夢の正体
「ここは……。」
竜と対峙したときもそうだった。身の危険を感じるといつの間にかこの景色を見ている。
戦場と化した町。火も黒煙も至る所に沸いていて、とてもいい気分にはなれない。そして、そこにはいつも、あの男がいる。
「また会ったな。」
後ろから声が聞こえる。もう何度も向かい合って話した男の声だ。
僕はため息をついて振り向き、男と向かい合って立つ。
「どうせまた話があるんだろうけど、その前に一つ教えてくれ。」
僕は、次会った時に聞こうと思っていたことを思い返し、口を開く。
「ここは一体何なんだ?お前は一体ここで何をしている?僕に何を伝えたいんだ?」
男は目をそらして舌打ちをする。
「質問は一つって言ってなかったか?まあいい、そろそろ頃合いだとは思っていたがな。」
「頃合い?」
「ああ、今回は時間に少し余裕がある。長話くらいならできる。」
男は近くにあった瓦礫に腰掛け、翔にも座るように顎で指す。
その態度に少し苛立ちを覚えたが、翔は言うとおりに近くにあった瓦礫の上に座ることにした。
「まず、この場所のことだが、そもそもここは夢じゃない。現実だ。お前も薄々感じているだろうがな。」
男の言ったことに翔は驚きはしたものの、すぐに納得はできた。
確かに今までは夢だと思った。もっとも、これ以外の夢を見たことがない僕にとっては疑いようのないことだったが、それでもどこかしら違和感があった。
夢は言わば寝ている間にみる自分の想像だ。人が考えた想像上のものなんて曖昧なものだし、現実味のないものだ。
だが、目で見た景色、音、煙の匂い、空気の乾きなど、僕の夢はあまりにも五感が鮮明に感じすぎている。
「もし本当にここが現実なら、一体どこなんだ?」
翔が眉間にしわを寄せ、難しい表情を浮かべる。
「ここは時間軸が違う世界だ。お前が元居た世界とも、今いる世界とも違う、もう一つの並行世界に俺はお前を呼び寄せた。」
「なっ……!?」
翔はその事実を聞かされ、動揺を隠せずに立ち上がる。
当然だ。確かに僕が並行世界に迷い込んだ可能性は高かったが、それは事実ではなく、あくまでも自分で考えただけの仮説だった。実際、並行世界なんてものを信じ切れていなかったし、この男に言われたからといって、それが本当だとはそう簡単には思えない。
だが、問題はこの男が僕をこの世界に連れてきたという事だ。
もし本当なら、こいつは僕に世界を渡らせることが出来るのかもしれない。
そして……
翔は男の両肩に手をのせ、確かめる。
「僕を元の世界に戻すことが出来るのか!?」
必死になって答えを求める。
男はそんな翔を見て、少し辛そうな顔をし、それを隠すように俯く。
「できない……と言えば嘘になる。」
「だったら…」
「だが、そうするわけにはいかない。お前にはやってもらう事がある。俺が出来なかったことを、お前には果たしてもらわなければならない。それを達成できれば、お前を元の世界に戻してやる。
そうしないと、俺がここにいる意味がなくなる。」
その辛そうな顔を見て、翔は男が冗談で言っているわけではないことを悟る。
下唇をかみ、思いを押し殺す。
「分かった。僕は何をすればいい?」
「まだ具体的には言えない。俺自身もお前がどうすればそれを達成できるのか、分からない。
だが、お前には未来を、運命を覆してもらう。必ずだ。
そのために、お前は戦う術を身につけろ。そして、誰にも負けない強さを手に入れろ。
今はカルナに勝って来い。勝ち方は俺が今から教えてやる。分かったな?」
この男のいう事は未だに信用できない。だが、今まで何度も助けられたのは事実だ。
ならば、借りを返さないわけにはいかない。
「ああ、分かった。僕に戦い方を教えてくれ。」
こうして、翔と謎の男は妙な関係のまま、師弟のような関係となっていった。




