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契約天使様の依り代  作者: きりきりきりたんぽ
3章 双子の呪縛
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再会

 はぁー、なんであんなこと言ってくるんだろうな。訳が分からん。


 未来の家から出て近くのスーパーに向かっている最中に一誠が言ってきたことを考えた。中学の時同じようなことを同級生にされたときは考えもしなかったけど、今回はさすがに考えなきゃいけないよな。状況が状況だし。

 でも、その必要はあるのか?アレの相手をするくらいだったらまだ勝てるかわからないディアボロスの相手をした方がましだ。最終的には首を落としてしまえばいいからな。それができない分一誠の方が面倒くさい。はあ……、どうするか。


 正直、俺がやってきたことを全部話すぐらいなら一誠との関係はゼロにしたほうがいいと思う。そりゃ一誠の言いたいことだってわかるけどさ、もっと聞くときの態度ってものがあるでしょ。なんでああも高圧的なのかな。それとも普通がそうなのか?普通の人は物を聞くときってあんな態度なのか?

 でもそれだとダメだ。だって俺たちは人類の滅亡に対抗できる唯一の力を持っているんだから、そこに私情を挟むべきではない。俺が一誠と仲違いをしたせいで人類が滅びました、なんて冗談にもならない。


「はー、どうしたもんかねぇ……。」


『無視してしまえばいいじゃないですか。教えたとしても教えなかったとしても、向上心がなければすぐ死んでしまいますよ。だからどうせなら無駄な体力を使わない方がいいと思いますよ。』


 そうなんだよな。長い目で見れば意味がないんだよな。でもあれが生きてたら何とかなるなんていう事態もあるかもしれない。そもそもこちらの陣営はたった7組の天使と依り代しかいないから、一人欠けるだけでもかなりの戦力ダウンになるんだよ。


 ならいっそのこと、負けを前提で考えるか。レヴィアタンの話だと確か生き残る人数はかなり少なくなるらしいけど、ゼロじゃない。ならその中に大切な人を入れられるようにするか、それとも俺が守るか。今の所守りたいと思えるのは圭介と希と春、それに武くらいか。それに必要ないかもしれないけど未来も。別に他の誰が死のうがどうでもいいもんな。……ダメだ。こんなことを考えてたら、もしもの時に行動が鈍るぞ。約束が守れなくなってしまう。


 はぁ……。もうどうすればいいのやら。


 そんな感じで悩んでいると、もうスーパーについていた。

 ……なんか食べる気分じゃないからおかゆとかにしようかな。俺、おかゆが地味に好きなんだよね。病気の時以外にもたまに作って食べてるくらい。ならお米と卵と、……だけでいっか。面倒くさいし。


「あれ、守か?」


 その時後ろから懐かしい声で名前を呼ばれた。

 振り返ると、パジャマみたいなジャージを着た圭介がそこに立っていた。


「おお、本当に守じゃんか。どうしたんだ?こんな時間にこんなところで。」


「……久しぶりだな、圭介。友達の家に遊びに行ってたんだよ。で、今朝ごはんの材料を買いに来てるんだ。」


 久しぶりに親友に会えて軽く泣きそうになる。自分の瞳に涙の膜が張るのが分かる。


「おお、どうした、守。お前が泣くなんてよっぽど大変なことがあったんだな。ちょっと待ってな。確かこのスーパーの隣に小さいけど喫茶店みたいなところがあったはずだから、そっち行こうぜ。」


 涙を拭いながらそれに頷いて圭介の後を追いかける。


 ついていくと圭介が言っていたようにスーパーに隣接するように小さな喫茶店があった。そこに入ると、圭介が店長と思われるお姉さんに「いつものを2つお願い。」と言って手近なテーブル席に腰を掛ける。俺はその向かいに座る。


「で、何があったのか俺に話してみそ。」


 圭介が頼んだコーヒーがテーブルに置かれると、圭介が俺に聞いてきた。


「実はさ……」


 俺はコーヒーをチビチビ飲みながらゆっくり話した。

 名前は出さなかったけど、中学時代の同級生みたいな質の悪いやつがいて、そんなやつとさっさと離れてしまいたいけどそれができそうにないことを。そしてもうどうすればいいのかわからなくなっしまった事を。


「はぁー、なるほどな。お前ができない、っていうからには絶対にそれはできないんだもんな。それに中学時代の同級生っていったら、あの輩どものことだろ?お前のことを天才だとか言って、いろんなことを全部押し付けて、いじめていたあの勘違い野郎どもと同じくらいか。

 うーん、それは大変だな。」


 ……そっか、圭介でもお手上げか。ならやっぱり考え方を変えるか。


「でもさ、俺だったら多分何とかなると思うんだ。だって、考えてみろよ?そいつ以外のことについて何も言わないってことは少しは好意的にとらえているんだろ?ならそいつらを仲間につければいい。なんの仲間かは分からないが、お前が気づいていないだけでお前の味方は絶対いるからな。」


 ……そうだな。確かに希のことは信頼できるし、武と春のことだって初めてできた後輩だ。できれば信じたい。……でも、俺には分からない。信頼しない理由はあっても、信頼できる理由は怖いくらいにないんだ。あの時だって信じてた同級生に裏切られた。


「大丈夫だって。俺がいるからな。俺だけはこれからもお前の親友であり続ける。それにお前の顔を見た感じ、信頼できそうな人が一人はいるんだろう?なら信じてみろ。な?」


「……でも、怖いんだ。あの時に戻るのが。また、何も、自分のことも信じられなくなりそうなんだ。」


「……俺は中三の時にお前がいたから今同じ高校に通えている。お前を目標にすることで頑張れた。だから、今度はお前が俺を目標にしろ。なに、失敗なんてしないさ。お前にできたことだから俺にもできた。なら俺にできたことをお前もできるはずだろう?大丈夫だ。」


