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「いやー面白かったね。毒は何処から持ち込まれたのか知りたくない?知れば君も悲しまなくなるさ」


死神は先ほどの出来事が楽しくて仕方がないのか笑顔で話す。


「死神さん、いつ私は身体に戻ることが出来るの?」

「今のままでは難しいね。ほらっ見てごらん。さっきまでは無かったけど、薄らと君の名前が浮かび始めているだろう?」


 本を取り出して私に見せた。そこには死亡者リストの一番下に薄らと私の名前が浮かび上がっている。


「わ、私は死んでしまうの?」

「まぁ、このままだとそうだね。でも方法が無いわけじゃない」

「どんな方法があるの?」

「名前の載っていない、つまり死ぬ予定のない人の命を差し出せばいい」

「死ぬ予定のない人の、命……。そんな事できないわ」


 急に自分が死ぬことを突きつけられたような感覚になり泣き出したい、生きたいと思った。けれど誰かを自分の身代わりにすると思うととても怖くなった。


私の代わりに。


その人がこれから生きる分、味わう幸せを奪うなんて重い。


「ははっ。まぁそんなのは後で考えればいいさ。さぁ、見にいこうよ。絶対君も面白いと思うからさ」


 そうして私が死神に連れられて飛んできたのは王宮内の一室だった。

 周りを見渡すとどうやらここは王妃殿下の執務室のようだ。執務を行っている王妃殿下の後ろには護衛が二人ついていて侍女も壁際で待機している。




―コンコンコンコン―


『入れ』の言葉に入室してきたのは騎士団長と思われる人だった。騎士服に勲章がいくつも付いている。


「どういうことかしら?私を舐めているの?私が主催したお茶会であんな事が起こるなんて信じられないわ。で、あれから犯人は見つかったのかしら?」


 王妃様は顔色一つ変えずに騎士を詰る。彼は敬礼をした後、王妃殿下に書類を渡すと一歩下がり、言葉を待っている。王妃殿下は眉を顰めながらもすぐに書類に目を通し、口を開いた。


「ふうん。あの時に一緒に倒れた男爵令嬢なのね?」

「はい。どうやら事前に決められていた席に着いた時、侍女に話をして薬を渡していたそうです」

「持病の薬ねぇ。で、侍女は素直にその指示にしたがった、と?」

「はい」

「で、彼女は同じ毒を口にして軽かったのかしら?」

「事前に解毒薬を飲んでいたのだと思われます。更に駆け寄った伯爵子息がすぐに毒を体内から出すように処置をした事と医者の薬を我先にと一番に飲んだ事で影響はほぼ無かったと思われます」

「で、証拠はあるのかしら?」

「それが、未だ決定的な物はまだ出てきておりません」

「今彼女はどうしているの?」

「大事をとって男爵家で療養をしているようです」

「もちろん付けているわよね?」

「はい。しっかりと見張っております。動きがあればすぐに分かるでしょう」

「分かったわ。暫く泳がせておいて。それと倒れたもう一人の子はどうなったのかしら?」

「クオッカネン侯爵令嬢は未だ目覚めておりません。解毒薬を毎日摂っているようですが日に日に弱っていると医者は言っておりました。目覚めるかそのまま亡くなるかは半々だと」

「……そう。彼女も可哀そうよね。婚約者に裏切られ、浮気相手から毒を盛られるなんて。王族でもないのに。少し同情してしまうわ。後でお花を贈っておいて」


 王妃殿下はそう言うとまた執務を再開した。騎士は畏まりましたと部屋を出て行った。





「アハハハ。やっぱり犯人は彼女なのかな?面白くなってきたね。嫉妬?それとも優越感に浸りたかったのか、それとも両方かな。これからどうなるか楽しみで仕方がない」


 死神は宙に浮きながらとても機嫌が良さそうだ。私は目覚めてからの情報が多すぎてクタクタになった。


何も考えたくない。


 きっと彼女は私を陥れるために王宮で毒を盛ったに違いないわ。彼は私を選んだのよ、と言わんばかりの勝ち誇った顔を思い出す。


「あぁ。マノア、可哀そうに。疲れただろう?こんなにも薄くなって。少し眠ればいい。少し休んだらまた一緒に面白い物を見に行こう」


死神はパッと私を抱き寄せて手の甲にキスをするけれど、その手の甲は半透明になっていた。


……どういう事なの?


私はこのまま消えてしまうの?恐怖で震えてしまう。


「あぁ。こんなにも震えて。言っただろう?今の君には身体がないんだ。無理をすると消えてしまうからね。少し休もう」


 死神が私のおでこにキスを落とすと私の視界は暗転し、意識を失ったようだ。


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