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契約天使様の依り代  作者: きりきりきりたんぽ
2章 歪んだ自信
20/59

まいまい迷子

 翌日の朝9時半ごろ、俺は渋谷駅に着いた。……しぶやってひろいんだな。はじめてきたからしらなかったぜ!


 ……はい。どうしようか。早速迷子です。えっとあれは、みやますざか?でいいのか?うーん、とりあえず駅構内図を探してみないと。そしたら来た事がない俺でも知ってるような人気スポットがあるかもしれないし。

 それにしても渋谷って広いし、人も多いな。歩くのにも一苦労だぜ。にしても本当にこの駅から歩いてすぐの所に未来が言っていたような場所があるのか?地図で見た感じだと星マークがついている場所は結構広いんだけど。少なくともこんな都会の中心地みたいなところに土地持ってるんだから結構な金持ちなんだろうな。


『あそこに構内図がありますよ。それに今更ですがミカエルからもらっている携帯でも同じことができると思いますし。』


 ん?またかい?


『メタトロン。どうして君はそんな重要な意見を少し遅くくれるのかな?もう少し早めに行ってくれてもよくない?』


『いや、知ってるもんだと思いまして。だって携帯ですよ?スマホなんですよ?地図くらいならガラケーでも見れるんですからスマホなら当然見れますし。』


『最近まで携帯を持っていなかった人にそんなことを言う?知ってるわけないじゃん。』


『開き直らないでください。……まったく、困ったらいつでも私に聞いてくださいね。何となく考えていることは分かりますが、基本的に話しかけられないと寝ていることが多いので。』


『了解。』


 なるほどな。携帯を使えば地図を見ることもできるのか。えーと、まず開いて……んー、この地図っぽいのをタッチすればいいのか?まあとりあえず押してみよう。……おお!こんな風に地図が出てくるのか!しかも向く方向によって矢印の方向も変わるぞ!すっごい便利じゃん!

 ああ、ここに忠犬ハチ公像があるのか。この話は読んだことがあるぞ。しかもあれは実話だったとか。本当に素晴らしいことだ。なんで犬にできたことなのに人ができないのかがわからないけど。

 とりあえずここに行ってみるか。


『守、いいんですか?もう時間ですが?』


 え?マジ?


 慌てて腕時計を見るとあと5分で10時だった。……やばいな。まだどこに行けばいいのかわからんのに。あっ、そうだ。


『メタトロン、天使経由で連絡取れない?』


 いつだったか、天使同士で連絡を取ることができるって言ってた気がする。


『え?ああ、できますよ。』


 よしっ!ならそれで連絡が取れる!


『でもいいんですか?迷子になっていることが皆さんにばれてしまいますが?』


 え?何かそこに問題でもあるの?


『それに、あるのは緊急回線だけなので確実にあなたの前にほぼ全員の天使とその依り代が押し寄せてきますよ?何せミカエルですら気づけていない異常事態があると判断されるわけですからね。』


 ……。


『それで緊急事態だと大慌てでここに集結する皆さんに、始めてくる渋谷駅で迷子になりました、なんて答えられるんですか?』


 ……。


『いや、まあ答えられるなら私としては構いません。送りましょうか?』


『待て待て!送らないでいい!』


 はー?そんなことできるわけないだろー?しかもミカエルも飛んでくるだと?思えば話したこともほとんどないのに説教だけ受けるのは嫌だ!しかもなんか怖そうだし。特にその依り代の女性が!


『じゃ、どーするんですか?』


 クッソ、楽しんでやがんな。この引きこもり天使(ニート)が。


『はー?私がニートですって?それは聞き捨てなりませんね!私が教えてあげなかったら携帯で地図が見られるってことも知らなかったくせに!それに現実世界で私が出てきちゃうと大変なことになるから出てこれないんですよ!しかもニートだろうとあなたよりも友達の数がは多いですからね!』


 う、うるさい!俺だって好きでこんな(ボッチ)になってるわけじゃないんだ!友達がいるのが異常なんだ!そう、人は一人で生きていくことができる唯一の動物なんだぞ!


『いやいや、何を言ってるんですか?一人で生きていくことなんてできませんって。そもそも一人で生きていけるかどうかなんてどこぞの無人島に行かないとわからないでしょうに。』


 ~!あ、ヤバッ!もう時間だ!時計の針があと少しで頂点に上がってしまう!


