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契約天使様の依り代  作者: きりきりきりたんぽ
2章 歪んだ自信
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緊急招集

 朝ごはんを食べようとしたその瞬間、俺たちはそろってミカエルに呼び出された。何とも微妙な雰囲気が流れる俺たちに対してミカエルが焦ったように語り掛けてくる。……あ、武起きてんじゃん。今気づいたわ。


「突然呼び出してすまない。ただ、すぐに共有しておかねばならないことがいくつかあるからそのことについて話させてくれ。」


 ミカエルの様子からただ事じゃないと肌で感じた俺たちは急いで席に座る。……一人を除いて。


「未来、話を進めて構わないか?」


「……うん。ごはん。」


 とぼとぼと席に座る未来。そんなご飯楽しみだったのか。なんか嬉しいけど申し訳なくなってくるな。


「では早速話させてもらう。

 内容は敵の存在についてだ。

 天使から聞いているものもいると思うが、リクレッサーには階級がある。まず大量にいるが、単体だと脅威にならない通常個体。そしてその上位種たちである下位魔性(デーモン)中位魔性(ディアボロス)上位魔性(デヴィル)最上位魔性(サタン)の四種だ。デーモンやディアボロスとは遭遇したことがあるだろうから説明は割愛する。それ以外のデヴィルとサタンについて説明させてもらうぞ。」


 そこで一旦話を切った。若干の緊張をその顔に浮かべながらミカエルは言葉をその口から出した。


「デヴィルの特徴だが、まずその数は21体しかいない。きっかり21体だ。それより少なくなることはあれども、増えることはない。ただ、厄介なことにやつらは私達と同じ言語を話す。それだけ知能が高いということだ。そして当然だが、力、速度、技術、全てにおいて高い能力を持つ。」


 なるほど。今度は喋ってくるのか。だとしたら俺たちと同じことが考えられると見て間違いないだろう。ん?でもまだ終わってないみたいだ。


「それ以外に、奴らは邪性(マリス)と呼ばれる特殊能力も持っているそうだ。その個体ごとに違う特殊能力をな。」


 ……それって、天使の神性(ギフト)に似てないか?


「そしてその外見的特徴は焦げたような色の一対の翼に、その頭の上には小さい光輪があるそうだ。」


「「「……。」」」


 デヴィルっていう、上から二番目の敵が天使達よりも少し格が落ちたようなものだとしたら、サタンはもしかしなくても……。


「そして、最後にサタンだな。やつらは7体しかいない。だが、当然だがデヴィル以上に危険だ。何せやつらは我々天使と同じように()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだから。」


 ……え?じゃあ、戦場が現実世界になる可能性もあるってこと?


「そして奴らもまた、特殊能力を持っている。罪性(タレント)と呼ばれる強力な能力だ。その一つ一つが我ら天使のギフトと同等の力を持つといっても過言ではない。外見的特徴は焦げたような色の二対の翼に、その頭の上には私達天使と同じくらいの大きさだが黒いもやがかかっている光輪があるそうだ。……正直互いに全力だと相性次第では一対一でも負けるだろう。」


「「「……。」」」


「そして、最悪なことに、……そのサタンの内一体が出てきたようなのだ。」


 部屋の空気が一気に重くなった。

 ……ちょっと待て。絶望するのはまだ早い。


「質問いいですか?」


「……ああ、構わない。守。」


「それはミカエル、あなたたちがそのサタンの姿を見たということなんですか?」


「いや、違う。だが、その証拠ならあるのだ。

 遠い昔からデヴィルとサタンは封印されていたようなんだ。それも聖域の奥深くに。そしてその封印の状態を確認できる石碑が深淵のある部屋の中にあった。その石碑には七つの宝石が埋まっていて、その周囲に魔法陣のようなものが浮かんでいたんだ。きっとそれが封印されているということを示していたんだろう。

 ……だが、私達の目の前で一つの魔法陣が消滅したんだ。分かるだろう?7つしかなかったんだ。それら一つ一つがサタンのことを指しているだろうことは少し考えれば分かることだった。」


「……そうですか。」


 ミカエルの疲れ切った様子からそれを信じる以外の選択肢がないように思えた。実際こんなことで嘘をつく必要もないもんな。でも、だとしたら俺たちの敗北は必至なんじゃないか?ディアボロスにすら勝てないのに、最上位のサタンが出てきたらそれこそ勝ち目がない。蟻が象に勝てるわけがないのと同じように。


