の情けをかけることなく、新入生を稽古に組み込んだ。
道場には、新入生が驚き、戸惑う隙間さえなかった。東主将の号令は冷徹であり、その竹刀は容赦がない。彼女の動きは、「敗北の恐怖と、勝利への義務」で鍛え上げられた、非の打ちどころのない剣道だった。
東主将の剣道は、新入生にとって、この部の規律の全てを物語っていた。
個人戦での弱さを克服し、組織の勝利のためだけに存在する剣道。
「いいか、お前たち。この剣道部にあるのは、勝利という名のノルマだけだ。私情、体調、全てを捨てろ。流すべきは汗だけだ。涙は許されない。」
東の言葉は、かつて自身が浴びせられた指導の言葉そのままだった。四月の道場は、新入生を迎えた喜びではなく、勝利至上主義という鉄の規律が、さらに深く根を下ろしたことを示す、峻厳なる修練の場となっていた。新入生たちは、早々に、この剣道部が普通の部活動ではないことを悟った。
彼らの高校生活は、勝利への忠誠を捧げるための三年間として始まったのだ。
・・・
『終わりじゃない:始まりだ』




