褒められない栄冠
優勝を決定づけた東清美は、面を外したが、その顔に安堵や喜びの色はなかった。道場に歓声は上がらない。監督は、メンバーたちを整列させた。
監督は、優勝という結果については何も言わなかった。ただ、東清美に向かって冷酷な視線を投げつけた。
監督:「東。」
東は直立不動で立つ。
監督:「全勝優勝は、当然の義務の遂行だ。しかし、決勝の大将戦、一本を先に取られたことを、どう説明する。」
反省や叱責ではない。監督は、完全な結果からわずかに逸脱した過程を、冷酷に問いただした。
監督:「お前の剣道に、慢心があったのではないか。お前の集中力は、なぜ最後まで持続しなかった。その甘さが、優勝という絶対的な義務に、傷をつけたのだ。口頭で、この一本を先取されたことに対する反省の弁を述べろ。」
東は、優勝という栄光の直後に、一本を奪われたことへの反省を、その場で大声で述べさせられた。
こうして、二つの優勝楯を携えながらも、誰一人として褒められることなく、剣道部一行は秋田を発った。バスの中には、優勝の喜びではなく、「まだ足りない」「次は完璧に」という、勝利への強迫観念だけが充満していた。
彼女たちにとって、優勝は喜びではなく、続く義務の証明でしかなかった。秋田から群馬への長い帰路は、無言のまま、冷たい夜の闇をひた走っていった。




