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契約天使様の依り代  作者: きりきりきりたんぽ
2章 歪んだ自信
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誠実の天使、慈愛の天使

「では今日はこれで解散だ。私達は再び調査に戻るが、このままここで喋っていてもいいしすぐに帰っても構わない。

 ……ああ、もし危ないと思ったらすぐに逃げることをお勧めする。特に中位魔性(ディアボロス)クラスになると力はもちろんだが知性も高くなるから気が付いたら詰んでる、みたいなこともなくはない。それに浅層で残っている強いのは私達か未来が倒すから気にしなくても大丈夫だ。」


 そう言い残すとミカエルとその依り代の少女は姿を消した。


「私達も帰る。ルシファー、行くよ。」


「うん?他の依り代たちと話していかなくていいのか?」


「いい。」


 ミカエルたちを追うように未来たちも消えていった。

うーん。俺はどうするべきかな?正直に言うと帰りたいんだけど。さっきのミカエルの話しぶりからして自由に裏世界に行っても大丈夫なんでしょ?ならそこで話せばいいと思うし。


「守君?ちょっと待ちましょうか。」


 メタトロンに帰ろうと話しかけようとしたとき希に止められた。いや、なぜばれたし。


「まだ依り代にうちの二人とはまともに話したことがないでしょう?この機会に話してみるべきです。」


 まあ、確かにそうなんだけどさ。今日は正直もう帰りたいというか、久しぶりに変なのに絡まれて精神的に疲れたというか。


「武も春もいいですね?」


「分かりました。」「了解っす。」


 ……ええ、マジか。二人とも良いのか。じゃあ俺だけ断るなんて許されないじゃん。


「ではお二人は今時間大丈夫でしょうか?」


「まあ……。」「時間止まってるみたいですし……。」


 あ、確かにそうじゃん。ここでの話し合いが終わらないと帰っても時間止まったまんまか……。そうなるともちろん電車も止まったまんまだから家に帰れない。余計に帰る理由がなくなった。じゃ、しょうがないか。


「まず簡単に自己紹介をしましょうか。私は新井希。高校1年生です。正義の天使ウリエルの依り代です。

 ……はい、次。」


 ボーっとしてたら希にせかされた。はいはい、名前と学年を言えばいいのね。


「名前は九条守。学年は同じく高一。契約の天使メタトロンの依り代です。」


 よし。これで完了。はい次やっちゃって。


「えーと。俺でいいか?俺は本田武。中二です。節制の天使ガブリエルの依り代です。」


「私は白石春華っす。同じく中二っす。裁定の天使サリエルの依り代っす。」


 知り合いのは終わったな。ってことは次はあちらの二人か。天使関連は覚えるって決めたからそれなりに真剣に聞かないとな。


「えーと。僕は小野寺一誠(おのでらいっせい)。学年は高二です。誠実の天使カマエルの依り代です。」


「あたしは小野寺愛梨(おのでらあいり)。同じく高二。一応一誠とは双子の兄弟で、慈愛の天使ラファエルの依り代。よろしく。」


 小野寺一誠、に小野寺愛梨、と。しっかり覚えておかないと。一誠はしっかり者、愛梨は少しチャラっぽいか?でもこれで七人の天使の名前と神性が分かったな。その能力は聞いていないからまだわからないけど。

