13.式典の日
式典の当日、フレッド様と兄はかなり早くから王宮に向かった。私には話せなかった事があるのは察する、お偉方と色々相談するのだろう。昼は勲章授与式、夜は夜会なのだからそのまま王宮に居ればいいのにと思うが、昼間は騎士の正装なので夜会の時は着替えるらしい。男性の服装の決まりも難しいようだ。
授与式は問題なく終わったと2人が戻ってきたが、私はメイド達に捕まっていて迎えには出れなかった。風呂で丹念に磨かれ、香油をすり込んで全身マッサージ。公爵家メイドの本気が怖い。
持参した中で一番の水色のドレスに、用意されたアクセサリーはエメラルドだった。
「…えっと、この色はちょっと」
「ご主人様が是非にと、シャーロット様の綺麗な肌によく映えますね」
メイド長が嬉しそうに微笑んでいる。首にかけてもらうと何故か温かく力を感じる、緑がフレッドの瞳の色である事と関係しているの?
髪はベスが結い上げてくれた、侍女志望だけあって器用でとても素敵にしてくれた。
すっかり整った所に迎えにきたのは兄でなくアルフレッド様だった。
「会場に着くまでのエスコートは私が引き受けるよ」
「恐れ入ります」
そう言って顔を上げると、アルフレッドが片手で口を押さえていた。心なし顔も赤らんで見える。
「シャーリー、とても綺麗だ」
「ありがとうございます、フレッド様も素敵…です」
差し出されたフレッドの手を取って歩き出す。
「そのエメラルドを身に纏ってもらえて嬉しいと思う。おまじないに私の魔力も込めてあるから」
耳元で囁かれてシャーリーも真っ赤になった。
それに白地に金モールの正装で現れたフレッドは、絵画のように麗しい。こんな完璧な彼に手を取られて歩くのは、夢のようだ。
馬車ではアルフレッドとシャーロットが並び、ルークが1人で座った。しかし、馬車の中での話題は不穏なものだった。
「アハト軍の駐屯地から、かなりな人数が消えている」
兄が口を切った。
「消えた…とは?」
「どこに潜んでいるか不明なのだ、王室の影と辺境領の斥候から同じ報告が来ている」
和平は偽りだったのか、父が一番怒るやり方だ。
アルフレッドが続ける。
「近いうちに攻撃がありそうだ、それが今晩かもしれない。辺境領も王都の門も警備を強化している。王宮が一番安全なはずだが、シャーリーは私かルークのそばを離れないでくれ」
「分かりました」
馬車を護衛する兵が乗っていたのは、フレッドの愛馬ノアールだった。緊急時に備えて王宮に繋いで置かれるのだろう。気の抜けない夜会となりそうだ。