『おやおやー?私と楽しくしゃべっている間にタイムアップですかー?』


 ……仕方ないか。


『メタトロン、時間止めて。』


 そう、時間が止まっている間に合流できてしまえば問題ないよね作戦。だってまだ十時じゃないし。あと数秒で十時になるかもしれないけど、まだ十時じゃないし。時間さえ止めてしまえば十時にならないし。


『まったく、あなたって人は……。』


 ピキンッ、という音と共に世界の時間が止まった。世界から色が失われモノクロの世界の代わり、それと同時に俺の中から天使が飛び出してきた。


「えいっ!」


 そしてその勢いを殺さないように俺の顔に向かってこぶしを突き出してきた。


「ぐおっ!」


 加速なしではそんな不意打ちに対応できるはずもなく、俺めがけて飛んでくる小さいこぶしがそのまま顎に当たった。思いっきり尻もちをついたところで顎を殴ってきたこぶしの持ち主の顔が見えてくる。……あ、怒ってる。


「なんで不用意に時間を止めるんですか?これも同じくらい異常事態だといっているようなものですよ?」


 ゑ?


「つまり、ミカエルも飛んできますね。それに時間止めたのは私なので怒られるのは私です。正直めちゃくちゃ逃げたいです。」


 お?じゃあ、俺はいっかな。


「なので早急に5人と合流して時間停止を解除しなくては。」


「うん、そーだな。」


「さ、早く動きますよ!いつ来るかわからないんですから。」


「うん、そーだな。」


「早く!足を動かしてください!」


「うん、そーだな。」


 いやー、慌ててるメタトロンはかわいいな。それに俺の心はまるで凪いだ水面のように穏やかです。いやー、背中を押そうとしてくれてる手が小さいなぁ。なんか天使であることを抜きにしたら庇護欲がすごい駆られるよな。


「ミカエルに見つかったら本当に大変なんですって。仕事量が半端ないことになりますよ!?それは守にも言えることなんですからね!?」


「うん。そーなのかー。」


「早く!見つけないと!やばいんです!」


「うーん、何がやばいんだ?」


「私の睡眠時間です!」


「あ、がんばー。」


「がんばー、じゃないです!早くう……」


 その時、足音が聞こえてきた。……いや、おかしい。時間止まってるのに……。でも、動ける人って依り代たちだけのはず。だったら、声をかけに……。


「一体どういうこと?なんでこんなところで時間止まったの?」


「さてな。だが、止まったからには異常事態ということでいいだろう。」


「もしかしたらあいつらが来てるかもしれない。一応用心していく。」


「ああ、そうしよう。」


 二人のあまりに高い敵意に思わず物影に隠れてしまった。

……やばい。これは本当にやばい。さっき未来が言ってたあいつらって、絶対俺たちのことでしょ。見つかったら()られる。未来のやつめちゃくちゃ不機嫌だったし。


「これは、まずい、かな?」


「まずい、ですね。あの二人に見つかったら本格的にやばいですよ。言い訳を言う前にやられますよ。」


 だよねー。気が付いたら死んでそう。つまり、俺たちは絶対に見つかるわけにはいかない。


「……とりあえず、協力しよっか。」


「そうですね。急いで合流して時間停止を止めないと私達の命が危ないです。」


 未来たちが向かった方向とは真逆の方向に足を進めていく。

くそっ、なんでこんな広いんだよ。一体何階建てだ?


「メタトロン、どこにいるかとかわからないのか?」


「分かりませんよ。でもその地図の目的地に一番近い出口なら分かりますよ。多分他の皆さんもそこにいるんじゃないでしょうか。」


「そうか。じゃあ二人に見つからないよう注意しながらそこに向かうか。」


 えーと、今いるのがハチ公の近くで目指すのがスクランブルスクエア?っていうところの出口らしい。……結構遠いな!ま、まあいい。この空間内で何かが動いている気配を感じたら、すぐさま動きを止めよう。そうすれば周りと同化してばれないはず。


