能力①
朝、目覚めると例の戦場の夢のせいで眉間にしわが寄っていることに気付く。
元の世界でこの夢を見ても何とも思わなかったのだが、最近ではこの夢のせいであまり寝付けない。だんだんと目の下の隈が濃くなっているのが鏡を見ても分かる。
あの男の白い髪。あいつとは夢の中でしかあったことはない。そのはずなのに、妙に親近感とも怒りにも似た感情を抱く。
登校時間、翔がため息をつく。頭がぼーっとし、歩いていても眠気が収まらない。
「ショー君、大丈夫?具合悪そうだけど。」
心配したエミリーが話しかける。
「ああ、少し寝不足なだけだよ。心配かけてごめん。」
「はい、嘘。」
「……あっ。」
しまった。また嘘をついてしまった。
やっぱり頭がちゃんと起きていない気がする。
「……ごめん、でも大丈夫だよ。大したことじゃない…から…。」
あ、マズイ。意識が遠のく。少し無理をしすぎたか。
翔は電池が切れたかのように意識を失った。
目を覚ますと、そこは学校の保健室のベッドの上だった。
久々に夢を見ずに眠りにつけたおかげで、体調はかなりマシになった。
体を起こすと、ベッドの近くの机に『今日はしっかり休むこと!』とエミリーからの書置きがある。
「……心配かけちゃったかな。」
「ええ、全くよ。」
「……え?」
声に反応して振り向くと、女の人の顔が目の前にあった。
「うわぁああああ!?」
驚いた翔は反動でベッドから床に一回転して転げ落ちる。
「ちょっと、そこまで驚かれるとなんか失礼じゃない?」
ひっくり返った体を何とか起こし、目を開けるとその女性は生徒会長だった。
「いや、驚くなという方が無茶でしょう!?何してるんですか、こんなところで!?」
「何って、あなたに用があったからに決まっているでしょう?」
驚きのあまり声を荒げる僕に対して、生徒会長は淡々と答える。こうも悪びれるそぶりがないと怒る気力もなくなってくる。
「まあいいでしょう。それで、具合はどうですか?」
丁寧な口調でマリアが話し出す。
翔は気を落ち着けて体勢を立て直した。
「おかげで随分らくになりましたよ。それで?要件は何ですか?」
「ああ、そうでした。あなたに生徒会に入ってほしいのです。」
「なるほど、そういう事なら…、は?いや、何を言っているんですか?」
驚きのあまり、ポカンと口を開けてしまう。生徒会?魔術も使えないのに?内容にもよるが、僕のような者に務まるとは思えない。流石に断るしかない。
「ビジョンを見返してみたのだけれど、あなたが竜と対峙していた時、炎を操ったというよりは炎が燃え移ったという方が正しい表現に思えたの。」
言っていることはよく分かる。それは間近で見ていた僕が一番よく分かる。
確かにあの時、僕は炎を自在に操れたわけではない。他の人の魔術は日常的に何度か見たことはあったが、土や水がうねうねと蛇のように動いたり、火を様々な形に動かしたりしていた。
それに比べ、僕は炎の大きさを調節しただけ。とても操ったとは言い難い。
「まあ、それがどういう原理なのかを解明することが僕がこの学校に入学した大きな目的ですし…。それがどうかしましたか?」
「原理は分からないけれど、私たちの仮説が正しければ、生徒たちの抑止力になるかもしれないしね。」
「すいません、ちょっと言っている意味が分からないんですけど…。」
話についていけず、マリア先輩に尋ねる。
すると、彼女は静かに立ち上がり、数歩前へ進んで振り向き、僕に声をかける。
「ついてきて。少し体を動かしましょう。」




