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契約天使様の依り代  作者: きりきりきりたんぽ
2章 歪んだ自信
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第三回 七翼会議

投稿遅れてすみません。

 翌日、俺は珍しく少しワクワクしながら普通に学校に向かった。いや、学校というよりは圭介との待ち合わせ場所か。というのも、これまではただの聞き専だったけど今回は俺にも話したいことがあるんだよ!すごくないか?交友関係が圭介しかいなかった俺がその圭介に自分の友達のことを話すんだよ?いやー、まさかこんな日が来るとはね。


 ……あー、全然うまくしゃべれんかった。しゃべるのって結構難しいのな。電車の中で圭介と喋ってたわけなんだけど、全然ダメ。多分周りの人からしたら突然地獄が挨拶してきたって感じになったと思う。何せ言ってることがハチャメチャだったんだもん。最初文化祭の話を聞いてきたって話をしてたんだけど、突然そこに中学生が入ってきて喧嘩し始めて、今度は場所がいきなり喫茶店に変わったからな。ほんと日本語一年生みたいな会話をしてしまった。っていうかこれについてこれた圭介のコミュ力か読解力がえげつない。なんかところどころでいい感じに相槌入れてくれたし。そのおかげで何とか会話っぽくなった。まじでありがとう。


「ふうー。

守、お前もっと会話の練習しような。」


 電車降りた直後に圭介にそう言われた。


「あ、やっぱり?」


「おう。いきなり喧嘩の話から喫茶店の話に飛んだ時はほんとに何言ってるのかわからなかったしな。

幼馴染だからしっかり聞いてたけど、俺じゃなかったら多分何回か切られてるぞ。」


 ああ、まあそうだろうな。多分さっきの会話で普通だったら少なくとも5回は聞き返してくるだろうからな。「え?」とか「突然話変わった?」とかね。うん。俺だったら間違いなく何回も聞き返してる。


「って言っても今日で授業終わりで明日から夏休みだからなぁ。会話の練習とかってできないよな。って会話の練習って一体なんだろうな……。」


 あれっ?今日で授業終わりだっけ?


「それに夏休み入ってからだろ?あの星辺高校の首席と話し合うのって。大丈夫か?」


「あーそれなら大丈夫そうだ。さっき話してた人の中にその星辺高校の首席って人がいたから。

昨日少し話してみたけど、なんか大丈夫そうだったよ。」


「おーそうか。よかったよかった。なら安心だな。」


 ……結構心配かけてた感じか。


「なんかありがとな。」


「気にすんなって。当然のことをしただけだからな。」



 夏休み前最後の授業はあっという間に終わった。っていうかボーっとしてたら、気づいたら終わってたって感じ。なんか終わってんなー。

 ま、とりあえず帰る準備してから今日は部室によってみようかな。思えば部室行くの久しぶりだな。それか未来に教えてもらった所に誰か誘って行ってみようかな。

 そう思ってそそくさと帰る準備をしていたら俺の机に影が落ちた。


「ちょっと待ってよ、九条君。聞きたいことがあるんだけど。」


 視線を上げるとそこには眼鏡少年が立っていた。しかもなんか怒ってない?……やべっ、名前わからねえ。


「昨日、放課後に喫茶店で女子生徒と話していなかった?」


「はあ。」


「それって不純異性交遊なんじゃないの?テッペンとして適切な行動じゃないんじゃないの?」


「はあ。」


「どうなんだよ!?はっきり答えろよ!」


 あー、うざったいな。そもそも名前を知らないって時点で俺からしたらどうでもいいってことなんだけど。話すのも億劫だな。無視、しちゃう?


「おい!」


 うーん、もう圭介はいないか。そういえばさっき、じゃあなーっていう声を聴いたような気がする。頼れる圭介がいないってなると、ここは逃げの一手だな。カバンを持って退散しようとする。


「待てよ!」


 カバンを掴まれた。ぎゃー、ぼーりょくはんたーい。

この体勢で大声上げたら俺の勝ちじゃね?でもそれはそれで面倒くさくなりそうだな。はあ、仕方ないか。


「……放せ。」


 とりあえずカバンを掴んでる手を乱暴に引きはがす。さすがにちょっとイラついてるからね。


「そもそも仮にお前が言った事が正しかったとして、それの何が問題なんだ?学校外でも交流を持とうとすることがそこまで悪いことなのか?」


「別にそれが悪いとは言ってない。問題なのはその相手が女子生徒だったっていうことだ。」


「だから、それのどこが問題なんだ?」


「別に九条君がただの一般生徒であるなら問題はない。ただ、君はテッペンなんだからその行動は模範的であるべきだといっているんだ。」


 はあー?


