「完全な優勝」をめぐる鉄槌
決勝戦、副将として出場していた小林が、相手に一本を奪われ、敗北していたのだ。
団体戦の勝利には繋がったものの、これは「完全な勝利」ではなかった。
監督にとって、一人の敗北も許されない勝利こそが、彼らが償うべき義務の証明だった。
バスに戻った直後、監督は優勝の喜びを口にすることなく、小林を呼びつけた。
監督:「小林。」
監督の声は、低く、怒気をはらんでいた。
監督:「お前は、全国の舞台で敗北した。勝利の義務を、この土壇場で怠った。我々が求めているのは、完全な勝利だ。お前の敗北は、優勝という結果を、不完全なものにした。」
小林は顔面蒼白になり、何も言えない。
監督:「この優勝は、許される優勝ではない。」
監督は、容赦のない結論を突きつけた。
監督:「次の秋田の大会から、お前を即刻、団体メンバーから外す。」
小林の顔から、一気に血の気が引いた。
全国大会での優勝経験があろうと、敗北は即刻、組織からの排除を意味した。
監督は、小林の代わりを指名すると、一瞥もせず、すぐにバスの運転手に次の目的地である秋田への出発を命じた。
優勝の歓声はどこにもない。
小林は、優勝トロフィーが置かれたバスの片隅で、ただ一人、打ちのめされていた。彼女の敗北は、「勝利の義務」を怠った者への、見せしめとなった。
過酷な車中泊の道程は、次の秋田での大会に向けて、さらに重い空気を纏いながら、夜の闇へと進んでいった。




