納得がいかない
体育科長:
「…ふむ。申し訳ない、責任、甘え、弱さ、か。」
体育科長は資料を一つ叩きつけ、静かに、しかし冷徹な声で言った。
体育科長:
「お前たちの言葉には、確かに悔しさや責任を感じている様子は伝わってくる。だが、それは『敗北した人間が言うべき定型文』に過ぎない。
我々が求めているのは、そんな生ぬるい反省ではない。お前たちの言葉は、『結局、何が足りなかったのか』という核心を突いていない。」
科長はまず、主将の田中を厳しく見据えた。
体育科長:
「田中。お前は主将として、チームを統率する義務があった。清美が個人戦で失敗した時から、お前は彼女の精神的な脆さを知っていたはずだ。
にもかかわらず、決勝の副将に清美をそのまま起用した。そして、清美が敗れた後、なぜお前は代表戦の出場を、自分ではなく清美に委ねようと考えた?
それは、『もし負けたら』という責任の押し付けではなかったのか?」
田中部長は、顔を上げることができない。
田中:
「…っ、それは…違います。もう一度清美に…」
体育科長:
「黙れ! 美談にするな!
結果的に、お前はチームの勝利という最大の目的よりも、『仲間を救いたい』という個人的な感情を優先させた。その判断の甘さこそが、優勝を逃した真の原因ではないのか?
大将として、勝利に徹しきれなかった、お前の根本的な敗因を、もう一度、深く考えろ。言い訳ではない、真実を述べよ!」
そして、矛先は東清美へと向かった。
体育科長:
「東。お前は、この学校の体育科生だ。この競技で、全国の代表を期待されていた人間だ。二度も、二度も、『トラウマ』という言葉で、大舞台から逃げた。我々は、お前のために、特別な施設、特別な指導、特別な稽古、全てを提供した。それに対するお前の答えが、『弱さ』で片付けられるのか?」
科長は、机を強く叩いた。
体育科長:
「お前が決勝で一本を取られた瞬間、お前はチームの裏切り者になったのだと、自覚しているのか? その重さを、まだ理解できていないのではないか?」
清美は、完全に体を強張らせた。
体育科長:
「いいか、田中。東。お前たち二人は、この敗北の責任を、誰よりも重く受け止めなければならない。今述べた反省の言葉は、まるで他人事だ。
もう一度、深く反省し、なぜ、お前でなければならなかった勝利を逃したのか、その真の敗因を、監督に徹底的に問いただしてもらえ!
・・・監督。指導をお願いします。」
体育科長は、監督に引き継ぎを求めた。監督は重い表情で頷き、再び静かに、
しかし冷たい怒気を込めて、二人に向き直った。
監督:
「田中。東。…立て。そして、私に答えろ。お前たちの、根本的な敗因は何だ?」
監督からの「根本的な敗因は何だ?」という問いは、田中と東の心に深く突き刺さった。
二人は、これまでの反省の言葉が上辺だけの「美談」や「定型文」であったことを悟った。数分間、二人は顔を上げず、ただじっと考え続けた。
会議室の空気は、張り詰めた糸のように張りつめていた。
やがて、田中が先に、重い口を開いた。




