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契約天使様の依り代  作者: きりきりきりたんぽ
3章 双子の呪縛
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小野寺兄妹からの提案

 魔法陣の上に立っている4人は目に見えて疲労がたまっている。目の下ではクマが踊っていて、若干体が揺れているように見える。


「お疲れ様。調子はどうだ?」


 ルシファーがソファーでくつろぎながら鷹揚に話しかける。


「まあそれなりですよ。でもそろそろ二人ペアとかでの戦闘も訓練しておきたいですね。修練場では二人ペアの練習はできませんからね。」


 一誠が代表して答える。そうか、二人ペアか。……なんか面倒くさいな。結局のところ一人が一番楽だからな。それか遠距離攻撃の人と組んで役割分担くらいがベストじゃないか?


「そうか、いいんじゃないか?だとしたら裏世界が一番いいだろうな。適当にリクレッサーも湧くし、向こうにいる間は時間が止まっている。効率も高いだろう。」


 ルシファーはメタトロンの頭をなでながら助言のようなものを返す。……お前ら仲いいんだな。前も仲良さげだったけど、天使であることを除くとなんか姉妹みたいに見えるぞ。


「ならこれからでも……。」


「だが休息も重要だ。この二人も今日はもう依り代としての活動を禁止しているからな。お前達も今日は休むといい。ここで何かを話すのでもいいし、二階に行って仮眠をとるでもいい。」


 今すぐにでも裏世界に移動しそうになっていた一誠を言葉を遮る形でルシファーが押しとどめる。……あー、嫌そう。特に武。俺も同じだから気持ちは分かる。でも一誠はそうでもなさそう。


「確かに休息も重要ですね。今日は僕達も休むことにします。」


 ルシファーの言葉に理解を示して、俺たちの座っているソファーの端に座った。そして


「二人とは途中から別行動だったけど、今日はどうだった?確か文化祭の出し物についての話し合いをするんだったよね。」


と聞いてきた。

 これは、話さないとまずいかな。さすがに気づいてるよな。どうして俺たちが今日の活動をもう禁止されているのかを考えれば、何か異常事態があったことは一目瞭然の訳だし。でも最初は気づいていないふりをしてもいいか。


「そうですね。大部分は決まってあとは両校の教師陣との話し合いで細かい部分の調整が必要になるかもしれませんね。」


「そうなんだ。もうこの時期に決まってるのはいいね。僕達の代はそこまですぐには決まっていなかったみたいでね、全部がギリギリで大変だったみたいだよ。」


「そうなんですか。まあ、確かに相手が知り合いじゃないとそれなりにハードルは高いでしょうね。俺たちは運がよかったんでしょう。」


 逃げきれたか?あとはこの話を膨らませれば逃げ切れるな。話を膨らませるべく、口を開こうとしたその時、


「あはは、守ちゃんは分かってるでしょ。聞いてるのはそれじゃなくて、どうして今日はもう活動禁止になったかの方ことだって。」


愛梨が会話に入ってきた。


「それとも、あたしたちに話せない事情でもあるの?」


 ……はあ、面倒くさいことになったな。話していいことと話してはいけないことがあるから余計に。ミカエルの話は絶対ダメ。それにあの予言の巫女とかいう人の話とか戦い方を教えてもらった事はどっちかわからない。加えて言うとできれば話したくない。正直に言えば希以外そこまで信頼できない。

 となると、レヴィアタンと戦った話だけでいいか。


「いや、ちょっと大変な話なのでね。話すタイミングを考えていただけですよ。……まあ、座ってくださいよ。武も春も。詰めれば皆ソファーに座れるでしょ。」


 Ⅼ字型のソファーにメタトロンとルシファーを含めて全員が座ったところで話始める。ちなみにルシファー、メタトロン、俺、希、一誠、愛梨、春、武の順番だ。


「俺たちは話し合いをするためにどこかの喫茶店に行こうと思ってこの家を出た。ここで話してもよかったけど、人の家でその主人に関係ない話をするのも失礼だからな。で、渋谷駅周辺を散策していたらある人間に出会った。その人物はフードを深くかぶり、天使の名前を知っているか聞いてきた。それも俺と希の中にいる天使の名前を出してな。

