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湖に刻まれた記憶 失われた叡智を求めて-生成AIと綴る物語-  作者: Kai
- 1 - ニュース発表の裏側と新規アシスタント
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- 1 - ニュース発表の裏側と新規アシスタント 3


――去年の夏にあった研究所のパーティで所長が言ったんだ。



「死ぬまでいや、死ぬまでは無理でもあと10年は現役で研究するさ」って。



この言葉がこんな事態を引き起こすなんて言った本人も、パーティに参加してた研究所のメンバーも誰も想像もしなかったさ。



所長が研究熱が酷すぎて数ヶ月も家にも帰らずに研究に明け暮れて、奥さんや娘に孫が怒って迎えに来るのなんていつものことで、誰だってまた所長が冗談…いや、本気か? 今度こそ離婚されるんじゃないのか?と心配しながらも、ただ所長は『死ぬまでずっと研究がしたい』って言ってるだけだと、冗談だと考えてみんな笑ってたんだ。



だからまさか、副所長があの発言で精神的に追い込まれるなんて誰も考えもしなかったから、ニュースが流れるまで誰も情報が漏れた事も気づかなかったんだ。



朝、急いで研究所へ行けば解読チームへの応募者と野次馬たちで溢れかえっていて、研究所の前から中に入って研究室にたどり着くのに普段なら30分もかからないのに3時間もかかったって言ったら、どれだけの混雑だったかわかるか?



解読チーム自体、復元された情報がもう少し増えたらって言っていたのに、選ばなかったら暴動が起きるだろという事で、希望者には整理券を配るにしてもどんどん混雑が酷くなるからと、国の自治部隊に連絡して整理券を配る為の整備だけで2週間もかかった。


なんでそんなにかかったかって?


ニュースが流れて、それが新聞になり、商人たちの話で他国の民にも広がり、希望者が他国からも押し寄せ…ようとして―― 土地続きのとこは国境に軍が配置されて暴動対策されたり、王家や政府を通して諸外国に現状のパニックを伝え入国制限を設けたが、成果を1国で抱え込むのではと疑いも向けられて、戦争が起きるのではというぐらい緊張した状態になったのさ。



そして、妥協案で研究所ではなく各国でまず審査を行う事が決まり、我が国に入国するのに問題ないか審査があって、その上でこの研究所で解読チームとして働ける技能があり、我が国に研究に関わる全てを害さず、許可なく漏洩しないという神聖契約を受ける。という事で話が一段落したんだ。



そこで当たり前だが、権力者たちの無理矢理もある訳だ…



まあ、そういった者が出ないように各国資格がある上で権力や後ろ盾がある人を送り込んで円満にやりましょう。ということで、我が国の王子と王子との結婚を目指す良家の子女と本当に解読がしたい数人がアシスタントとして選ばれたって訳だ。



ここでなぜ本職の研究者ではなく何故アシスタントとしてか?



理由は簡単さ。



王子は公務もあるからだ。



良家の子女たちは王子がいない時まで研究なんてしたくないから。



とってもシンプルな理由だろ? なんだろう。


まるで使い古された小説のあらすじの様な話だ。



だが、今起きているのは、そんなもうみんなが見飽きた物語の筋書きの一部に取り込まれたかと錯覚するような事態なんだ。



そして、もちろんその枠にギリトの孫娘も入っている訳だ。



炎の大陸は王家も貴族制度もない。 だから経営者が強い力を持っているのと、今回復元された叡智の湖研究所の所長がギリトの先祖のお姫さまの祖国の人間だった説が強く、昔叡智の湖を中心とした魔道具が使われていた頃、何か繋がりを必要としていたという話もあって、他の候補者を抑えて孫娘がアシスタントとして捩じ込まれて来たんだ。



まあ、そうなったら黙っていないのは優しい雨降る小国で。



そんな事情であれば”より高貴な血が流れている方がよいのではないか。”と、ギリトの地雷を踏み抜く様に、ギリトの母と婚約の話が進んで居た家の直系のお嬢さんが送られて来たんだ。



そう。 本来、ギリトの母が大人しく結婚していたらギリトが結婚したであろう王族の末娘との娘で傍系であれ正しく王族であり、王位継承権も末席ながらある娘の方が王子の相手としても叡智の湖の為にもいいだろうと…



もう、そういう争いは政治の場で勝手にしていて、この国に持ち込んでくる事が迷惑だと思わない時点で害でしかなく、王子の婚約者候補から真っ先に外れているのだが、言って騒がれるより、そのうち神聖契約を破るだろうと放置されて居るのだが、彼女たちは気づくのだろうか?



まあ、気づかなくても問題なく問題を起こした者の国へ、我が国が有利な外交条件とその国のものの研究所への立ち入りを禁止する取り決めを決められただけ、マシなのかも知れない。



だから、こう考えるしかない。



彼女たちを乗り越えれば、この騒動も終わると。



……そう信じたいんだ。




柔らかな春の日差しが、窓から渡り廊下に斜めに差し込んでいた。


冬とは違う、淡く滲むような影。


昼寝をするには最高の季節になったと一瞬思いながらも、その平穏な時間を奪っている元凶たちを思い出して、レンは内心舌打ちした。



課題の再通達と神聖契約の確認。


それさえ片付けば、今夜はチームのみんなと、塊肉のチリトマト煮にビールでも合わせて、久々にまともな夕食を楽しみたい。



そう思いながら、レンは外部者との打ち合わせ用に設けられた古塔へと足を向けた。


塔は、大戦以前のものだ。


外観こそ時代の風雪を受けていたが、中は丁寧に修復されており、歴史的価値もあり贅沢な環境に慣れた外国の研究者たちでさえ賞賛する静謐な空間だった。



――少なくとも、彼女たちが押し寄せるまでは。



感慨に耽りながら塔に近づくにつれ、鼻につく強い香水の匂いが漂ってくる。



それも、一つではない。 いくつもの香りが混ざり合い、すでに悪臭と呼んで差し支えない代物になっていた。



なぜ、彼女たちはこの惨状に耐えられるのか?



考えても詮無き事だと知りながらも、レンは思考を巡らせ、そして扉を押し開けた。 王子が公務に出ているこの日を選んだのは正解だったかもしれない。



会話を長引かせる理由が、誰にもない。



部屋に一歩踏み込んだ瞬間、視線が一斉に集まった。 高位貴族、政治家、財閥家――それぞれの後ろ盾を持つ娘たち。



だが今この場では、レンの立場が彼女たちよりも上だった。



それを彼女たちも、理解している。



レンは彼女たちの期待も緊張も、全て無視して口を開いた。




「お嬢さん方、ご機嫌麗しゅう。


さて、王子も不在だ。君たちも取り繕う手間は省きたいだろう。


早速、本題に入る。」



――――――――――

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