「だが、まだ絶望するのは早い。言っただろう、やつらはつい最近まで封印されていたんだ。まだ力も取り戻していないし、そもそも依り代もそう簡単には見つからないだろう。そして見つけた後からその依り代が今の私達と同じくらい強くなるのにもそれなりに時間がかかる。

 要はまだ時間はあるのだ。だから頼む。少しでもいいから強くなってくれ。」


「……ミカエルは戦わないんですか?」


「ん?いや、戦うが?というよりかは私達が戦うつもりだが?」


 あれ?今の話し方だとミカエルたちは戦わないけど、その代わりに俺たちに戦えって言ってるのかと思ッとんだけど。


「ああ、やけに不安げな表情をしていると思ったらそういうことか。確かにさっきの言い回しだと、お前達にだけ戦わせるようにも聞こえるな。違うぞ?ただ、私達が到着するまで生き残れるくらいに強くなってほしいっていうだけだ。

 私達が戦えば勝てるからな。早ければ早いほど勝率は上がるが、まあ負けはしないだろう。」


 なんだよ、びっくりしたな。そういうことね。いきなり俺たちにサタンとかっていう想像さえできない化け物を倒せるまで強くなれって言われたのかと思った。


「要はこれから狂ったほど強い敵がお前達の前に現れるかもしれんが、絶対に諦めないでくれ。天使経由で情報を受け取り次第、私達がすぐに駆け付ける。だから、絶対に生き残ってくれ。」


 俺たち全員の目を順々にまっすぐ見ながら言ってきた。その言葉はあまりに真摯で、心から心配しているのが分かった。まあ、言われなくてもやるつもりではあったけどな。


「今日の話はこれで以上だ。何か質問したいことあったら私の所に来てくれ。なければ解散してもらって構わない。」


 そのミカエルの言葉が終わるか終わらないかの所で未来が帰っていった。……そんなお腹空いてたのね。またなんか気が向いたら作ってあげようか。結局メタトロンにも毎日のように作ってるわけだし。

 とそんなことを言ってる場合じゃなくて、


「そのサタンとかに遭遇したら逃げ切ることってできるんですか?」


「不可能だ。だから逃げようとしない方がいいだろう。ただ適当に時間稼ぎでもしててくれ。10秒くらいあれば私達はたどり着くから。」


 ふむ。だったら話しかけるか。情報収集と時間稼ぎができるからそれが一番いいよな。そんな度胸があったらだけど。


「……もう質問はなさそうだな。では、私達は例のサタンを探しに行ってくる。お前達も用心するように。」


 俺以外に質問する人はいなかったのか、ミカエルはそう言うと依り代の少女と共に姿を消した。多分裏世界に行ったのだろう。

 ま、じゃあ帰りますか。朝ごはんも食べたいし。皆も多分帰りたいでしょ。ちらっと皆の顔を見ると、ゆっくり頷いてきた。……喋ればいいじゃんか。メタトロンに心の中で話しかけて、会議室を後にした。


 さっきの部屋に戻ってきた。目の前には湯気の立ったご飯に味噌汁、焼き立ての鮭があった。


「さてさて、ミカエルの話もありましたけど、とりあえずご飯食べましょうか。」


 能天気なメタトロンの言葉に皆苦笑気味。でもお腹が空いてるのは確かだから誰もそれを否定しなかった。


「「「いただきます!」」」


 うーん、やっぱりレンチンで炊いたご飯はそこまでおいしくないな。やっぱり炊飯器で炊いた方がおいしい。鮭はまずまず。塩だけの味付けだったけど悪くないな。味噌汁は普通に満足。豆腐を入れたかったけど売ってなかったからしょうがないよね。

 ゆっくりごはんを食べている俺の隣でメタトロンがすごい勢いでごはんを食べている。でも体が小さいせいか、残ってるごはんの量は俺と大して変わらなかった。……口の側に米をつけているのはわざとなのか?気付くまで放置しておこうか。