 俺の契約。希の正義。武の節制。春の裁定。一誠の誠実。愛梨の慈愛。そして、未来の絶望。

 七元徳っぽいものも結構多いけど、それだけじゃないな。俺の契約も春の裁定もないけど、そもそも未来の絶望は外れすぎてるからな。

 ……さて、何を話すべきか。


「特に話すことがなかったらあたしから聞きたいことがあるんだけどいい?」


 おお、最高か!?話を振ってくれたぞ。まあ俺は振られないと話さないけどな。


「もちろんいいですよ。」


「じゃあ、さっき言ってたディアボロス?っていうのは一体何?あたしたちはさっき何言ってたのか訳わからなかったんだけど。」


 まあそうだわな。いきなり悪魔の名前が出てきたところで何の話か分からんよな。


「えーと、私は途中まで倒れていたのでそこまで知らないんですよね。ということで守君、説明お願いします。」


 ……ん?おかしいな。希もほぼ最初から起きてたはずなんだけど?それに知ってることって俺と希じゃ大差ないでしょ。

 だっていうのにもう既に希は聞く姿勢になってるし、二人の視線は俺に向いてるし。

 はあ。しょうがないな。


「えーと。俺も全部知っているというわけじゃないんだけど、知ってる範囲でいいなら。

 まず、リクレッサーには階級が存在する。石を投げつけてくる弱いけど数が異常に多い下位種から、剣みたいな武器を持った上位種。下から下位魔性(デーモン)中位魔性(ディアボロス)上位魔性(デヴィル)、そして最上位魔性(サタン)。こいつらは序列が上になればなるほどより強力な力とより高い知性を持つようになる。

 で、俺たちは昨日遭遇したのがデーモンだった。さっきの序列じゃ一番下だが、当然だがこいつにも知性がある。だから、だいたい50体ほどのリクレッサーを引き連れていたし、石じゃなくて剣を装備していた。どうして剣を装備していたかは分からないがな。

 想像はつくと思うが、50体のリクレッサーの対処だけでも大変なのに、それに加えて強い統率者がいた。正直戦いの中で何回か死ぬと思ったし、勝てたのは運がよかったからとしか言えない。」


 そこで一端話を切る。実際勝てたのは運がよかったからとしか言えない。あの時希が銃を打ってくれなかったら、あの時もっと早くに俺の限界が来て倒れていたら、あの時すぐに武と春が起きてくれなかったら、未来が来てくれる前に全滅は必至だっただろう。実際未来が来てくれたのも近くにいたかららしいし、こっちも運がよかったんだな。


「で、俺たちは4人で何とかそのデーモンに加えて50体のリクレッサーを倒しきった、はずだった。俺の刀がやつの首を確かに斬ったんだから。

 だというのに、そいつは今度はより強くなって復活してきたんだ。つまり、それがさっき出てきたディアボロスっていうことだな。やつはあまりに強かった。あまりに早すぎて動きがほとんど見えなかった。離れたところでようやく目で追えるって感じだった。

 そしてディアボロスになると、見た目にも変化が起きる。まず図体が大きいし、その額には少し角のようなものが生えていた。そしてその手にはデーモン以上に立派な剣が握られていた。

 ……こんな感じか。」


 話終わって一息ついていると、後ろが少し騒がしくなった。

振り返ってみると、メタトロンが他の天使に囲まれて質問攻めにされていた。


「なんで彼はあんなに知ってるの?」

「まさか、メタトロンが教えたんですかー?」

「まだ知っていい段階じゃないでしょう?」

「戦意喪失してしまったらどうするんですか?」

「彼らが戦ってくれないと人類そのものが滅びるんですが?」

「もう少し強くなってからでよかったんじゃないの?」


「あーー!うるさいですよ!私の判断ですし、ミカエルもいいって言ってました!文句ならミカエルに言ってください!」


 ちょっと待て。今の話ぶりからするとこんなに知ってたのは俺だけってことになるのか?いや、でもせっかくいろいろ知ってそうな天使が近くにいるのに聞かないのもおかしいだろ。それに知っておかないと逃げるってなったときに逃げられないし。


「……他には何か知らないんですか?それこそデヴィルやサタンの特徴とか。」


 希が何かを探るような視線を向けてきながらそんなことを聞いてきた。


「いやそこまでは知らん。実際に遭遇しそうな脅威についてしか教えてもらえなかったからな。まだそこらへんのは出てこないから大丈夫だってさ。それにもし出てきたとしても見たことがないのが来たら逃げればいいし。」


「……確かにそうですね。」


 これで俺の出番はおしまいかな。さ、他の人にも話を振ってあげて。


「ちょっと待って。じゃあ、どうしてあなたたちは生き残っているの?聞いてた感じだととてもじゃないけど生き残れそうにないんだけど。」


 ……まーだ俺を見てるよ。ほら他にもいるじゃん。4人って言ってたんだからとなりの希も反対側の春ももう一個となりの武でもいいじゃん。

 ……はあ、まだ喋るのか。


「それがさっきまでいた未来が助けてくれたんだよ。なんでか知らないけど未来は強かった。本当に。俺たちのことを守りながらディアボロスを一方的に攻め続けた。しかも天使の助力なしで。結果的に俺たちは全員が生きて帰ることができた。」


