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契約天使様の依り代  作者: きりきりきりたんぽ
3章 双子の呪縛
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「さて、戻ってきたね。じゃあまず最初の目的だったレヴィアタンの強さを測ろうか。」


 すっかり不気味さが抜けて様子が元に戻った一誠がそう言う。


「確か、レヴィアタンの依り代が守君と同じくらいの強さだったよね。そうなると僕達だと少し厳しいかもしれないな。守君が一番余裕があったわけだし。」


「そうね。あたしと一誠が一緒にいても厳しいかも。多分あたしの攻撃は当たらないでしょ。」


 一誠に続いて愛梨もそれに賛成する。

 まあ詳しく言えば、戦った時より今の方が当然だけど強いから誤差はあるけどな。そう、誤差だ。結構大きいだろうけど誤差だ。


「となると、その依り代と戦うのは守先輩ってことになるんですか?俺と春でも無理ですよ。」


 武が珍しく話に入ってくる。


「そう、なるかもね。でもそれはミカエルと未来さんの二人がいなかった時のことだし、守君に任せっきりにするというわけでもないよ。あくまで目的は時間稼ぎなんだから。

 もっとも、さっきの守君の話だと時間稼ぎ目的だと詰みそうだけどね。」


 最後に自棄っぽく一誠が付け加える。

 そうだそうだ。いくら時間稼ぎができてもあんな結界を張られたら意味ないんだよ。未来ですらすぐには割れなかったんだから。それにそもそも敵は依り代だけじゃない。おそらくレヴィアタンはあの依り代よりもはるかに強かった。


「となると絶望的、っすか……?」


「そうだね。絶望的に見える。おそらく僕達は個人ではもちろん、タッグでも捕まったら厳しいだろうね。それに守君の話だと現実で依り代に襲われたってことだから、余計に。天使を通じて助けを求められるとはいえ、最初の数分は一人で稼がないといけない。だから、個人の力を上げるのは今まで以上に急務になる。」


 春のつぶやきに一誠が長文で返す。


「でもそれ以上にみんなのできることをもっと詳しく知りたい。さっきの戦いで何となくは分かると思うけど、その説明をしてほしい。」


 ……なーるほど。目的はそれか。確かに俺たちは一誠と愛梨の能力は全く知らなかったけど、武と春の能力は何となく知っている。それが嫌なんだろうな。みんなの能力を把握しておきたいってことだ。俺はタッグである希の能力を知っているからそれでいいと思ってるけど。

 ……まあ、少しだけならいいか。出す情報も制限しておきたいし。


「じゃあまずは俺から。天装は刀で、神性(ギフト)は契約。対価を支払ってその分の効果を得られるって感じだ。」

「その得られる効果って制限とかはあるのかな?」

「ない、けどその分代償も大きくなるからそこまで使ってないですね。普段は思考と行動を加速させるだけです。」

「それでどれくらい速くなるの?」

「だいたい今の1.5倍くらいですね。」

「その持続時間ってどれくらいですか?」

「最大で一分くらい。でも途中で体が壊れ始めるから、一回十秒くらい。」


 される質問に適当に答えていく。特に隠すことではなかったから答えたけど、とうとう答えられない質問をされた。


「……さっき斬撃を飛ばしているように見えたっすけど、あれってどうやってるんですか?」


 やはりそれが来たか。知りたいのは分かるけど、答えたくはないかな。


「……気が付いたらできるようになってた、かな。だからどうやったかは分からない。」


「守君だけ自壊がそこまで進んでいなかったみたいだけど、何かしたのかい?」


 それも答えたくないな。


「それも同じく。たくさん戦えばいいと思いますよ。多分筋肉の超回復みたいな感じじゃないですかね。」


 間違ってはいないけど、正しくもないことを言ってごまかす。実際、メタトロンの口ぶりから何か違う要素が関係ありそうだったし。

 そこでこれ以上質問しても意味がなさそうだと思ったのか、俺への質問は止んだ。

 それから皆が自分の能力の説明をしていった。


 まず、希。

天装や弓、狙撃銃の二種類。神性は正義。能力の内容は敵の弱体化。範囲と強度はいくつか種類があり。といった感じ。あと武器の使用上、視力が強化されているとも。確か一つが瞳で見える範囲の敵を弱体化させるやつで、もう一つがレヴィアタンに突き刺していた杖でおそらく刺した相手だけを弱体化させる。じゃないと杖を突きさしたりしないだろうからね。

 最近だと飛ばす矢に矢じりをつけて威力を上げているみたい。それにホーミング機能もありそうだったけどそれについては言ってなかったな。


 次に、武。

天装は手に付けるナックルのようなもの。神性は節制。能力の内容はカウンター。といっても食らった攻撃を跳ね返すレヴィアタンのものとは違って、あくまで間接的に。自身か仲間が食らった攻撃分のダメージを蓄積させて、時間制限付きで身体能力に上乗せさせる。だから戦いの時最初は後ろで見てるだけだったんだな。騎士が食らった分のダメージを身体能力に上乗せさせるために。

 今の所結構いいコンビなんじゃないかな。知らんけど。


 そして春。

天装は天秤。神性は裁定。能力の内容は天秤に浮かんだ重りを騎士として召喚すること。なんでも敵が強ければ強いほどたくさんの重りが出てくるんだそうで。でもそのコントロールは自動じゃなく、しっかり春がそれぞれに指令を出さなくちゃいけないから使いこなせないらしい。まあ同時に違うことをしろ、って言われたらできないよな。できたらマルチタスクどころの話じゃないし。

 ……さっきの判断は間違ってなさそう。この二人なら安定して戦えるんじゃないかな。


 そしてそして、一誠の番。

天装は大盾。神性は誠実。能力の内容は攻撃を盾に集めること?絶対違うだろ。まあいいや。


 最後は愛梨の番。

天装は杖。神性は慈愛。能力の内容は天法を放てること?……これも嘘だな。まったく。

 まあ双子らしく、息はぴったりだからいいんじゃないですか?


