16. 王都の長い夜③
公爵邸は明るく照らされ、門を兵士達が守っていた。異変にも気づいているようだ。アルフレッドの不在をマックスがしっかり預かっているのがわかる。ノアールとシャーロットを見て兵が門を開ける。
「マックスとビリー隊長に伝えたいの」
「ここです、ご無事でよかった。殿下は戦闘に?」
すぐにビリーが現れた。
「城が襲撃を受けてます。敵軍は王都のどこかに潜んでいて、そこから現れました。兄が援軍を呼びに行きました、急がないと兵の数で負けてます」
「分かりました、すぐ私兵を集めて向かいます。護衛を残すので、シャーロット様は屋敷の中にいてください」
これで主人が城に居て命を受けられなかった私兵達も動いてくれる。城に近い貴族街からの援軍は心強い。
「シャーロット様、メイドを呼びます、着替えて部屋に待機を」
マックスが慌ただしく使用人に指示を出している。
「1人でできるわ、後で状況を教えて」
部屋に戻ると見る影もないドレスを脱ぎ捨て、手早くシャツと乗馬用のズボンを身につける。
レーゲンスブルクでの有事の時を思い出すが、王都での事情はよくわからない。
「マックス、もうできることはないかしら?」
マックスがはっとする。
「大聖堂の鐘を鳴らさないと…」
王都では何十年もの間敵襲を告げる鐘は鳴らしていない。
「王宮からの指示が伝わってないのか…」
「兄が伝達用の魔道具が使えないと言ってた…鳴らしてもらう方法はない?」
「私なら顔が知れてるし、フレッド様の印も預かっています。私が行きましょう」
「マックスはノアールに乗れる?」
失礼かも知れないが、頭脳派に見えるマックスに尋ねる。
「…あまり、好かれては無いですね」
賢い馬は下手な乗り手を嫌う、マックスはやはり乗り慣れてないようだ。
「我慢して、私と行きましょう」
「シャーロット様を危険な場所に行かせるわけには…」
「こう見えて弓も使えるのよ、急ぎましょう」
大聖堂の鐘は意味を持って鳴らされる。敵襲を告げる鐘は住民は戸締まりを厳重にして家に籠り、非番の兵士は武器を手に城に駆けつける意味を持つ。
一刻も早く鳴らさないと住民が危ない。
シャーロットとマックスを乗せたノアールと2騎の兵士は大聖堂に向けて夜中の街を走った。




