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箸休め程度の短編です。宜しくお願いします(´∀`)

 それは王宮のお茶会の席で起こった。


「キャー」

「誰かっ!早く、医者を!」


 倒れたノーラ・サンドス男爵令嬢の側に駆け寄り抱き支える彼の姿。彼女は介抱されながら私を見て少し口角を上げた。


あぁ、やはり私は選ばれなかったのね。


 そう思いながら地面に横たわった私の視界はゆっくりと閉じられた。




 気が付くと、私は部屋で一人立っていた。


ここ、は私の部屋?


周りを見渡すと父や母、兄が私のベッドの周りにいて涙を流している。


どういう事……?まさか、なの?


 私は恐る恐る父と母の間からベッドの方を覗くとそこには私がいた。私が静かに息をし眠っている。でも、私はここにいるわ?


「君の身体は今深い眠りに就いているんだ。マノア」


声がした方向に顔を向けるとそこには黒いローブを着た黒髪の男が立っていた。


「貴方は?」

「僕?僕の名は、死神とでも言っておこうかな」


私はその言葉が恐ろしくて後ずさりをする。


……え?


今、父と母をすり抜けた、の?


「あぁ、君は今身体と心が離れた状態だからだよ」

「私は死ぬの?」

「いや、死ぬ予定はなかったけど、君の心は随分と疲れていたみたいだね。このまま死んでも可笑しくはないよ。だから僕が呼ばれた。このまま君を連れて行ってもいいかなって思ったけど、なんだか楽しそうな事が起こりそうだから考えているんだ」

「楽しそうな事?」

「あぁ。それまでの間、僕と一緒に過ごすってのはどうだい?」


 死神は微笑みながら手を差し出す。どうせ連れていかれるなら死神に言われるまま、もう少しここにいてもいいかもしれない。


 私はそう思い、涙を流している家族をまたすり抜けて死神の手を取った。


「そうこなくっちゃ」

「ねぇ、死神さん。聞いても良いかしら?」

「何だい?マノア」

「私は王宮のお茶会で倒れたはずだったんだけど、どうして家にいるの?」


 死神は本のような物を何もない空間から取り出して読んでいる。


「えっとね、君とノーラは隣のテーブルに座っていて配られたお茶を飲んで倒れたんだ。そして君達は王宮の医務室へと連れていかれ、解毒剤を飲んだ。毒を調べるのに手間がかかったみたいだね。ノーラは倒れてすぐに君の婚約者だっけ?アランが駆けつけたからかな?面白いね。

彼女は何事もなかったようにその日のうちに帰宅したよ。反対に君は目覚めないまま一週間が過ぎても症状は良くならなかったみたいだね。このまま王宮にいるより家で看病したいと君の父は願い出た。そして希望通り邸に帰ってきたのがさっきだ」


 一週間も眠り続けていると聞いて私は愕然とした。でも、それ以上にアランがノーラの方に駆け寄った事に悲しみを覚えて胸が苦しくなった。


 すると部屋がパチッと小さく音が鳴った。まるで静電気が起きたように。死神は突然私をギュッと強く抱きしめた。


「駄目だよ?君は今身体と離れているんだから弱い存在なんだ。あまり無理すると心が消えてしまうからね。気を付けるんだよ」

「……わかったわ」

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