15.王都の長い夜②
前触れもなく王宮が襲撃されるという非常事態だが、貴賓席にいた将軍が素早く指示を出す。
「近衛は王族を奥で守れ!内務官はレディを塔に避難させろ!紳士諸君は剣を取りこの場から引くな!」
おおと言う声がこだました。今こそノブレス・オブリージュを果たす時だと。
襲撃を予測してアルフレッド達は、王都の城壁周辺の守りを強化していた、この事態は深刻だった。
「シャリーも避難を」
「…外に知らせる事なら私にも出来るかもしれません、フレッド様は行くべき所へ」
「…一緒に過ごした東屋の場所がわかるか?」
「はい」
「あの裏の隠し扉は王族の魔力、そのネックレスで開くはずだ。可能ならノアールと脱出を、だが絶対に無理はするな!」
そう言い残すとアルフレッドは王立軍の兵舎に続く地下通路へと走り去った。
残されたシャーロットはルークを探した。兄も探してくれていて、喧騒の中なんとか落ち合うことができた。
「敵兵は城下に潜んでいたらしい。いきなり王宮が襲われた。外門の兵を増強したのが仇になったな。魔導具の通信も邪魔されてる、中々用意周到だ」
すでに情報を掴んでいるのは感嘆する。
「抜け出して、外門を守る兵に知らせなければ」
「兄様、剣を貸してください」
怪訝そうに渡された剣を手に取ると、シャーロットは自分のドレスの裾を切り落とした。
「これで、一緒に行けます」
ルークはため息をついた。
「お前に何かあったら父上とフレッド、両方に殺されるな」
ルークとシャーロットは広間を出て、2階の廊下を厩舎の方向に進む。兵達の争う声は段々と大きくなる、あの怒号の中にフレッドがいると思うと不安で堪らなくなる。でも、今は自分に出来ることをするしかない。
厩舎の上まで来るとルークが見つけてきたロープをたらし、まずルークが下りる。縄を引き合図をして下りてきたシャーロットを受け止める。
「ノアールは扉の場所を知ってるはずです、ノワールに任せましょう」
シャーロットの乗ったノアールにルークの鹿毛の馬が続く。
灯を点けず夜目の効く馬を信じて、なるべく音を立てぬよう気を配りながら城の庭を進む。
時間をかけてやっと東屋の裏にたどり着いた。シャーロットは壁に手を当てたままノアールを進ませる。やがて土壁とは違う冷たい感触に当たった。
「兄様ここです、先に通ってください」
首にかけたネックレスに魔力を流すと、エメラルドが熱を帯び扉が開く、ルークに続いてシャーロットとノアールが通ると扉は静かに閉まり消えた。気づかれずに抜け出す事ができたのだ。
2人は狭い路地を選んで馬を走らせる。
「俺はこのまま外門に向かう」
「私は公爵家の私兵に知らせます」
「いいか、絶対に無茶するなよ」
「…多分」
それ以上何も言わずルークは離れていった。




