白魔女裁判
白い長袖のブラウスに、紺色のロングスカート、そして黒いブーツ。
細身を思わせるその骨格の女は、腕から背中にかけてショールを羽織っている。
うつむき気味なその美しい顔に、長めの横髪が少しかかっていた。
彼女が顔を上げた時、その場は少し緊張していた。
そしてどよめきが静寂を成して彼女を認めると、側にいたスーツの男が言う。
「勝訴っ、白魔女という言い方が法律で導入されますっ」
その場でカメラのフラッシュがたかれ、メモをしたり電話を入れたりする記者たち。
迎えの車に補助付きで乗る彼女の映像が放送される頃、
そのテレビ画像を見ていた小さな坊やがおっかなびっくりで家族に振り向きました。
「なんて言ってるの?」
「白魔女。善き魔女のこと」
「魔女が?」
「そう、魔女にも種類があるらしい」
「いつから?」
「詳しくはまだ分からないが、いずれ噂にでもなるんだろう」
「なんて?」
「大丈夫、だ」
坊やは首をかしげて、テレビを指さしました。
「魔女裁判、って、なにか思い出しそうなんだけど、なんなの?」
「やっと終わって、そしてやっと始まったのかもしれない」
「なにが始まったの?」
「新しい時代・・・かな」
「何が終わったの?」
「旧世代の、悪臭だよ。パパの小さい頃から、生まれる前からもあった」
「白魔女って、それをどうにかできるってことなの?」
「軽石みたいなクッキーを将来焼いてくれそうだ。その件で俺は白魔女に票だな」
「白魔女裁判とかが起こるのかしら?」
「新しい時代が来たと言っているだろうに」
「なるほど・・・パパもお仕事で関わるってこと?」
「かも、な」
「僕のママって誰なの?」
「それは教えない」
「ねぇ、このテレビに出てるひとじゃないの??」
少し、間があった。
「お前がもう少し大きくなるまで、この話はおあずけだ」
電話が鳴ったのをきっかけに、またテレビ画面に視線を戻す坊や。
電話に出た男が、なんだって、と少し声を荒げた。
少しの会話のあと、電話をきった男が坊やの前で溜息を吐く。
「ん?」
「そうだ、このテレビに映っているひとが君のママだ。そして白魔女裁判が始まる」
坊やは小さく何度もうなずき、やっぱりか、とぼやいた。