「……つまり、その未来さんが強かったと?だとしたらどうして、彼女はそこまで強いんですか?」


「それも聞いた。そしたら一つの所を紹介してくれてな、なんでもそこに行けば強くなれるらしい。……先輩たちも行くか?」


 別に強くなりたい人であれば何人でもいいって未来言ってたから大丈夫でしょ。あの口ぶりからして俺たち全員に行けって言いたかったんだろうし。

 ん?なんか俺の顔に付いているか?二人が俺の方を驚いたように見てくるんだけど。


「……何か?」


「いや、別に何もないですよ。ただ俺たちのことを先輩としてみてくれているんだと思ってね。」


「そうね。あたしたちに対してもため口だったから、てっきり忘れてるんじゃないかって。」


 いや、別に最初は敬語使おうと思ったんだけど、なんか敬語だと壁感じるじゃん。7人しかいないからここで壁作ったところでいいことないって思ったんだけど。


「ふふ。守君は不器用なので。もしかしたらため口の方が距離が近づくんじゃないか、とか考えたんじゃないですか?」


 ……希は希でエスパーか何かか?なんで俺の考えてることが分かるの?


「ほら皆さん見てください。考えていることが顔に全部出ているでしょう?」


「やめろやめろ。俺はそういうキャラじゃないんだよ。

……ゔんっ!あー、じゃあ明日行ってみようと思ってるんだけど、皆は予定とかあったりするか?」


 慌てて話題を変えたけど、何か生暖かい視線で見られてる気がする。特に先輩二人から。

 聞いてなさそうだから再放送してやろう。


「皆は予定とかあったりするか?」


「聞こえてるって。なに、かわいいじゃん。守ちゃんって呼んであげようか?」


「絶対にやめてください。で、行けそうか?誰もいなくてもとりあえず行ってみるつもりだけど。」


 結局6人全員で行くことになった。あとで希に教えてもらった事だけど、先輩たちは天辺高校と星辺高校に通っているんだと。俺はよく見ていなかったんだけど、同じ制服を着ていたらしい。まあ、同じ学校だったらみんな今日で授業終わったんだろうし、明日は暇か。


「じゃ、明日10時頃に渋谷駅に集合ということで。」


「「「了解!」」」


 明日の約束をしたところでメタトロンに声をかけて帰ることにした。いやー、今日は喋ったなぁ。この調子で喋る練習もしていくか自分で言ってて馬鹿らしいけど。眩いまでの光に思わず瞼を閉じながら、そんなくだらないことを考えた。

 気が付いたら駅のホームに立っていた。次の電車の時間は……2分後か。メタトロンと話したいことがあったけど今は無理。周りに同じ学校の生徒がたくさんいるからね。携帯でもいじるか。なんかメッセージが来てるかもしれないし。え?周りにいるのにいいのかって?そんなの気にしない。

 携帯を開くと新規メッセージは……来ていなかった。はぁー、することねえ。


『あー、一応私となら話せますよ?』


 そんな時不意に頭の中に声が響いた。


「ゔぇっ!?」


『声を出さないください。私の声は守にしか聞こえていませんよ。』


 周りをちらっと見ると、変な人を見るような目で見られていた。しかも大半が女子生徒。そうだった、天辺と星辺は同じ最寄り駅だった。これまで気にしたことなかったけど。


『これでいいか?』


『はい、聞こえてますよ。で、何か聞きたいことがあるとか。どうしたんですか?』


『さっきミカエルが自由に戦っていいって言ってたけどさ、本当に勝手に裏世界行って大丈夫なのか?』


『大丈夫ですよ。何なら今から行きますか?』


『当然行く。家についてからだけどな。』


『おや、そうなんですか?』


『ああ、もし大怪我して戻ってきたら家に帰るのも大変だろう?だから帰ってすぐに寝れるように一回家に帰る。』


『……まあ、確かにそうした方がいいでしょうね。じゃ、そうしますか。』


 急いで家に帰って、それからすぐに裏世界へ向かった。



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