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七翼会議

 光が収まると、そこはさっきまで立っていた道路の上ではなく異世界の会議室みたいなところだった。頭の後ろあたりにメタトロンの気配は感じる。

大きな円形の机自体が青く発光していて、電気の代わりにこの部屋を照らしている。その机自体とその周りにある7つの椅子もどんな力が働いているのか、空中に浮かんでいる。そして少し離れた奥の方の一段高くなっているところに、少し豪華な四足付きの椅子と小さな机が置かれている。


「ようやくそろったか、天使七翼にその依り代。」


 ふと、そんな声が頭上から聞こえた。次にパチっ、と指を鳴らす音が聞こえ、それを合図にこの部屋の壁が青く発光した。それでようやく、俺たち以外にもこの部屋にいると気づいた。壁際に並んでいるのは七人の男女。みんな高校生と中学生って感じかな。当然のように彼らの後ろには天使が控えている。

……ん?なんかメタトロンと違って、みんな大きくないか?


「さあ、机の周りの椅子に座るといい。ちょうど七脚あるはずだ。」


 先ほど頭上から聞こえてきた声が、今度は奥の方から聞こえてきた。

そこには椅子に座った大学生っぽいラフな恰好をした女性とその背中に4対8翼の少し赤みがかった翼を背負った天使が一人いた。翼だけではなく、その放つ雰囲気からも明らかに俺たちの天使よりも高位の存在だとわかった。

 その天使の放つ神々しさに俺たちは皆が見惚れていた。


「……早く座って。たいていは天使から聞いてるだろうけど、ミカエルから話すことがあるみたいだから。」


 今度は天使ではなく、女性が感情のあまり乗っていない声を出した。ミカエルとは彼女の後ろにいる天使のことだろう。その声で正気に戻った俺たちは慌てて近くにある椅子に座った。不思議と浮いている椅子はちょうどいい感じに衝撃を吸収してくれているせいか、座り心地がよかった。


「さて、座ったか。

まあ、まずは7人の依り代たち、お前達の名前を教えてもらおう。いちいち依り代って呼ぶのも面倒だからな。

 そうだな、まずはメタトロンの依り代から教えてもらおうか。」


 うおっ!いきなり俺かよ。

でも名前だけ言えばいいんだもんな。


「九条 守です。」


 椅子から立ち上がって、それだけ言うと速やかに席に着く。


「マモル、だな。次はマモルの右隣の依り代だ。」


              ★★★★★★


「さて、全員の名前を教えてもらったところで、話を進めよう。

 お前達にはこれから世界を守るために戦ってもらおうわけだが、具体的にどうすればいいかさっぱりわからないだろう?」


 ……それは確かに。世界のために戦うとしても、その手段がわからないからどうしようもないよね。裏世界からの攻撃だったっけ?どうすればいいんだろうね?

他の依り代になった人達もよくわかっていないみたいだし。


「だから、これからお前達に見せてやろう。敵と戦い方についてな。」


 ミカエルがそういいながらパチンッ!と指を鳴らすと、視界が光に包まれた。


 光が収まると、そこは文字通り何もないところだった。緑や人がいた形跡も何もなく、ただ荒野が際限なく広がっている。空には暗雲が立ち込もり、日光を遮っている。俺たちはそんな荒野を上から見下ろすように、眺めていた。周りには他の依り代の連中がシャボン玉のようなものに入って空に浮かんでいる。

 そんな荒野に突然、地面から黒いもやに包まれた何かが出てきた。形は人間に似ているが、それにしては小さく、がたいもいい。手には石のような何かを持っている。装備にしてはかなりお粗末だが、問題はその数だ。地面から出てきたそれの数は軽く100を超えている。


「▲▲▲▲▲▲▲ーー!!」


 それを統率するように、一人の個体が大声を上げる。よく見てみると、その個体だけ一回り程大きく、剣のようなものを掲げていた。そして、その大声に応えるように周りの異形の生物が手に持った石のようなものを頭上に掲げながら、同じように吼える。


「「「▲▲▲▲▲▲▲ーー!」」」


 その声はあまりに大きく、上空にいるはずの俺の肌に鳥肌が立った。アレを直接向けられたら、それだけで腰が砕けそうだ。それだけ、その叫び声には声以上に怒りや憎悪の感情が乗せられていた。


「あれが人類の敵、か……。」


 数秒後、その叫び声が収まると、その統率している個体を先頭に移動を始めた。その行動に一片の迷いもなく、ただ最初から行先を知っていたように見えた。その迷いのない行動がどことなく不気味だった。同時に、その行動を止めなかったら大変なことになると、本能で悟った。


「……見つけた。いつも通り行くよ、―――。」


「はい、行きましょう。後方支援はお任せください。」


 そんな時、暗雲が部分的に晴れ、そこから一人の少女と天使が現れた。少女はどこかの高校の制服を着ているが、その手には片手ではもちろん、両手でも持てないであろう程の大剣を持っていた。その後ろに立つ天使はその手に魔法陣を浮かべている。

 ……魔法とか使えるのかな?