 結局言い出しっぺの二人が武器のことしか言わなかった。あとでメタトロンとかに聞いてみようかな。聞けば教えてくれる気がするし。その時に次の段階にいついけるかも聞いておこう。

 とちょうど六人の話が終わった時、部屋の魔法陣が光った。


「……?みんな揃って何してるの?」


 魔法陣の上には未来とルシファーが立っていた。でも、ルシファーは他の天使がいないとみると、おっとお邪魔かなとでも言いたげに未来の中に帰っていく。


「いや、皆で情報交換をしていたんだよ。自分の神性のこととか、天装のこととか。紙にまとめてあるけど未来さんも見るかい?」


「……いや、いい。それよりももっと修行した方がいい。今のあなたたちじゃ、レヴィアタンはもちろん、中位魔性(ディアボロス)にも勝てなさそうだから。」


 おっと正論来た。俺も下位魔性(デーモン)には勝てそうだけど、ディアボロスには勝てる自信がないからな。それで俺よりも弱いって話の他の皆はもっと無理だろうな。


「……うん。確かにそうだ。じゃあ聞きたいんだけど、どうやったら強くなれるの?僕達にはそれが皆目見当がつかない。」


「……たくさん戦って。そうすれば強くなる。今大変だと思ってるだろうけど、それはしょうがない。何かしようとしたときは最初は大抵行き詰るもの。」


「つまりたくさん経験を積めばいいのかな?そしてそれ以外にはないと?」


「ない。あったら私が使ってる。……少し休む。じゃあね。」


 しつこく質問を繰り返す一誠を鬱陶しく感じたのか、未来はそそくさと自室に入っていってしまった。第三者の俺ですら少しイラっとしてたくらいだ。それくらい自分で考えろよって。


「……聞き出せなかったか。まあ経験を積めばいいということが分かったんだからよしとするか。」


 そう独り言をつぶやくように一誠が小さく言った。


 ……こいつ、何様?少しは自分で考えるなり、天使に聞くなりしろよ。それにもし聞くんだとしてもそんな上からの態度とか許されないだろ。

 一誠の姿が俺の昔の同級生と重なる。自分よりも優秀な人でも少数派だからと見下すような態度をとってきたあのクズどもと。


「話は終わったよな。修練場行ってくる。」


 今この場にいたら余計嫌な気分になりそうだったから、足早に魔法陣に向かう。そしてすぐに魔法陣を起動させて


「ちょっとま……。」


背後でそんな声が聞こえたけど無視した。


 ……はあ、こんなことはないと思ってたんだけどな。全国トップクラスの高校でも所詮はその程度か。


 寝ている老人を尻目に以前と同じブースに向かう。確か今日が7月23日で、8月1日の一週間前が7月25日だから……二週間はここにいれそうだな。本当はもっとこもっていたいけど約束は約束だ。モデルの仕事の手伝いだけはしてやる。それ以降は知らん。


「おや、随分機嫌が悪いですね、守。何かあったんですか?」


 ブースに入ると九三郎から声をかけられた。


「実はですね、守よりも強い依り代の子がいるですけど、その人が努力のどの字も知らないような人に粘着されてたんですよ。しかも近道まで教えろって言ってましたからね。」


 答えようとしたところでいつの間にか出てきていたメタトロンに先を取られた。


「あー、なるほど。いつの時代にもそんな輩はいる物なんですね。」


 九三郎にも苦い記憶があるのか、苦笑気味に返す。


「そのような手合いには適当に流すのが一番です。そうすれば今後も絡まれなくなりますからね。」


 なるほどな。そうすればよかったのか。そうすれば……。

おっとせっかく修練場に来たんだ。ここでしかできないことをしよう。


「少し戦闘人形を動かせいてくれないか?どれだけ加速ができるか試したいんだ。」


「いいですよ。速さはどうします?」


「確か思考加速の練習の時の速度と一緒でお願い。」


「分かりましたー。……動きますよ。」


 九三郎が戦闘人形に触ると、戦闘人形が動き始めた。そして俺を視界に収めると、こちらに向かって突進してきた。


「メタトロン!加速だ!」


「了解です!」


 よーし、行くぞー!


 今回は戦闘人形を壊すのは目的じゃないからひたすらよけまくる。加速をどちらも発動させて、攻撃をギリギリでかわし、反撃の動きを取る。よし、刀を持ってたら確実に攻撃が入っていたな。

 一回距離を取ろう。そして、また動きを見極めて……。


 10分後。


「ゴホッ!」


 俺の回避劇は時間切れで幕を閉じた。吐血して意識が乱されて加速が止まった。

 その様子を見ていた九三郎が


「ストップ!」


と戦闘人形の頭を叩いた。すると不思議と戦闘人形は動きを止めた。……今度は頭を叩いてみるか。


「お疲れ様でした。随分長い時間加速を使えるようになったんですね。素晴らしいです!」


 いやいや、あんたは加速なしでも俺以上の化け物でしょうが。手も足も出なかったの忘れてないよ?


「何か変化でもあったんですか?」


「実はデザイアの体内濃度を上げたんだ。そうしたら活動時間が長くなったよ。」


「ほう。もう上げられたんですか。随分身を削ってるんですね。」


「え?」


「だって確か、体内濃度を上げるにはそれなりに体が依り代のそれに近づいていないとダメだし、そのためにはたくさん怪我をするなり血を流すなりをする必要があるんですが。」


 なにそれ?初耳なんだが?

次話26日投稿予定です。

よろしくお願いします。

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