『これからはこっちで話すぞ。』


『はい。じゃないと話し声でばれそうですし。』


『何か動く気配があったら頼むぞ。俺もしっかり気を付けるが。』


『任せてください。』


 ふう、とにかく足音を立てないように、でも急ぎ目に足を動かすぞ。

 心臓が早鐘を打つような速さで鼓動していて、驚くような量の汗をかいている。これは夏だからだけじゃないはず。


『!ストップ!止まってください!』


『え!?どうした!?』


『……やばいです。こっちも来ましたか。』


『え?……まさか。』


 コツコツと靴音が後ろから聞こえてきた。これは未来のものじゃない。未来が来た時は足音がしなかったわけだし、それにこれは多分ヒールだ。


「時間が止まってる……?なんでこんなところで?」


「分からない。でも調査が必要だ。天使が止めたならそれでいいが、もし向こう側からの侵略だった場合話が変わってくるからな。」


「そう、だね。もしここまでやつらの手が届いていたら大変だもんね。」


「ああ、最悪の事態も考えておかなくては。」


 ふいー。見つかっちゃいけないのが二人増えたぜ!どうするよ。後ろから聞こえてきたってことは、俺たちとあの二人が向かう方向って同じだよな?これ、詰んだんじゃないか?……いや、でもこっちに見つかる分には俺としてはいいのか?二人は天使が止めたならそれでいいとか言ってたし。


『ダメですよ!もしそんなことをしたら私にも考えがありますからね!』


 いやまあしないけど。一回した約束はしっかり守るよ。


『でも、だとしたらどうするんだ?目的地に着くためにはあの二人の後ろをついていかなくちゃいけなくなるけど。』


『うーん……。迂回しましょう!少しだけと周りをすればいいじゃないですか。』


『まあ、それしかないか……。』


 でも、迂回したらその分未来と遭遇する確率が上がるんだよな。大丈夫か、これ?



『あ!未来たちです!』

『え!?』



『あ!あれはミカエルです!』

『え!?』



『あれ?あれってなんでしょう?』

『さあ?なんかのアニメグッズじゃない?』



 案の定何回も遭遇しかけましたとさ。そのたびに神経をすり減らしながら何とかかいくぐって、ようやく目的地が見えてきた。そしてそこにはメタトロンの予想通りで希達とその天使が立っていた。よし!あとは時間天使を解除して何食わぬ顔していけばいい。

 そう思っていた時が俺にもありました。


「ん?皆ここで何してるの?」


「おや?未来さんこそここで何を?急に時間が止まって驚いているのですが……。」


「それは私達も困惑していた。だからこの駅内を歩き回っていたんだけど、特に何も見つけられなかった。」


「ふむ。……一応ですが、私達は以前未来さんに紹介してもらった所に行こうとしていたんですよ。ところで守君見なかったですか?まだ守君だけ来てないんですが。」


「?見てないよ。」


 なんとそこでは未来と希達が喋っていたのだ。いやいや詰んだんだが?だって今時間停止解除してのこのこ出ていったら未来に殺されちゃうでしょ。でも出ていかないっていう選択肢も存在しない。マジで頭抱えそう。


「おや?君たちはここで何しているんだ?あそこに皆いるんだから行けばいいじゃないか。」


 ……後ろからなんか声が聞こえてきたなー。隣を見るとメタトロンが奇妙な体勢で固まっている。


「おやおや、メタトロン。どうしたんだ?何かやましいことがあるのか?」


「い、いえいえそんなことはありませんよ!?一体何の根拠があって私を疑うんですか!?」


「そうかそうか。ならいいんだ。まあ、いいからあっちの合流するぞ。」


 後ろから押されるようにして連れていかれる。ああ、気分は捨てられる寸前の生ゴミです。ほら、こっちの存在に気づいたのか、みんながこっちを見てきているぞ。うーわ、怖すぎて未来の目がみえねー。


「おっと、ここに全員集合していたか。まあ、まず時間と止めたのが誰か特定しようじゃないか。この時間停止は私からしてもイレギュラーだったんだ。」


「そうなの?でもだったら残りは一人しかいないんじゃ?」


 そうなんだよね。あー、みんなの視線が痛いなぁ。


「まあ、そうだな。お前達しかいないよな。」


 ミカエルまで俺たちの方を見てきたー。よし、こういう時は……。


「メタトロンがやりました。」

「守の指示です。」


 こうなった時って、たいてい共犯なんだよな。

 仲良くミカエルから追加任務を頂きました。

次回11日予定です。


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