選べない
アハト国への一行は大所帯だった。
騎兵隊、事務官、警吏官、土木や建築の技術者に料理人まで。
不戦条約を破り我がエルステ王国の城を攻めた結果、アハト皇国はエルステ王国の一部となった。皇族は処刑を免れず、家臣や旧国民の処遇が慎重に討議される。
エルステ王国でも4大公爵家のひとつ、バイブリー公爵家と与した家が取り潰しとなった。
アハト軍は夜に小船で川を下りバイブリー公爵領に着き、領からは公爵家の馬車と荷物に隠れ王都に潜入したという。王家に積年の恨みがあったらしいが、まさかの裏切りだ。今度、外門を検分無しで通れる馬車は無くなるという、王族も含めて。
早急に国を作り変えるのに必要なのは王族、そのためにアルフレッドは呼ばれているのだろう。
(公爵家ならやっていけると思っていたのに…)
アルフレッドが無事だった喜びでつい求婚を受け入れてしまったが、『事情が変わった』わけをきかなかった事は失敗だった。
「俺たちが結婚することは覆らないよ」
シャーロットの不安が伝わったのか、アルフレッドに肩を抱かれる。シャーロットはすっかり彼の婚約者扱いとなり、同じ馬車でなぜか隣に座っている。本来なら同じ馬車のはずのメイドと護衛の女性騎士は後ろの馬車だ。
「でも、フレッド様はアハト国の後を治める方になるのではないですか?そうなると、相応しい伴侶が必要では…」
「ではシャーリーに選ばせてあげる。王妃と将軍夫人、どちらになりたい?」
「!」シャーリーが青ざめる。
「どちらも嫌なら、駆け落ちかな」
「駆け落ち?フレッド様が?」
「狩りは得意だし、大工仕事もできる。こう見えて結構使える男だと思うよ。シャーリー1人くらいどこに行っても養えるさ」
村はずれの小さな家、暖炉に火を入れて夕食の支度をしながらフレッドの帰りを待つ。そんな暮らしができたら…
シャーロットは首を振る。
「憧れますが、フレッド様は私が独占していい方ではないですから」
「俺はシャーリーを独占するけどね。覚悟を決めてくれたかな?」
「はい、私は…」