 ……そうだな。確かに圭介にだって勉強ができるようになったじゃないか。なのに俺がいつまでも圭介のできることができないままじゃダメだ。


「そうだな。お前にできて俺にできないなんて情けないもんな。」


「そうだ、その意気だ。ようやく元のお前に戻ったな。」


 俺はにやっと笑ってかなり失礼なことを言ったのに、圭介は安心したようにコーヒーカップを傾けた。


「あ、そうだ。最近携帯買ったんだよ。連絡先教えてくれないか?」


「お!?ようやく買ったのか!まったくお前が携帯を持ってなかったから連絡手段がほとんどなくて大変だったんだぞ。ほれ、これを登録しといてくれ。このバーコードを読み込めば自動で入るはずだから。」


「お、おう。」


 慣れない操作でえっちらおっちらカメラを起動させて差し出されたバーコードを読み込んだ。すると携帯の連絡先一覧に依り代関連以外では初めての連絡先が入っていた。

 こ、これが連絡先交換か。初めてしたぞ。


「じゃあ、そろそろ行くか。確か朝ごはんの材料を買いに来てたんだろ?なら急いだほうがいいぞ。」


 圭介に言われて時計を見ると、その針はもう8時半を指していた。家から出た時はまだ7時半とかだった気がするんだけど、久しぶりに再会したから時間を忘れてたな。


「そうだな。……うん、俺も決心できた。ありがとうな、圭介。」


 本当に圭介に会えてよかった。じゃないと何も解決策なしでまた一誠と話すことになってた。


「おう、気にするな。俺はお前と親友だぞ?悩みくらい聞くさ。これまで何回も助けてもらってきたんだからな。」


「……そんなに助けたっけか?」


「おう。忘れちまってんならしょうがないな。ま、また今度話そうや。俺もそろそろ帰らねえと。じゃあな。」


 そう言うと、圭介はスーパーとは反対の方向に歩き出した。その背に向けて小さく手を振ってから俺は朝食用の材料を買うためにスーパーに戻った。


 結局、最初決めたおかゆが食べたくなってきてしまったからその材料だけを買って未来の家に帰った。圭介にもらった勇気と共に。


 扉を開けると、未来が部屋から飛び出してきて


「朝ごはん?」


と聞いてきた。

 ……なんか気が抜けちゃうな。一誠と喧嘩する覚悟で帰ってきたっていうのに。まったく。


「そう。今日はおかゆにしてみようと思ってな。これから作るから少し待っていてくれ。」


「分かった。」


 スタスタとリビングに向かって行く未来の後ろ姿を見てから、俺は台所に向かった。大きい鍋を出してレンチンしたお米を入れる。そこに水、醤油、塩を適量入れて小さく火を入れる。ちょうどよく煮詰まってきたところに溶いた卵を流し込んで、固まらないように少しかき混ぜる。

 するとあっという間に完成した。まあ、病気の時でも作れるくらいだからな。これくらい簡単じゃないとだめか。


 その大鍋と鍋敷きを持って台所からリビングに向かう。リビングに行くと、もう全員が起きて待っていた。そして当然のようにメタトロンが俺の中から出てきてその中に混じる。


「今日はおかゆですか?」

「匂いがすごい。」

「お腹が空いてきたっすよ。」


 みんなが口々に好きなことを言いながら取り皿を取ってきてお玉で取っていく。そしてのこりが一誠と愛梨の二人になった時、


「で、話してくれるのかい?話してくれないならそれはそれでいいけど。」


とまた神経を逆なでするようなことを行ってきた。しかもこれまた不快な笑みを浮かべながら。あふれ出る嫌悪感を押し殺して口を開く。


「話してやってもいい。だが、態度がおかしいだろう。俺は教える側、お前は教えてもらう側だ。頭の一つくらい下げたらどうなんだ?」


「いやいや、何を言っているんだい?僕は見逃す側、守君は見逃してもらう側なんだよ?だから守君が頭を下げて、見逃してくださいっていうべきだよ。なにせ僕が言えばウソでも真実にできるんだから。」


「あっそ。だったら勝手に野垂れ死んでいればいい。せいぜい自分で考えろ。まあ今のお前じゃ中位魔性(ディアボロス)はおろか下位魔性(デーモン)にも勝てないだろうがな。

 あ、この後少し裏世界行くぞ。確か前に斬撃の飛ばし方を知りたいとか言ってたよな。何となくつかめてきたから少しなら教えられる。」


 目の前にいる一誠から視線を外して、おかゆを食べようとしている希達に声をかけた。


「え?いいんですか?」


「別にいいよ。隠すようなことでもないからな。」


 俺も自分の分をよそってテーブルの方に移動しながら武の言葉に返す。別に一誠たち以外なら別に教えてあげてもいいと思ってたし。さっきのであいつらに教えてやる義理もなくなったし、教えなくてもいい理由もできた。つまりはこういうことだったんだよな、圭介。


「ねえ一誠、いいの?」


「別にいいよ。僕達二人で勝てない相手なんていないから、これ以上強くなる必要もない。弱みを見せる必要なんてないさ。

 今日の15時から打ち合わせがあるみたいだからよろしくね。守君に希さん。」


「……。」「……分かりました。」


 なんで普通に話しかけられるのやら。メンタル鉄か何かか?どうでもいいけど今回だけだ。約束しちまったからな……。だけど、これ以上こいつのために協力してやるつもりはないから。


 そうして朝ごはんを食べ終わった後、俺、希、武、春、未来の5人で裏世界に向かった。未来もやる気があるなら教えてあげる、って言ってついてきてくれた。俺も教えてもらおうかな。

次話、4日までに投稿します。

よろしくお願いします。

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