 ……明らかに不審者でしょう?当然俺たちは警戒していたが、次の瞬間俺たちは裏世界にいた。もう想像がつくかもしれないが、移動した先には悪魔がいた。ミカエルに事前に知らされいた通りの特徴を持った悪魔が。」


 希以外の全員が息をのむ気配がした。まあそりゃ、びっくりするよな。俺がその話をされても驚くだろう。


「話を続けるぞ。その悪魔は自分の名を嫉妬の大悪魔レヴィアタンと名乗った。そして最初会った不審者はその悪魔の依り代だった。となると話は簡単だ。俺たちとその悪魔レヴィアタンは戦うことになった。当初の作戦通り二人でミカエルか未来が来るまでの時間稼ぎをするために戦った。

 ……その結果俺たちが死ぬ前に二人が間に合ったが、レヴィアタンとその依り代は逃がしてしまった。その戦闘での疲労がたまっているから今日はこれ以上活動するなって言われたから、それから文化祭の話し合いをしていた。それが終わったところに皆が帰ってきた。……こんな感じでいいか?」


「いやいや、ダメだけど?」


 満足げに話を終えた俺に愛梨が間髪入れずツッコんでくる。


「もっと具体的に。もっとあるじゃん、レヴィアタン?の能力とか、武器とか。どんな風に戦ったかとか。」


「そうですね。私も途中で分断されてからは分からないので話してほしいです。」


「え?分断されたんですか?」


 武も思わず会話に入ってくる。まあ分断されたらせっかくチーム組んでても意味なくなるからな。食いついてくるのもわかる。……はあ、話すか。皆俺の方を見ているわけだし。


「……レヴィアタンが作った結界で俺と希が分断された。で、その結界はその時のレヴィアタンが作れる結界の中でも一番強いものらしかった。当然その結界を内側から壊そうと思ってもできそうにもなかった。」


「外側からもです。加えて言うと、絶えずその結界からはスパークのようなものが放たれていて近づけませんでした。」


「そうなると、当初の目標であった時間稼ぎの難易度は青天井だ。何せ俺一人でおかしいほどに強いレヴィアタンとその依り代の相手をしなければならなかったんだからな。その二対一の状態になっていたら俺は生きていなかっただろう。

 ……まあ、生きてるっていうことはそうならなかったんだがな。勝ちを確信したレヴィアタンが依り代一人に戦わせたんだ。だから俺はレヴィアタンの依り代との闘いを助けが来るまでひたすら長引かせた。ちなみに依り代の武器は鞭でその先に刃物のようなものがついていた。そしてレヴィアタンの罪性(タレント)嫉妬は食らった攻撃を相手にそのまま跳ね返すというものだ。……いつの間にか治っているが右腕を斬り落とされていた。だからむやみな攻撃は危険だな。」


 自分の説明の中で右腕が治っていることに気づいた。……本当にいつ治ったのかわからないな。メタトロンにデザイアの身体濃度を上げてもらった時か?


「さて、これで俺ができる説明は終わった。答えられるかわからないが、何か質問があれば聞く。」


 そう聞いたもののできれば質問なんてしないでほしい。そんな願いむなしく一誠が口を開いた。ちくしょう。


「その依り代は普通の人間だったの?」


 ……しかも一番聞かれたくないことを。


「そうだな。普通の人間だった。それこそ人殺しなんていう犯罪を犯しそうにない人だった。」


「じゃあ、依り代の人は被害者、ともとれるのかな?」


「……いや、それはやめた方がいい。確かに被害者かもしれないが、助けられるほど俺たちはまだ強くない。……そっか、そこをまだ話してなかった。依り代は悪魔に魔法で操られてるようだ。おそらくその依り代が抱える嫉妬心を力に変えるという能力もあったと思う。」


「……強さはどれくらいだった?」


「それなりに鍛えてもらっていたようだったが、それで俺が行動加速と思考加速を使ったのと同じくらいだった。ただ時間を追うごとにレヴィアタン本人と一緒に強くなるだろうから次会うことがあればもっと強くなっているだろう。」


