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授業②

 全員が配置につくと、生徒は当たり前のように杖を構え、的へ向けて魔術を放つ。

 生徒が放つ魔術には様々な種類があり、見たところ火、雷、土の魔法が多い。火を使う生徒は的を燃やし、雷を使う生徒は的を痺れさせ、土を使う生徒は地面を変形させ、的を貫いている。

 当然ながら、僕にそんなことはできない。だから、僕はこっそりとその授業を抜け出すことにした。そういえば以前、エミさんは『普通の魔術が使えない』と言っていたな。エミさんも連れ出すべきか……?

 僕は少し考えたが、彼女を自分から突き放しておいてそんなことできるはずがない。もっとも、先生は僕を()()ためにこんなことをしているのだから、実際に抜け出せるかどうかは分からないけど……。


「先生、少し体調が悪いので、保健室に行ってもよろしいでしょうか?」

 僕は咳き込んで体調が悪いふりをする。

「あぁ、分かった。一人で大丈夫か?」

「はい。」


 先生は何の疑いもなく僕を送り出す。あんな腹黒い奴ならもう少し疑ってもいいだろうに……。これも元居た世界との差異なのか?

 しかし、抜け出せたことに関してはラッキーだ。しばらくは保健室で時間をつぶすか。元の世界でもあまりこんな風なサボりはしていたが、その時もただ単に授業が嫌いというわけではなく、それに影響した空気の変化が嫌いでサボりをした。

 結局、僕はこの世界に来てからも何一つ変わっていない。だから、僕のエミさんに対する行動は正しい。それでも、やはり自分のやりたいことと違う事をするのは気が引ける。


 保健室には一度行ったことがあったため、迷う事はなかった。

 部屋に入ると誰もおらず、僕は勝手にベッドを借りることにする。

 思えば、エミさんには隣にいると約束しておきながら、今はそれを破っている。でも、肝心な時に約束を破るよりは今のうちに破っておいた方がいいだろう。

 僕は仰向けになり、目を閉じる。



 しばらくすると、キィと部屋のドアを開ける音がする。

 まだ僕がここにきて30分もたっていない。同じクラスの誰かではないだろう。

 

「あれ?君は確か……。」

 聞き覚えのある女性の声に僕は思わず起き上がる。

「生徒会長……。」

 なんで彼女がここにいるんだ?という疑問を言葉にする前にマリア先輩が先に話し出す。

「えっと……、確か名前は翔だったよね?怪我でもした?」

「あ、いやそういうわけではないんですけど……。」

 

 いや、本当になんでここにいるんだ?学年ごとに授業時間が違うなんてことはないはずだし、見たところ怪我をしているようにも見えない。


「なるほど、サボりに来たわけね。安心して。別に先生に言いつけたりはしないから。」

 彼女は勝手に納得して、隣のベッドに座る。

「それで?なんでサボろうと思ったの?エミリーから聞いた話だと、あなたは真面目な人という事だったけれど。もしかして、彼女が嘘をついたのかしら?」

 僕はその言葉が頭に来て、じろりと睨みつける。

「冗談よ。あの子の魔術のことは私も知っているもの。でも、あなたがそこまで怒るという事はあなた自身が原因という事かしら?」


 しまった。今のは誘導だったのか。この世界では頭の回転が速い人が多くて気が抜けない。 


「授業内容が嫌だっただけですよ。別にあなたが気にかけることではありません。」

「ふーん、真面目なあなたが授業内容が嫌だっただけでサボりをするんだ。」

 彼女はニヤニヤとこちらを見る。この全て見透かされているような目は苦手だ。


「それで?本当の理由は?」

「……あなたに言う必要がありますか?」

「そうね、あなたとは数日前に会ったばかりだし、あなたが私に話す理由はない。でも、友達でも何でもないからこそ、話せることもあるんじゃない?

 それに、校舎で迷ってたところを案内してあげたんだから、それのお返しってことで。」

 そういえばそうだった。それを言われると弱い。

「あんまり恩着せがましいと嫌われますよ?」

「ふふっ、お気遣いありがとう。」


 マリア先輩は全く表情を崩さない。何が何でも聞きだすつもりか。

 ここまでされると、話すしかなくなる。


「少し長くなりますよ。」

「大丈夫よ、こう見えて暇を持て余していたし。」

 授業中になんで暇を持て余してるんだよ……。

 

 僕はため息をつき、自分の過去のことを話し出した。

 




   

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