「模範的、ね。具体的にどんな行動なのか言ってもらおうか。」


「校内では校則を守り、校外では誰が見ても立派に見えるように行動する。つまりはこの学校の象徴として行動するべきだ。」


 えー?何こいつ。


「そもそも校外の人からしたら誰がテッペンかどうかなんてわからないだろ。」


「分かる人は分かるんだ。」


 なんていうか、それは根拠ではないよな。そりゃ分かる人には分かるだろうけど。それは何事にも言えることだし。


「お前の言っていることは根拠になりえないな。他には?」


「は?何を偉そうに……。」


「偉そう?お前の主観を押し付けられてるのは俺だ。だからそれを受け入れるに足る理由があるかどうかを聞くのは当然のことだ。そんなこともわからないのか?」


「問題はお前ではないんだって言ってるだろ!周囲の人がどう見るかが問題なんだよ!」


「俺はそんなことを気にしないしどうでもいい。他人がどう見ようが、俺が正しいと思えないことをするつもりはない。そしてお前は俺にその考えを変えるに足る理由を示せなかった。だから俺は自分の考えを変えるつもりはないし、それでもいやだったら俺から首席の座を奪えばいい。」


「っ!」


「それに不純異性交遊、だったか?そんなことをした覚えはない。

それとお前も今の自分の行動を顧みた方がいい。周りを見てみろ。

 ……もういいな。俺にだって用事がある。」


 カバンを背負い直して教室を後にする。放課後とはいえあんな大騒ぎしたんだから残ってる同級生からの視線も痛かったし。

 はーあ、本当になんであんなことを言ってくるのかわからない。別に他人が何しててもいいじゃん。誰と会っていようが、何をしていようが。なんで干渉してこようとするかな。よほどの暇人なのか?

 学校から最寄り駅までの短い道を歩きながらこれまで考えもしなかったことを考えていた。中学以来誰にもこんな風に絡まれたことなかったからな。それに絡まれる時はもっと陰湿で大人数だったから本当に何も考えていなかった。なんでこんなことをしてくるのかとか考えてもわからなかったし、考えても無駄だと思ったから。


 ――“集合”――


 駅のホームについた時にそんな声が頭の中に響いた。同時に時間が止まり、メタトロンが俺の前に現れた。


「おや、また何かあるみたいですね。まあ昨日のことだとは思いますが。」


 ふわふわと空中に浮かびながらメタトロンがそんなことをのんびり言っている。すると今度は俺たちの足元に光でできた魔法陣が出来上がっていき、――そこから白い光が放たれた。

 そのあまりにまぶしい光に思わず目を閉じる。


 少しすると、その光が収まってきた。

ゆっくり目を開けると場所が駅のホームから例の会議室みたいなところに変わっていた。前回と少し違ったのはもう既に浮いている椅子に座っていた点だ。……やっぱり座り心地いいな。


「さて、全員集まったな。今回呼んだのは新しくわかったことがいくつかあるからだ。その共有が終わったらあとは自由にしてくれて構わない。」


 いつの間に現れたのか、ミカエルが俺たちにそう語りかけてきた。


「まず、その前に私達がこの間何をしていたかを説明しよう。

 お前達がリクレッサーの対処をしてくれるようになったおかげで、私達は裏世界についての調査をすることができた。その点については感謝する。お前達が協力してくれる前まではリクレッサーの対処をしながらの調査だったから遅々として進まなくてな。

 さて、私達は裏世界と普段読んでいるが正式にはリマインド・ゼロという。まあ知っていればいいから話すときは裏世界でいい。そしてその構造についても説明しよう。お前達が普段リクレッサーを倒している所が浅層(せんそう)。私達が最近まで調査していた浅層よりも下にあるのは深淵(しんえん)。そしてその深淵よりも深い所に聖域(せいいき)と呼ばれる場所がある。

 どうしてこんな話をしたのか不思議だろう?だが、これにも関係がある。お前達が普段倒しているリクレッサーは深淵から、ひいては聖域から()()()()()()()()()なのだ。」


 そこでミカエルは一度話を切ると、俺たちに何かを考えさせるように間を取った。

……つまり、俺たちが倒していたのはもっと深いところから漏れ出たものだと。ってことはそこに元凶がある、もしくはいるのには変わりがないということになるか。そしてその元凶は聖域ってところにいる可能性が高い、と。ざっとこんな感じか……?


