それは、敗北から始まった。
この物語はフィクションです。
でも、本当にフィクションかどうかは、わかりません。
なぜならば、その貪欲な勝利至上主義は、学校か、指導者か、それとも個々の部員の心のどこかに潜んでいるから・・・
小学校3年生の頃から剣道に励み、群馬彩華高等学校体育科2年生で剣道を励んでいた東 清美女子。17歳。
2年生として群馬県のインターハイ女子個人の代表と期待されていた。
・・・しかし、彼女は決勝戦で敗退をした。
代表になれず、
高校の名誉を傷つけ、
剣道部の名誉を傷つけ、
・・・剣道部監督・広澤から叱責されていた。
放課後の道場に響くのは、竹刀が打ち合う音ではない。広澤監督の叱責の声だ。
叱責の合間に訪れる静寂さえも、東清美の耳に重くのしかかる。
広澤監督の厳しい眼差しが、清美の全身を射抜く。
「東、お前は何をやっているんだ!」
広澤監督の声が、張り詰めた空気の中で一層大きく聞こえた。
清美は顔を上げられない。唇をきつく噛み締めることしかできなかった。
インターハイ群馬県予選、女子個人戦決勝。
誰もが清美の優勝を信じて疑わなかった。小学校3年生から剣道を始め、常に期待の星として注目されてきた清美。群馬彩華高校体育科の2年生として、学校の、剣道部の期待を一身に背負っていた。しかし、結果はまさかの敗退。
「お前は、この学校の名誉を、剣道部の誇りを、土足で踏みにじったんだぞ!」
広澤監督の言葉が、清美の胸に再度突き刺さる。
悔しさ、情けなさ、そして何よりも、皆の期待を裏切ってしまったことへの罪悪感が、清美の心を締め付ける。
「申し訳、ありません…」
絞り出すような声が、か細く道場に響いた。
「謝って済む問題ではない。お前一人の問題じゃないんだ。わかっているのか!」
広澤監督の怒声に、清美の肩がびくりと震える。
頭の中で、決勝戦の最後の瞬間が何度もフラッシュバックする。あと一歩、あと一歩だったのに。なぜ、あの時…
清美の目から、一筋の涙がこぼれ落ち、畳に小さな染みを作った。
道場の空気は、重く、冷たいままだった。清美は、ただ立ち尽くすことしかできない。
インターハイへの夢は、この夏、儚く散った。