 当然その二人の出現を異形の者たちが気づいていないはずもなく、200の瞳が二人に向いている。その瞳に浮かぶのは、やはり怒りや憎悪の感情だった。そして、


「▲▲▲▲▲▲▲ーーー!!」


統率している個体の叫び声を合図に全員が二人に向かって持っている石を同時に投げつけた。その投げられた石は黒いもやの尾を引きながら空に浮かぶ二人に向かって殺到していく。

 だが、


「―――。」


「御意に。――天法・シルフの羽衣――。」


天使の手に浮かんでいた魔法陣が消滅するのと同時に、二人を中心に風の膜が広がった。

 そしてその風の膜に石が次々にぶつかって、明後日の方向にはじかれていく。そして、とうとうすべての石を防ぎ切った。

 風の膜が消えると、同時に少女の姿が消え、ちょうど異形の生物たちの中心地で爆発が起こった。その爆発に周囲の異形の生物は吹き飛ばされて、地面にぶつかると同時に黒いもやを残して消えていく。とはいえ、全員を倒しきれたわけでは無いようでその爆発が起こった地点を囲うように生き残った異形の生物は立っている。もちろん統率していた個体は生き残っていた。

 そして爆発による土煙が晴れると、そこには大剣を携えた少女が立っていた。


「……ん?まだ残ってたの。じゃあ、今度はもう少し強くやろっか。」


 何か独り言を小さく呟くと、大剣を地面にたたきつけた。

すると、先ほどよりも大きな爆発が起こり、全ての異形の生物を飲み込んだ。時折、その爆発で起こった土煙に黒っぽいものが混じっているのが見える。

 その土煙が収まると、そこには少女しか立っていなかった。

いや、まだ動く影が見えるな。あれは、統率していた個体か。その個体はゆっくりと立ち上がると、剣を離れたところにいる少女に向かって振り下ろした。どう見ても当たるとは思えなかったその攻撃は、黒い斬撃となって少女に向かって飛んで行った。

 その斬撃を少女は軽く右に移動して回避すると、お返しとばかりに今度は袈裟に空を斬った。するとそれは当然のように光の斬撃となって統率個体に襲い掛かった。回避し損ねた統率個体は黒いもやをのこして消滅した。その黒いもやも風に吹かれて霧散していった。


「おつかれさまです。―――様。」


「……うん。帰るよ。」


 少女と天使はそんなことを離しながら消えていった。


 ……いやいや、なんでもありじゃねえか。

まだ天使が魔法を使うのは分かる。できそうだし、それよりもできてほしいし。でも、剣で遠距離攻撃するとかっていうのはおかしくない?剣って近接武器だぜ?剣道の試合が一瞬で終わっちまうよ。

 ……もしかして、俺たちもあんなことができないとまずいのか?そうなると、目の前が真っ暗なんだが。


 そこまで考えたところで視界が再び光で覆われた。

そして、次の瞬間にはさっきまでいた会議室に戻っていた。それと同時にミカエルが話し始める。


「見たな?あいつらが世界の敵、リクレッサーだ。リクレッサーに思考力はほとんどないが、とにかく数が多い。リクレッサー自体が邪力の塊だが、厄介なことに投げる石にも邪力が宿ってるためにその石が当たったら天使やその依り代であろうと普通にダメージを受ける。生身であれば当然致命傷になるだろうな。」


 邪力……?あの黒いもやのことか。

 でもどこかで似たようなものを見たことがあるような気がする。あのリクエッサーも、あの荒野のようなところもどこか既視感があった。そんなことはないはずなのに。


「だが、そこまで個体の耐久値は高くない。天使の力による攻撃であれば、練度にもよるが一撃で倒すことができる。先ほど見せたようなこともすぐにできるようになるだろう。だからお前達にはあそこまでとは言わないが、これから本格的な侵攻が始まる前に天使の力を使えるようになってもらうぞ。詳しくは各々の天使がよく知っているはずだ。これからしっかりと鍛えておくように。

 そして2か月後、再びここに招集する。


 ――以上だ。」


 天使の力、か。なんていうか……結構楽しそうだな!

使いこなせたら、アニメとかで見たことがある技とかも使えるようになるかもしれないし。いや、ミカエルの言っている感じだとできるはず。


 うーん、これまでの退屈な日常が変わりそうだなぁ!

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