 俺の戦いを実際に見たことがある春と武、希は何となくの想像ができただろうけど、まだ一誠と愛梨は戦闘時に居合わせたことがないからそこまで想像が間に合わないようだ。


「といっても、僕達はまだ守君の戦いを見たことがないんだよね。だから具体的にどれくらいかが分からない。」


「そうだな……。じゃあ明日にでも一緒に裏世界に行ってみましょうか。そうすれば何となくやつの強さが分かると思います。」


 やらなくちゃいけないとは思ってたけど、こうなったら明日にでもやるべきだろう。


「いいじゃん、武と春とは行ったことあるけど、まだ希と守ちゃんとは行ったことがないし。」


「守君だけじゃなく、皆の戦い方を把握するために皆で行こうか。そうすれば、即興でもしもの時に戦い方も考えやすいし。いいかい、武君、春さん。」


「お、おう。……じゃなくて、はい。」「も、もちろんっす。」


 うーん、なんでか春と武は一誠と愛梨がいると影が薄くなるな。どうしてかね?なんか4人で行動しているときに何かあったのかな?

 まあいっか、それなりに話さずに済んだこともあるし。依り代っていうのが現代社会の被害者だとかっていうこととか、そう遠くない内に4人の強大な敵が現れるとか。……後者はいつかちゃんと話さないとな。ミカエルだけにでも。


「じゃあ、明日はそういうことで。……話変わるんだけどさ、4人はモデルとかに興味ない?」


 ……え?愛梨のコンビニ行こうよー、的なノリで言われた言葉に思考が少し持っていかれた。モデルに興味?答えは決まっている。ないけど?


「実は僕達のモデル事務所にこんな企画が発案されてね。」


 そう言って一誠がカバンから一枚のチラシのようなものを取り出した。そこにはでかでかと


――インテリ美少年、美少女特集!!~進学校に通う宝石たち~


という見出しがあった。……バカそう。激しく。


「というわけで、今回は高校生で頭がいい美人、美男子を探そうっていう企画なんだけど、二人は興味ない?」


「「ないです。」」


 俺も希も即答だった。やっても得がないもんね。それに希は分からないけど、俺は美男子ではないし。


「まあまあ、話は聞いてよ。実はこれ推薦した人にもされた人にも賞金が出るんだよ。今回はなんと5万円も。win-winだと思わないかい?」


「別にお金欲しくないので。」「そもそも美男子ではないので。」


「えー、お金はあった方がいいし、守ちゃんは十分美男子だよ?中学の時とかモテなかった?」


「「…………そうでもないですよ。」」


 明らかに俺と希の声のトーンが下がった。中学の時モテなかったか?そりゃ、モテたよ。いやになるくらい。……中学の途中から記憶がないから何とも言えないけど。


「……あー、地雷だった感じかー。やっぱり一誠じゃないとだめね。あたしには向いてないよ。」


 愛梨が俺たちの不自然に沈んだ気配を察したのか撤退した。


「あー。まあなんていうか、僕達このモデル業で生計立ててさ。両親の助けなしで生きていかなくちゃいけなくてね。先輩を助けると思って今回だけ協力してくれないかな?」


 ……まあ、それならまだいいかな。両親の助けなしで生きていかなくちゃいけないってなんか親近感湧くし。


「……大変ですね。俺も一緒なので分かります。……分かりました。もし大丈夫なら、今回だけですが引き受けます。」


「そうですね。そんな理由があったとは。私も引き受けます。といっても私は進学校に通ているかもしれませんが、美少女かどうかは分かりませんよ。」


「それならだいじょーぶ。あたしがコーディネートしてあげる。顔立ちも整ってるし、あとは服装と少しの化粧で大丈夫だよ!」


 うーわ、聞きたくなかった情報。地がダメだったらそのまま断れたのに。


「また近いうちに連絡が来ると思うから、その時に詳細を教えるね。」


 愛梨の笑顔が若干怖かった。……若干じゃないな。普通に怖い。なんか逃げられなさそうで。

次話15日投稿予定です。お願いします

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