「……おはよーございます。」


 ちょうど皆がご飯を食べ終わって片づけ始めた時に武が起きてリビングに入ってきた。扉の側にいた春が寝ぼけ眼の武に話しかけた。


「随分と遅かったね、武。さっきまで寝てたの?」


「ああ、あの会議の後二度寝しちまってな、ついさっき起きたところだ。……ところでその皿はどうしたんだ?」


「守先輩が朝ごはんを作ってくれたんだよ。」


「……え?朝ごはん、だと?」


 そこでバッと俺の方を見る武。おうおう、どうした。


「まだ朝ご飯って残ってますか?残ってたら俺も食べたいです。」


「あー、ちょっと待ってな。」


 既に食べ終わって俺の中に戻っていたメタトロンに声をかける。


『メタトロン、まだご飯余ってるか?』


『?いえ、余らせたらまずいと思ったので全部取りましたよ?』


『そうか、ありがとう。』


 マジか、一人分食べたのか。あの小さい体のどこに入っているんだか。……そういえばメタトロンがトイレに行ってるところ見たことないから全部吸収してるのか?


『そんな詮索はしない方がいいですよ?』


 こわーい。メタトロンが脅してきたよ。まあ、いいんだけどさ。


「余ってたら全然いいけど、多分余ってないんじゃないか?」


 自分の皿を重ねて片づける準備をしながら立ち上がる。若干の気まずく思いながら台所に向かう。そして、空だとわかっている鍋の蓋を開ける。


「あー、全部食べちゃったみたいだな。」


「そ、そんな。俺も食べたかった……。」


 思った以上に落ち込んじゃってるな。……まったくしょうがないな。


「今度また作ってやるから、そう落ち込むなって。」


「ほんとですか!?約束ですからね!」


 おおう、朝から元気だな。お腹空いてるんじゃないのか?ごはん作るのは別に苦じゃないからいいけどさ。


「約束な。」


 ポンポンと俺よりも高い位置にある肩を叩きながらそう言った。……別に日時は指定してないから本当に暇な時でいっか。



 リビングに戻ると、皆がのんびりくつろいでいた。L字型のソファーが置いてあるんだけど、そこに全員がだらしなく伸びていた。唯一、一誠だけがそんな皆の様子を若干苦笑いで見ている。……未来とか半分寝そうじゃないか。でもま、一応相談しておいた方がいいよな。


「あー、とさっきのミカエルの話なんだけどさ。ちょっと軽く相談しておきたいんですが。」


「え?……あー、確かに一人でいるよりも二人でいた方が生存確率が上がりそうだね。でもだったら、タッグの二人でいるっていうことでいいんじゃない?」


 一誠が反応してくれた。嬉しい。


「それなんですけど、少なくともディアボロスは俺たち二人じゃ太刀打ちできなかったんですよ。そもそも動きも見えなかったんで。だから多分二人じゃ荷が重いと思うんですよ。」


「……それはまずいかもしれないね。その俺たちっていうのは守君と希さんでしょ?二人がどれくらいの強さかわからないけど、きっと僕達と大差ないだろうし。だとしたら確かに二人じゃ危ない。」


「……一応言っておくけど、私も一人じゃ難しい。少なくても二人、できれば三人で行動したい。」


 ……未来でも一人じゃ危ないのか。だったら三、四で分けるべきか?だとしたらその内訳は?まあ、今のタッグを崩さない方が妥当かな。


「だとしたら三人、四人で分けて団体で行動しようか。それとできれば今のタッグもばらさない方がいいと思うから、三つのタッグを二つと一つに分けて、一つの方に未来さんが入ってもらえばいかな?」


「それがいいと思います。サタンというのがいつ来るのかわからない以上、できる限り現状を変えない方がいいでしょうし。」


 一誠が俺と同じことを考えていたみたいで、希もそれに賛成っぽい。


「うーん、一回タッグを崩してみても面白いと思うんだけどなー。」


「俺も先輩と同じ意見です。現状でもしっかり戦えていると思いますが、もっといい組み合わせがあるかもしれないので、それを試してみるのもいいと思います。」


「私も同じっすね。でもまあ、今すべきではないかもなー、とも思うっすけど。」


 愛梨と武と春は反対っぽい。まあ、わからなくもない。


「私はどっちでもいい。きっとまだそこまでしっかりしたコンビネーション攻撃とかできないだろうし。」


 未来はどっちでもいいと。こっちも正しい。

さてさて、どうするべきかね?

次話、明日投稿します。

よろしくお願いします。

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