校長の思惑
僕は校長が信頼できる人物かどうか確かめるため、様々な質問をした。
自分に危害は加えるつもりはあるのか、僕を学校に編入させて不安はないのか、僕のことを解明できた後はどうするのか…。
少し答えづらいような質問もしたが、校長は模範解答でも持っているかのように反射的に、的確に答えていく。そして、エミリーが反応していないことから、校長が嘘をついていないことが分かる。
十分な量の質問を用意したはずなのに、5分ほどで全て答えられた。
これだけの質問をしたにも関わらず、校長は表情をピクリとも変えない。
すべて想定内の質問だという事か。前回の時の頭の回転の速さといい、この人の頭の中はどうなってるんだ?
休憩時間の終了まではまだ15分ある。僕は必要というわけではなかったが、先ほどのエミリーの反応が気になり、二人の関係を聞いた。
「ところで、校長はエミリーとはよく会うのですか?なんだか妙に親しげでしたけど……。」
「ん?なんじゃ言っていなかったのか。儂はエミリーの父、レイガスの師なんじゃよ。奴が幼いころから魔術のことを教えておった。結局、奴は魔術師ではなく鍛冶師になりおったがのう。
エミリーは儂と会った時にはすでに自分の魔術に目覚めておってな。初めて会った時は警戒されておったが、徐々に懐かれるようになってのう。」
「ちょっと、エムリスさん!それは言わなくていいでしょう!?」
懐かしそうに話す校長をエミリーが顔を真っ赤にして止める。
なるほど、エミリーにとって、校長は近所のおじさんのような存在なのか。そして、あまり嘘をつかないから幼いエミリーは懐いたという感じか。
「そういえば気になっていたんだけど、エミリーが信頼している人ってどれくらいいるんだ?」
正直、エミリーの信頼する人はそう多くないと思っていた。人は日常的に嘘を使いこなす。嘘をつかない人なんて稀だろう。
そして、エミリーが信頼する人というのはおそらく、ほとんど表裏のない人。僕は人よりかなり不器用だから、そうやって表と裏で性格を変えるようなことはできないけど、大抵は多少変わる。
エミリーはあまり悩まずに答えてくれる。
「4人…いや、5人かな。お父さんとレイガスさん、エリカ、ショー君、それと、名前は知らないけど、私を助けてくれた、あの魔剣士の人。」
「魔剣士?」
聞いたことのない単語だ。というか、助けてくれたって何のことだ?
「魔剣士っていうのは、魔術と剣術を同時に使いながら戦う事の出来る人のことだよ。ただし、魔術と剣術が使えるっていうだけじゃそれは魔術を使える剣士、もしくは剣術を使える魔術師でしかないの。」
「同時に使えると何がいいんだ?」
翔が聞くと、エミリーは嬉しそうに話し出した。
「簡単に言えば隙がなくなるの。普通なら魔術師と剣士が共闘するときは魔術師はサポート、剣士は前に出て相手の注意を引くことが多いんだけど、魔剣士はそれを一人でできるの。
魔術で隙を作って剣で止めを刺したり、逆に剣で注意を引き付けて魔術で死角から攻撃したりっていう具合にね。」
翔がその魔剣士についてもっと詳しく聞こうとすると、キーンコーンカーンコーンと予鈴のチャイムが鳴る。
「おっと、そろそろ時間じゃな。二人は早く教室に向かうといい。次はサボらないように。」
「あっ、はい……。」
校長は忠告すると、にっこりと笑い、翔とエミリーを送り出した。




