カルナ
俺は魔剣士にあこがれてきた。
俺の町を救った英雄。中にはあの人のことを敵国からのスパイだったんじゃないかっていう奴もいる。
まあ、身元もわからず、テロを起こした奴らをある程度倒して鎮圧したら霧みたいにどこかへ行ったんだ。不気味に思う奴もいるかもしれない。
だが、俺にはそんなことはどうだっていい。あの人の魔術や剣を見れば、素人目ですら、美しいと感じてしまう。
あの人は誰も殺さなかった。腕を刺して使えないようにはしていたが、誰一人として命を奪いはしなかった。
つまり、数百人ものテロリストを相手取ってなお、それだけの余裕があったという事だ。
胸が高鳴る思いをした。
こんな風になりたい、こんな風な強さが欲しい、こんな美しい戦いをしてみたい。
この日から、魔剣士は俺の目標、生きる目的となった。
だが、エリカは俺よりも才能に恵まれていた。天才ってやつだろう。俺よりも訓練を始めたのはかなり遅かったのに、あっという間に追い抜かれた。
絶望した。
そんな時だ。俺と同じものにあこがれ、俺よりも才能に恵まれていない奴に出会った。それが、エミリーだ。
まともに魔術すら使えない。そんな奴が魔剣士になんて目指すことすら敵わないはずだ。
俺はエミリーと自分を比べ、優越感に浸ることで、エリカとの才能の違いから目をそらし続けた。
だが、翔。お前は何だ?お前は魔剣士を目指しているわけじゃないだろう?なのに、どうしてお前はそんなに恵まれている?
俺はお前より努力してきた。魔術の工夫も重ねてきた。知識も、経験も、力も、俺の方があるはずなんだ。
なのに、どうしてお前はそんなに強い?これからもみんな、俺を追い抜いていくのか?
探してやる。お前の強さの根源を。
だが、その根源はすぐに見つかった。
「あの時いった事を撤回するまで、僕は倒れない。」
その一言で、全てを察した。
そうか。
翔。お前にとって、エミリーは俺にとっての魔剣士だったのか。
憧れを侮辱されれば、絶対に勝とうとする意志が生まれる。これが意志の力。
打ち落とされたとき、それを知った。
いつの間にか、俺は諦めていたのかもしれないな。魔剣士になることを。
でも、これで終わってたまるか。絶対に追い抜いてやる。
カルナは、その決意を胸に、訓練所を去っていった。




