魔女のきょうだい
【 白魔女:しろまじょ 】
善き魔女。
由来は、白黒はっきりさせる、からの「白」。
この場合白黒は成否の意味合いからなる諺的なこと。
白魔女については階級があるとされ、
白魔女検定などがあり、
免許を持っている、という言い方になる。
迷信ではなく、
聞こえが悪いひともいるかもしれないが、『気休め』の眷属。
医学に精通しているかもしれない件について、
現在禁止気味の、民間療法というものについて関わっている節がある。
また、白魔女と言う言い方が珍しいだけで、
歴代の癒し系女性の中に実質上「白魔女」がいたことは明らかだ。
「不思議子供辞典・・・あなどれないな・・・」
本を閉じて、溜息を吐く。
開いている窓のふちに座っている、逆光の中の少年が言った。
「それで、妹は魔女ってことなの?」
「魔女の中でも白魔女だ」
「だから花がいっせいに咲いたのか」
「危険だ」
「どうして?」
「弟よ、感情変化で花が咲く、は、目に見えて危険だ」
「花が咲いて、何が悪いんだろうって思ってる」
「うん、まぁ、お前は生来そんなやつだ」
「兄さんは何を隠しているの?」
「魔女狩りがひと段落したからって、今度は白魔女への求婚が絶えない」
「兄さん・・・犯行予告じゃなくて、判子予告って言ってたの?」
「妹の許嫁は、とびきり妹と相性がよくないとお互いを焦がして衰弱するかもしれない」
「心配しすぎでないの?」
「妹もその許嫁もまだ十五歳だ・・・父親代わりの俺に、もう十五歳、なんてありえない」
「一生なんじゃないの?」
「知らない。分からない」
「分かった、分かった、僕は兄さんの味方、
妹が芸能界デビューしたからってなんでもない」
窓辺に飾ってあった花瓶に差してある生け花から一本抜いて、少年は香りをかいだ。
また溜息を吐いた兄の方が、椅子を引いて座った。
「俺も魔法使いだったら、少しは役に立てたんだろうか・・・?」
目をぱちくりとさせて、窓辺から床に足を着地させて、部屋を移動する少年。
兄の肩に手を置き、持っていた花を兄の耳元に差した。
「兄さんは十分頑張ってる、もう少し気楽に生きようよ。きっと一緒に」
無言のまま手製のアップルパイを口に運んでひとくちめ、
なだらかに兄が一筋泣いた。
「・・・魔法術用のサンプルにとっておいていい?」
小さな小瓶に兄の涙を採取すると、弟は瓶にコルクの栓をした。
窓辺に向かってかざしてみると、それは光が照る美しいものだった。