生徒会①
体調が戻った翔は教室に戻ろうとしたが、昼休みの時間になっていることを確認すると、エミリーといつも昼食をとっていた池のほとりにやってきた。
「あっ、翔君!具合はどう?」
エミリーが嬉しそうに翔の元へ駆け寄る。
「ああ、すっかり良くなったよ。心配をかけてごめん。」
翔はエミリーの隣に座り、弁当を受け取る。
生徒会長とエミリーは少し接点があるようだ。でなければ、僕に話を聞き出すことに協力を依頼したりはしないだろう。
「エミリー、生徒会についていくつか聞きたいことがあるんだけど、いいか?」
翔がそう言った瞬間、エミリーの動きがぴたりと止まる。
「?どうしたんだ?」
「……もしかして、マリア先輩に何か言われたの?」
「ああ、生徒会に入らないかって…。」
翔が言うと、エミリーは不機嫌そうに口をとがらせる。
「どうしたんだ?」
「あの人、本当に抜け駆けが好きよね。」
「抜け駆け?」
「なんでもないよ。それで、生徒会の話だったよね。」
「あ…、ああ。」
翔はエミリーが不機嫌になった理由が分からず、不思議に思いながらも話を聞くことにした。
「生徒会の仕事は多いよ。学校の行事の運営委員会の費用管理、緊急事態が発生した際の出動、学校生活の秩序を保つとかだったかな。」
「緊急事態っていうのは?」
「この学校では、戦闘能力の高さを大会や訓練で競って序列が付けられるんだけど、生徒会では序列の順位が高い人が良く選ばれるから、この間竜が町に出現したみたいな非常事態が起こった時には要請が来ることがあるの。
別に絶対に行かなきゃいけないっていうわけじゃないけど、そういう事に対応するのも生徒会の役目になってるよ。」
いや…、どう考えても学校の生徒会がするような仕事内容じゃない気がするんだが……。
確かにあの竜を退治したのは生徒会長だと聞いたが、僕があんなのを相手にして無事でいられるわけがない。実際あと少しで死ぬところだったんだ。
でも、あの人には助けてもらった恩がある。それに要請が来たからといって絶対に行かなければいけないというわけではないんだ。それなら入ってみてもいいかも…。
「それで?ショー君はどうするつもりなの?」
「うーん、少し考えてみるよ。教えてくれてありがとう。」
「どういたしまして。」
「あっ、いた。最近見ないと思ったらこんなところにいたんだー。」
僕とエミリーが話していると、後ろから声が聞こえる。
振り向くと、エリカが弁当を持ってやってきていた。
今ちゃんと向かい合ってみてようやく分かったが、何だか警戒が出来ない。
人と向かい合っただけでこんな気持ちになったのは初めてだ。
「エリカ、今日は弁当なんだね。」
「うん、今日は久しぶりに早起きできたから、弁当を作れたんだよー。一緒に食べよー。
それともお邪魔だったかなー?」
エリカはニヤニヤと笑みを浮かべる。
どういう意味かは分からなかったが、エミリーはその意味が分かったようで、顔を真っ赤にして「そんなことない」と必死な顔で言う。
最近、そんな姿が少し可愛らしいと思うようになった。
エリカは恥ずかしがるエミリーの隣に、僕とは反対側に座る。
「それで、エミリー。この人は大丈夫なのー?今までずっと人を避け続けていたのに、会ってそんなにしていない人にこれだけ近づいても。」
心配そうにエリカはエミリーに尋ねる。
「うん、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。私は翔君を信頼してるから。」
エリカは迷いなく言うエミリーに少し驚いたが、すぐに安心したような笑みを浮かべる。
「そっか……うん、脅されてるとかじゃないみたいだねー。それにしても、エミリーがここまで気を許すなんて、二人で何かあったのかなー?」
といった具合にまたさっきと同じ状況に陥り、エミリーは顔を赤く染める。
話についていけなくなった翔はだんまりとしている。元々話すことが得意ではない翔にとって、こういった裏に意味のある会話というのは理解できないものだった。