「そう、人類を脅かす元凶がその聖域と呼ばれる階層にいる可能性が極めて高いということだ。そして、それ以外にも考えねばならないことがある。お前達が浅層で戦っているリクレッサーが奥深くから漏れ出してきたものが固まったものである、ということはそれが対処しきれずに浅層から漏れ出したらどこに行くと思う?」


 ……なるほど、答えは一つしかないか。


「そう、人の住む現実世界にそれが漏れ出す。そしてそれは地震や火山噴火といった自然災害に形を変えて人の世界に襲い掛かる。

 おっと、ただの自然災害と高をくくるなよ?その規模はお前達の想像を軽く超えるものになることには違いがないからな。それこそ一撃で人間社会の秩序を物理的に乱しかねないほどだろうな。」


 はぁ?なんだそれ、強すぎるだろ。しかも秩序を物理的に乱すってことは核兵器以上の威力ってことにならないか?少なくとも政府が機能停止になる程度ってことだけど、例え国会議事堂になんか爆弾が落ちて総理大臣が殺されたとしても政府の機能は停止しない。だから逆に日本を無法地帯にしたければ、政府の統治を国民が無視しなければ生きていけないほど国民が追い込まれていないといけない。食糧難が最たる例だろう。つまり、今ミカエルが言った災害っていうのは日本全国の物流を中長期的に止めるほどの規模になる。……そもそも直接日本全国に被害をもたらす災害ってだけで前代未聞だろ。


「今の話を踏まえたうえで次の話をしようか。

 私達が元凶がいると睨んでいる聖域、そこから漏れ出す力が増えてきているのだ。今はまだ少しずつだが、いつ急激に増えるかわからない。もし急激に増えたらどうなるか、想像に難しくないだろう。」


 ミカエルの言葉で事の重大さを理解させられた俺たちは自らの無力感を実感し、沈鬱な雰囲気が流れた。

 そうだよな。ただでさえ苦戦が続いていたのに、普通に考えればより強い個体もしくは単純に敵の数が増える、っていう台風級の向かい風が吹くってことだもんな。弱り目に祟り目どころに話じゃねえな。……ん?でもつい昨日とんでもない個体と遭遇しなかったか?


「ミカエル、少しいい?」


 俺が昨日の化け物のことを思い浮かべた時、未来がミカエルに向かって発言した。


「ん?なんだ?ルシファーの依り代、未来。」


「つい昨日、中位魔性(ディアボロス)クラスと遭遇した。もう半ば手遅れなんじゃない?」


「は?」


 ミカエルが口を少し開けたまま固まっている。


「……マジ?」


「マジ。実際に私が戦って倒してきた。それに4人もその場にいた。」


「……話が変わってくるじゃないか。私が見た感じだとまだそれほどたまってはいなかったんだが。」


「まあ進化したてだったけど。」


「ああ?もっと問題だ!ってことは少なくとも一体は……。

ってそんなことは私達がするからいい。お前達は私からの連絡がなくてもいいから、できる限り裏世界に行って戦ってこい。探さなくてもぶらついているだけでリクレッサーは近づいてくるし、それだけじゃなく天使の力は使えば使うほど体になじんで強くなるからな。最初は体を壊すギリギリまで天使の力を使ってみろ。そうすれば、より早く強くなれる。

 ……この世界の未来はお前達の手にかかっているといっても過言ではないかもしれなくなる。だから、本当に頼むぞ。」


 ミカエルの取り乱した様子を初めて見た。つまりはそこまで状態が悪いということ。なんか知らない間に世界は危機的状況にあるみたいだ。戦いの最中で死ぬよりももっと恐ろしいことが身近に迫っていると知って頭の中がこんがらがって何も考えられなくなってしまった。

 思えばこれまで人類が滅亡しそうだからそれを止めるために戦ってくれって言われてたけど、実際どんな風に滅亡するのかは教えてもらえなかった。

 でもそれはかえって良かったかもしれない。


 だって、俺はそれを具体的に知ってもそこまで焦ることができなかったんだ。それどころか……。

これからも不定期ですがよろしくお願いします。

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