14.王都の長い夜①
国王陛下の挨拶の後、王太子と婚約者フローレンスのファーストダンスで夜会は始まった。フローレンスは大国ジーベンの王女で、婚約式を終えてこの国に留まっている。
続いてのダンスにシャーロットとルークも加わった。
「兄様と踊るのは久しぶりだけど、案外お上手ね」
「お前も田舎令嬢にしてはうまいな」
「褒め言葉と取っておきますわ」
曲が終わり2人で戻ると、アルフレッドがシャーロットの元へやって来てうやうやしく礼をする。
「辺境伯の美しき姫君、私と踊っていただけますか」
「…喜んで」
ルークに肩を押されたシャーロットはアルフレッドの手をとり、フロアの中央に向かった。
周囲にはざわめきが起きていた。
「王弟殿下が自分からご令嬢を誘うのを初めてみたぞ」
ダンスが始まるとシャーロットは痛いほどの視線を感じた。
「注目されていて、恥ずかしいです」
「私だけを見ていればいい。それに貴方の踊りはとても優雅だ、常々所作も美しいと思っていたが」
「ありがとうございます、学園に通う3年間トーリア伯爵家に世話になりまして、母親代わりのレベッカ叔母さまにみっちり仕込まれました」
「ああ、私はメイドをしていたと勘違いしていたな」
「ごめんなさい、そう取れるように伝えました」
シャーロットがくすりと笑うとアルフレッドが笑い返して、周囲はまた目を見張った。
ダンスが終わるとアルフレッドはシャーロットをバルコニーに誘った。ちゃんと侍従から剣を受け取って…
「殿下、ありがとうございました。今夜のダンスは生涯忘れぬ思い出となります」
「私は今夜で終わりにしたくはない。これからも何度もシャーリーとだけ踊りたいと思っている」
「……」
「私は生まれた時から王太子である兄上の予備だった。ウィリアムが成長して継承権の放棄を希望したが認められず、今はウィリアムの予備となっている」
シャーロットは何も言えなかった。
「自分が面倒な存在なのは自覚しているからね、わざと前線に行く軍に加入したし、結婚はしない方がいいのだろうと思っていた。だけどシャーリーに出会えて…私が動かないままでシャーリーが他の男と結婚したら、酷く後悔する未来が見えた」
アルフレッドは手を取ってシャーロットを見つめる。
「だから私は動くことにした。シャーロット・レーゲンスブルク嬢、私は貴方を愛している。返事は急がない、私との未来を考えてくれないか」
「フレッド様…」
シャーロットはゆっくりと頷いた。
見つめ合う2人。
その時突然外に爆発音が響いて、アルフレッドはシャーロットを抱き寄せる。広間に動揺が走る。
「城門の方か?」
次におびただしい弓矢が向かってくる、アルフレッドはシャーロットを庇いながら剣で矢を払い室内に戻る。
「敵襲だ窓を閉めろ!」
誰かが叫んだ。




