信頼
昼休み、僕とエミリーは一緒に学校長の部屋の前に来ていた。
以前、学校長は僕にエミリーを連れて話をするように言っていた。おそらくは彼女の『嘘を見抜く魔術』を利用して、自身の信用度を示そうとしているのだろう。
エミリー自身はそれに特に反対はしていないが、正直気乗りはしない。彼女の魔術は端的に言うと、『害悪な嘘であればあるほど、それ相応の苦痛を身体に受ける』というもの。つまり、彼女がその魔術を使い、嘘を見抜くときはその苦痛によって真偽を判断しているのだ。
もし学校長がそんなことを考えていたのなら、エミリーにかかる負担は想像がつかない。
しかし、エミリーは学校長のことをかなり信用しているようだった。学校長と彼女の関係は詳しくは知らないが、こちらから口をはさむものではないのかもしれない。
結局、僕はエミリーの主張に押し切られ、学校長と面会することとなった。
学長室に着くと、巨大な門のような扉が立ちはだかる。前回の時も思ったが、やはり少し足がすくみそうになる。
そんな僕に対して、エミリーは慣れた手つきで扉をノックし、返事が返ってくる前に勢いよく扉を開ける。
「失礼します!」
いや、扉を開ける前に言うべきだろ……
彼女の大胆というか、独特な行動に少し驚く。
部屋にはそんな彼女の行動に何一つ驚いた様子のない校長の姿があった。
校長は脇に本を何冊か抱え、それを棚にしまっているところだった。
この間来たときはずっと座っていたから分からなかったが、立っていると、意外と小さい。腰が曲がっているというわけでもなく、普通に立っていても僕の胸辺りまでしかなく、持っている杖は軽く自身の身長を超えている。
校長は本をしまいながら、一つため息をつき、横目で僕らを見て話し出す。
「エミリー、挨拶は扉を開ける前にと言っているじゃろう。」
エミリーはそう言われると、「はーい」と子供のように返事をして部屋のソファーに座り、僕に手招きをする。
まるで近所の友達の家に遊びに来たかのような緊張感のない彼女の態度のおかげで、僕も少し緊張がほぐれ、落ち着くことが出来た。
校長は本をしまい終えると、いくつかの菓子が入った小物入れと、お茶の入ったコップを机に置き、僕らの向かいのソファーに座る。
「さて、ここに来たという事は、エミリーから話を聞いたという事でよいか?」
校長は穏やかな声で話す。
その声は以前聞いた時よりも明るいもので、随分機嫌がよさそうだ。
翔が返事をすると、校長はお茶をすすりながらほほ笑んだ。
「それにしても、エミリーに同年代の恋人ができるとはのう。儂も嬉しいわい。」
そう言われて、翔とエミリーは同時にお茶を吹き出しそうになる。
「「なんでそうなるんですか!!」」
二人は顔を真っ赤にして大声を出す。
その様子を見て、校長は高らかに笑い出した。
「はっはっはっ、いや何、二人の距離が随分と近いものでな、ついからかってしまった。」
そう言われ、翔とエミリーは二人で顔を合わせ、お互いの距離が近いことを認識するとすぐに距離を話した。
校長は笑い終え、お茶で喉を潤す。
「さて、そろそろ本題に入ろうかのう。エミリーの魔術について聞いたという事は、以前儂の言っていたことは理解できよう。
翔はどうか知らんが、儂は君からの信頼を得たいと思っておる。エミリーがいれば、儂のいう事の真偽が分かる。君のききたいことを聞くといい。」
僕は最初に以前質問していた、「自分を研究所に放り込む気はあるか」という事を聞こうとしたが、それより先に一つ聞きたいことがあった。
「では、最初の質問です。あなたは何故、僕の信頼を得たいと思ったのですか。」
そうだ。僕のような奴に信頼を得たところで、そこまで利益があるとは思えない。何か理由があるのではないか。そう考えたのだ。
だが、校長から即答されたものは予想だにしなかったものだった。
「何を言っておる?教師が生徒に信頼されたいと思うのは当然じゃろう?」
この時の校長は、エミリーの魔術を使ってもらうまでもなく、嘘でないとはっきりと分かった。それほどまでに当然のことを聞かれたように言われた。
ああ、この人はいい先生だ。
ひそかにそう思い、僕は質問を続けた。
すいません、少し書き貯めますので、更新が少し遅くなります。
2週間以内にはまた更新します。




