優勝への道程と車中泊の強行軍
三月下旬。剣道部は「勝利の義務」を果たすべく、全国大会へと乗り出した。
一行の行程は、極めて過酷だった。
体育科のバスに乗り込み、群馬を出発すると、まず愛知県での全国選抜大会へ。そして、そのまま北上し、秋田県での魁星旗剣道大会へと連戦する、まさに強行軍だった。
ホテルでの宿泊は許されなかった。
それは、「贅沢」であり、「甘え」と見なされた。
選手たちは、狭いバスの中で体を休める車中泊を強いられた。疲労は限界を超えていたが、彼女たちの心は、壁に貼られた「忠誠」の書面と同じく、硬く閉ざされていた。
弱音を吐くことは、裏切りに等しい。
選抜大会では、日々の苛烈な稽古と指導の成果が遺憾なく発揮された。
剣道部のメンバーは、感情を排した冷徹な剣道で勝ち進み、順調に決勝まで辿り着いた。
決勝戦。
東清美は、大将として出場。勝利への冷徹な執着をもって相手を圧倒し、見事な一本勝ちを収めた。結果、群馬彩華高等学校剣道部は、全国選抜大会での優勝を果たした。
優勝を果たした瞬間、バスの中で歓喜の声を上げる生徒はいなかった。
監督、そしてメンバーたちの目にあるのは、「これは、ただの義務の遂行だ」という無言の了解だった。
しかし、監督の表情は、晴れるどころか、さらに厳しく、険しくなった。優勝は優勝だが、内容が監督の求める「完璧な勝利」ではなかったからだ。




